太田文雄の記事一覧
国会と国防現場の緊張感に乖離 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
先週行われた菅義偉総理と野党党首による党首討論は、コロナやオリンピックに議論が集中し、安全保障問題を語る党首は居なかった。そうした中でも中国海警は頻繁に我が国固有の領土である尖閣諸島(沖縄県)の領海を侵犯し、台湾海峡での軍事的緊張も中国側の挑発行動によって日に日に高まっている。 米インド太平洋軍のデービッドソン前司令官は、今後6年以内に中国が台湾に武力侵攻する可能性を上院軍事委員会の公聴会...
120年前を彷彿させる欧米の中国関与 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
1900年に起こった中国の「扶清滅洋」(清朝をたすけ、西洋人を撲滅する)を叫ぶ義和団の排外主義運動を、清国の西太后が支持し、同年6月に欧米列強に宣戦布告した。これに対し日露英仏米独伊墺/洪(蘭)の8カ国が軍を派遣して鎮圧した。 中国の南・東シナ海での傍若無人ぶりに米英仏独蘭が海軍艦艇を派遣、あるいは派遣すると表明している今日、当時との類似性を感じざるをえない。 日英「準同盟」で復活も...
増額でも気がかりな米国防予算 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
バイデン米大統領は5月28日、政権発足後初となる2022会計年度予算教書を議会に提出した。削減が懸念されていた国防総省予算は前年度比1.6%の増の7150億ドル(約79兆円)が計上された。中でも、中国をにらんだインド太平洋地域での米軍の抑止力強化のための「太平洋抑止構想」(PDI)向けに約51億ドルが要求されている。前年度の約22億ドルから倍以上の増額である。PDIは日本にとっても重要な意味を持...
台湾問題は日本の安全保障に直結 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
4月の日米首脳会談後の共同声明で、「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」ことが盛り込まれた。そのことについて、日本が米中間の武力紛争に巻き込まれるかのような論調が出回っているが、台湾問題は決して他人事ではなく日本の安全保障そのものである。 「明日の台湾」は「明後日の沖縄」 「他人事ではない」理由の第一は、マラッカ海峡から日本に至る大切な海上交通...
頑なな専守防衛のツケが回って来た 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
3月25日に北朝鮮が日本海に発射した弾道ミサイルは、本年1月14日夜の軍事パレードに初めて登場したロシア製イスカンデルの改良型ミサイルと思われる。この時期、発射に踏み切った理由を色々と政治的に推測する向きがあるが、軍事的には、開発した兵器の発射試験を早く行って、その作動をテストしたかったからと見るのが普通だ。 最善策は発射前後の迎撃 25日夜のBS-TBS「報道1930」でコメンテー...
防大校長は制服自衛官にすべき 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
現在の国分良成防衛大学校校長の後任に、国際政治学者で米国を専門とする久保文明氏が就任すると報じられている。筆者は、これまで毎年、米サンフランシスコで行われてきた日米安全保障対話を始め、様々な学会やセミナーで久保氏と同席したことがあり、彼の米国政治分析には一定の敬意を払っている。 それでも、これまで約60に及ぶ士官学校を訪問し、その結果を纏めた『世界の士官学校』を執筆した者として敢えて述べれ...
日米2+2の非対称性正せ 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
16日に日米安全保障協議委員会、いわゆる「2+2」が都内で行われた。1990年に日米の外務、防衛両省の閣僚級で行う現在の枠組みが出来てから今回で約20回目の開催であるが、そのうち筆者は在米日本大使館の防衛駐在官時代、4回出席している。 1996年は沖縄の普天間飛行場移設問題があって、9月にワシントンで、また12月には東京でと計2回行われた。後者では出席のため米国から一時帰国した。1997年...
米新政権下の国家安保戦略への不安 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
バイデン米大統領が3月3日、包括的な国家戦略「国家安全保障戦略」策定に向けた暫定指針を発表した。日本メディアは、トランプ政権に比して同盟や多国間機構を重視する姿勢を示しているとして好意的に受け止めているようであるが、筆者の評価は全く違う。 タイトルに暫定的(Interim)とあるためか、目次は「はじめに」と「まとめ」を除けば「グローバルな安全保障景観」と「我々の安全保障優先順位」の2項目の...
