公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2021.06.21 (月) 印刷する

NHKの意図的な基地排除誘導 太田文雄(元防衛庁情報本部長)

 NHKは6月18日朝のニュースで外交・安全保障担当の増田剛解説委員が、東京六本木にある在日米軍ヘリポート基地(俗称ハーディー・バラックス)について、騒音と事故の可能性から撤去に世論を誘導する番組を流していた。

専門家の意見として東京大学の藤原帰一教授の基地撤去推奨論のみ登場させ、騒音に悩まされる市民の声を動員して、世論を基地撤去の方向に誘導しようとする意図が見え見えであった。番組の最後には、米軍ヘリコプターの低空飛行を容認している日米地位協定について、同じ敗戦国のドイツ、イタリアが戦後何度も改定しているのに日本は1回も改訂していないと締めくくっていた。

独伊との事情の違いには触れず

戦後間もなく独伊は再軍備を行い、今世紀初めまで徴兵制を維持してアフガニスタンにも実戦部隊を派遣していた。すなわち米国との同盟関係ではGiveを果してTakeとして地位協定の改訂をしているのである。その点に全く触れないまま、日米地位協定は一度も改訂されていないと報道するのは意図的な世論操作と言わざるを得ない。

もう一つ増田解説委員が触れなかった事がある。それはハーディー・バラックスが災害時、救援物資搬送で東京都が使用できる点、島嶼部からの救急患者を都内の医療機関へ搬送する中継拠点として使用している点である。

NHKは「本件について在日米軍に質問しているが、回答がなかった」としているが、米軍基地に反対する意図が明白な番組に協力したくないのは当然であろう。

六本木周辺住民が騒音に悩まされる実態も画像入りで放映していたが、同基地は戦後一貫して存在しており、住民はそれを承知の上で移住してきたのではないのか。騒音と事故の可能性はメディアのヘリでも同じだ。

有事の日米連絡拠点としての意味

コソボ紛争ぼっ発後、米軍が出撃する根拠地となったイタリアのアヴィアーノ空軍基地を、当時、基地を所掌する統合幕僚監部第4幕僚室長として視察したことがある。平時の出撃回数に比し7倍の出撃を行っており、それに伴い整備員や補給員が増強されて宿泊施設の容量が不足し、米軍人は仮設テントを張って宿泊していた。

台湾でも朝鮮半島でも沖縄の尖閣でも、有事には日本の自衛隊だけで支えきれず、あらゆる面で日米共同対処になる事は間違いない。その時、横田の在日米軍司令部と市ケ谷にある防衛省との間では頻繁に高級幹部が行き来せざるを得ない事が予測される。

筆者も、在米日本大使館の防衛駐在官時代に一時帰国して、ペリー米国防長官をハーディー・バラックスに出迎え、また統幕4室長時代には、統幕議長とブレア太平洋軍司令官と共に米軍ヘリでハーディー・バラックスと横田間を往復した。

さらにハーディー・バラックスは、その名の通り兵舎もあり、有事には市ケ谷の防衛省と連絡業務にあたる米軍関係者の宿泊場所にもなる。

日本が米中有事の最前線にあるという自覚のないメディアや、専門家と称する人達に都内米軍基地の是非を軽々に語ってもらいたくない。こんな偏向番組を早朝からのニュースで流すNHKだから「NHKから国民を守る党」(現、古い政党から国民を守る党)などができるのだ。