【第770回】尖閣の緊張を高めているのは中国だ
国基研企画委員兼研究員 太田文雄 岸信夫防衛相は2月末、中国海警局の船が尖閣諸島周辺の日本領海侵入を繰り返していることを念頭に、外国公船の乗員が同諸島に上陸しようとする場合、自衛隊による「危害射撃」(相手に危害を加える射撃)が可能との見解を述べた。 我が国の法体系では、自衛隊の平時の海上警備行動と有事の際の防衛出動との間のいわゆるグレーゾーン事態における規定がないことか...
【第765回】英空母とクアッドの共同訓練を提案する
国基研企画委員兼研究員 太田文雄 英国のジョンソン首相は昨年11月、最新鋭空母「クイーン・エリザベス」が英国や同盟国の部隊を率いながらインド洋、東アジア地域に展開する計画を発表した。その背景には1985年の英中共同声明に違反して香港を中国共産党体制下に置こうとする習近平政権に対する反発があるものと思われる。 この予行演習として、昨年秋に同空母は英空軍のF35B短距離離陸...
尖閣有事に備え日米4部隊の共同訓練を 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
中国が新しい海警法を今月上旬に施行した事に対抗して、我が国では海上自衛隊(海自)、海上保安庁(海保)、米海軍、米沿岸警備隊の4者が共同訓練を行うべきだという意見が出ている。 中国の海警船が徐々に事態をエスカレートさせ、尖閣を占領するシナリオが現実性を帯びつつあるなかで、日米の4部隊が共同訓練する事は、そうした事態が生起する時に備えて有効であり、また抑止力としても効果がある。 米海軍と...
軍と一体の海警に海保は対応できるのか 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
中国が、日本の海上保安庁に相当する海警局の権限などを定めた海警法が2月1日から施行される。同法第22条には「国家主権、海上における主権と管轄が外国の組織、個人による不法侵入、不法侵害などの緊迫した危機に直面した時、海警は本法及びその他の関係法に基づき、武器使用を含む一切の必要な措置を取って侵害を制止し、危険を排除できる」とある。中国は尖閣を自国領土としていることから武器使用は当然予測される。 ...
嫌がらせまで中国を真似る韓国 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
今月、韓国の海上警察が長崎県五島列島女島の日本の排他的経済水域で調査活動を行っていた海上保安庁の測量船に対し「ここは韓国の海域だ」と調査の中止を繰り返し要求した。これは中国の海警が尖閣周辺で日本の漁船や海上保安庁船に対して行っていることと同じである。 平成30年には韓国海軍の軍艦が日本の哨戒機に対して射撃用レーダーを照射した事案があったが、韓国側はいまだに自国の非を認めていない。これも5年...
ファイブ・アイズ入りへ覚悟はあるか 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
昨年、当時の河野太郎防衛大臣は米英など5カ国の機密情報共有枠組みである「ファイブ・アイズ」に加入したいとの意思表明を行った。英国のジョンソン首相や与党・保守党のトゥゲンハート下院外交委員長、それにブレア元首相も日本も加えた「シックス・アイズ」を支持した。 昨年末に発表された米知日派の超党派報告書である第5次アーミテージ・ナイ・レポートも、日本を加えて「シックス・アイズ」にする方向で日米が真...
米新政権は「インド・太平洋」の枠組みを踏襲せよ 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
米トランプ政権は12日、2018年2月15日付で作成した「インド太平洋における戦略的枠組みに関する覚書」を開示した。20日にバイデン新政権が発足する直前のタイミングで敢えて本文書を開示した狙いについて、ロバート・オブライエン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は「米国民や同盟諸国に、米国が今後も長き将来にわたってインド太平洋を自由で開かれた地域にするため永続的に取り組んでいくことを知ってもらう...
中国の経済世界一は一時的 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
英有力シンクタンク「経済経営研究センター(CEBR)」は12月26日公表した世界経済の年次報告書で、中国の国内総生産(GDP)規模が2028年には米国を抜いて世界一になるとの見通しを示した。これは昨年時点の予測から5年も前倒したことになる。CEBRに限らず、中国が2030年前後に経済世界一に躍り出るとの指摘はいまや定説ともいえるが、問題はいつまでも続く保証はないということだ。 米国の国家情...
【第746回】米新国防長官は同盟強化に繋がるか?
国基研企画委員兼研究員 太田文雄 ジョー・バイデン次期米大統領は、国防長官にロイド・オースティン退役陸軍大将を指名した。オースティン氏は中東地域を管轄する米中央軍司令官として過激組織「イスラム国」掃討作戦の指揮を取った経験を持つが、インド太平洋地域の軍事情勢について造詣が深いとはいえず、米国にとって中国が最大の脅威となった今日において、国防長官として最適任か疑問と言わざるを...
三島由紀夫事件50周年に思う 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
50年前の11月、作家の三島由紀夫が東京・市ヶ谷の陸上自衛隊東部方面総監部で総監を拘束し、憲法改正のために自衛隊の決起を促したが、目的が達せられず割腹自殺した。報道各社は50周年を記念して特集記事・番組を作成し、元陸幕長等もテレビ出演していたが、当時任官前の幹部候補生であった筆者が自衛隊の一員として考えた事を述べてみたい。 指揮中枢奪われる危険と反省 武の理想としてはその字の如く戈ほ...
海自と海保の相互運用性確保を急げ 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
菅義偉総理は12日に米大統領選挙で当選を確実にしたバイデン前副大統領と電話会談を行い、この中でバイデン氏は沖縄県石垣市の尖閣諸島について、米国の日本防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用範囲であるとの見解を示した。会談終了後、首相が記者団の取材に対して明らかにした。 2008年に初めて中国の海上法執行機関である海警局(海警)公船が尖閣諸島の領海を侵犯した時には大々的に報じていた日本の...
核兵器禁止条約の発効に同調するな 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
核兵器禁止条約を批准した国・地域が10月24日時点で、50に達し、来年1月に発効することになった。これに合わせて日本も批准すべきだとの議論があり、メディアもそうした主張を大きく報じている。しかし、肝心なことは、我が国の安全保障を脅かす中国、北朝鮮、ロシアといった核保有国が、まったくこうした動きに同調せず、いっさい核を手放そうとしないことである。 同様な動きは過去に2回あった。ひとつは199...
ベトナムと技術移転協定締結の意義 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
菅義偉首相は10月19日、訪問先のベトナム・ハノイでフック首相と会談し、防衛装備品の技術移転協定を締結することで合意したが、この意義は大きい。 筆者は2011年9月、防衛大学校の国際教育研究官としてベトナム軍事科学技術院を訪問した。この時、先方から極超短波アンテナ等で共同研究を行いたいと共同文書へのサインを求められたが、当時は両国間に技術移転に関する協定が存在していなかったため断念せざるを...
北の核・ミサイルを過小評価するな 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
北朝鮮は10月10日未明に軍事パレードを行い、世界最大級の大陸間弾道ミサイル(ICBM)と潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を走行させた。この両弾道ミサイルに関して12日夕のBS-TBS番組「報道1930」で朝日新聞編集委員の牧野愛博氏は、ICBM搭載車両は主要道路を走行出来ないばかりか橋も渡れず、またSLBMも搭載すべき潜水艦がままならず順序が逆転していることから、単に米国に向けて展示する事が...
QUAD、インドへの過大な期待は禁物 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
10月6日に日米豪印のいわゆるQUADの外相会合が東京で開かれた。次は防衛大臣会合も行なわれるかの報道もなされ、気が早い人達の中には北大西洋条約機構(NATO)のアジア太平洋版が出来上がるかのような期待を抱いている向きもある。 しかしインドは元来、非同盟中立を外交政策の柱に据えており、そう簡単にQUADの同盟あるいは準同盟が形成されるとは考えにくい。6日のQUAD外相会談に参加したインドの...
イージス・アショア論議で欠ける人の確保 太田文雄(元防衛庁情報本長)
政府は24日、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の導入断念を受けた代替策として、レーダーやミサイル発射装置など陸上イージス構成品一式を洋上で運用する3案を自民・公明両党の関連部会に提示した。 政府が示したのは①新たに護衛艦を建造し、レーダーや発射装置などを一体的に搭載 ②洋上の大型施設に設置 ③タンカーなど民間船舶に搭載―の三案で、両党関係者によれば①案を検討の軸として...
岸防衛相に期待する国防の本質的議論 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
菅義偉政権は防衛相として安倍晋三前首相の実弟である岸信夫氏を起用した。河野太郎前防衛相は、新型コロナウイルス対応に奮闘する医療従事者への謝意としてアクロバット飛行チーム「プルーインパルス」を飛行させたり、不要になった防衛装備品をオークションに掛けたりといったパーフォーマンスが目立ったが、ミサイル防衛上必要として来たイージス・アショアを代替策も無いまま葬ってしまうなど、国防上、本質的な問題を疎かに...
「専守防衛」から「戦略守勢」へ 元防衛庁情報本部長 太田文雄
安倍晋三首相は9月11日、イージス・アショアの配備断念を受けた安全保障政策に関する談話を発表した。内容は、従来までの敵ミサイル迎撃のみに手段を限定した防衛手段に疑問を呈し、敵基地攻撃能力を念頭に検討した「ミサイル阻止に関する安保政策の新たな方針」を基に年末までにあるべき方策を示すとしている。 談話では専守防衛の考え方は変更しないとしているが、いずれは専守防衛といった一般大衆向けの造語ではな...
米提言の日米常設統合任務部隊の設立を 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
約一カ月前の7月29日、米シンクタンクの全米アジア研究所(The National Bureau of Asian Research、以下NBR)が「抗争水域の航海:東シナ海における日米同盟協調関係」と題する報告書の中で、尖閣諸島防衛のための常設の日米統合任務部隊(U.S.-Japan Standing Bilateral Joint Task Force)の設立を提言した。 数年前、筆者...
米ソ冷戦時と重なる南シナ海の現状 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
冷戦の再来と言われる。米ソの軍事的対立状況を回顧することにより、米中軍事対立の今後を予測することは意義あることではないか。 当時のソ連は全面戦争時、米国に対する第二核報復能力を維持する為、オホーツク海を聖域化して、ここに戦略核ミサイル搭載原子力潜水艦(SSBN)を潜伏させて米本土への報復核攻撃能力を維持することに務めた。 今日、南西諸島列島線は日本の領土であり、かつ東シナ海は水深が浅...
韓国救った白善燁将軍を悼む 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
10日に韓国陸軍の白善燁元参謀総長が亡くなった。白将軍は、朝鮮戦争勃発時、未だ米軍が本腰を挙げる前に第一師団長として釜山を死守、自ら突撃を敢行し米軍の本格的参戦を助長させた。彼の行動がなければ現在の韓国はなかったことから救国の英雄と言える。この「天は自ら助くる者を助く」の教訓は、我が国の防衛にも当てはまる。 ハリー・ハリス駐韓米国大使やロバート・エイブラムス在韓米軍司令官が埋葬式にまで参列...
令和2年版の防衛白書に思う 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
令和2年版の防衛白書が7月14日、公表された。今回の白書では中国に対する厳しい表現が目立っているが、それでも冷戦時代に旧ソ連に対して使われていた(潜在的)「脅威」という言葉は使われていない。尖閣諸島という日本の領土を侵略しようとしている国が脅威でないとでも言うのだろうか。 気になる点がもうひとつ。米国の日本に対する防衛努力を求める声が殆ど無視されていることである。 日本の防衛努力は十...
泳げぬ水兵多い中国海軍の実態 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
中国の人民解放軍海軍は6日までに、南・東シナ海と黄海の3海域で同時に軍事演習を行った。これに対抗するかのように1日から5日までの間、米海軍の空母ニミッツとロナルド・レーガンの2隻が南シナ海で演習を行い、米海軍の健在ぶりを示した。米空母にとって怖いのは中国大陸と駆逐艦に配備されている対艦ミサイルであり、仮に人民解放軍海軍保有の空母2隻と戦闘状態に陥入っても米海軍の完勝であろう。理由は艦載戦闘機の作...
【第698回・特別版】静岡知事は国益の損失を認識しているか
国基研企画委員兼研究員 太田文雄 6月26日、川勝平太静岡県知事は金子慎JR東海社長と会談、静岡工区内の水資源への影響を理由にリニア中央新幹線の工事を認めなかった。このため、当初予定されていた2027年の開通が困難となった。 中国はリニア新幹線に携わった約30名の日本人技術者を引き抜いて、自国でリニア新幹線を開発している。昨年11月14日の中国共産党系英字紙チャイナ・デ...
攻撃力だけでは語れぬ敵基地攻撃能力 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
昭和31年、当時の鳩山一郎総理と船田中防衛庁長官は国会で「座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨ではない」として「基地をたたくことは法理的には自衛の範囲」という見解を出している。即ち憲法上、敵基地攻撃能力を保有することに何ら問題がないことは64年も前に決着済みなのだ。 兵理上も、防御だけ、あるいは攻撃だけの手段で国防は全うできない。攻撃と防御の両手段併せ持つことが必要である。特に、昨今の...
還暦を迎えた日米同盟 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
日米安保条約は6月23日で締結から60年を迎えた。10年前の2010年6月17日、日米通商150周年、日米安保50周年記念セミナーがワシントンのウィラード・ホテルで行われ、筆者も「グローバルな公共財へのアクセス安保を保持しよう」(Let’s maintain secure access to the Global Commons)と題する講演を行った。 それにしても、この10年で世界情勢は...
中国潜水艦のトカラ通峡の狙い 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
中国海軍と思われる潜水艦が6月20日、潜没のまま鹿児島県口永良部島西のトカラ海峡の我が国接続水域を太平洋から東シナ海に向けて通過した。平成26年6月15日にも中国海軍のドンディア級情報収集艦がトカラ海峡を南東進したが、この時から中国はトカラ海峡を国際海峡と主張している。国際海峡であれば通過通行が認められるので潜水艦は浮上しなくても通峡できるからである。 これに対して我が国は、トカラ海峡は国際...
【第692回】無数の人命を危険にさらすイージス・アショア停止
国基研企画委員兼研究委員 太田文雄 6月15日、河野太郎防衛相は、山口県と秋田県に配備計画を進めていた地上発射型迎撃システム「イージス・アショア」について、「迎撃ミサイルの発射後に切り離されるブースター(第1段ロケット)を確実に陸上自衛隊演習場に落下させることができない」という理由で、計画を停止すると表明した。 敵の核弾頭搭載ミサイルが日本本土を襲えば、数十万、数百万の...
理解できぬイージス・アショア計画の停止 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
15日、河野太郎防衛大臣は山口県と秋田県で進めていた地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」計画を停止すると表明した。理由はミサイル発射後のブースターを確実に演習場内に落下させることができないからだと言う。ブースターとは、発射する迎撃ミサイルを加速するための第一弾ロケットだ。長さにして数メートルで燃焼後の空タンクは、海上か演習場内に落下しなくても人命に影響を及ぼすことは万に一つの確率であろう...
憲法上の裏付け欠く自衛隊では士気上がらず 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
5月28日の衆議院憲法審査会では、野党側の反対により、憲法改正に不可欠な国民投票法改正案の今国会成立が困難な見通しとなった。こうした状況では、憲法上裏付けのない自衛隊員の士気は上がらない。自分の約35年間の自衛官生活を振り返って述べてみたい。 ●最低だった1973年の違憲判決 昭和48(1973)年9月、いわゆる長沼ナイキ基地訴訟で札幌地方裁判所が「自衛隊は憲法第9条が禁ずる陸海空軍...
軍事的緊張高まる中台関係 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
22日開幕した中国の全国人民代表会議(全人代)で中国共産党幹部は、これまで中台関係で使用してきた「和平統一」から「促進統一」に改めた。平和裏に台湾を統一する考えを捨て、武力行使をも辞さない意志表明の現れと見られる。26日に行われた習近平国家主席の全人代における軍幹部への演説でも、新型コロナウイルスへの対策を続けながらも軍の強化を着実に進めるよう指示した。 ●コロナ隠れ蓑に軍事的な攻勢 ...
中国への過度の依存は禁物 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
中国の武漢ウイルス発生源について国際的な調査を要求するオーストラリアに対し、中国は牛肉の輸入制限を行った。中国外務省の趙立堅報道官は12日の記者会見で、調査要求について「間違った政治的解釈」と切り捨て、輸入制限は「中国消費者の健康と安全を守るため」だと主張した。 中国は昨年6月に孟晩舟ファーウェイ副社長を拘束したカナダに対しても食肉の輸入制限を実施。2010年には尖閣諸島周辺海域で海上保安庁...