公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2020.09.23 (水) 印刷する

岸防衛相に期待する国防の本質的議論 太田文雄(元防衛庁情報本部長)

 菅義偉政権は防衛相として安倍晋三前首相の実弟である岸信夫氏を起用した。河野太郎前防衛相は、新型コロナウイルス対応に奮闘する医療従事者への謝意としてアクロバット飛行チーム「プルーインパルス」を飛行させたり、不要になった防衛装備品をオークションに掛けたりといったパーフォーマンスが目立ったが、ミサイル防衛上必要として来たイージス・アショアを代替策も無いまま葬ってしまうなど、国防上、本質的な問題を疎かにした事は否めない。

これに対して岸新防衛相は、これまで台湾との関係を重視してきたことから、新閣僚人事で中国から唯一クレームをつけられている。裏返せば、最大の脅威である中国が嫌がる台湾との連携強化こそ、新防衛大臣の真骨頂と言える。

イージス・アショア代替案急げ

通常8月には概算要求が決まり、来年度予算編成が始動するところであるが、イージス・アショアの中止表明が6月末であったことから、未だ代替策の予算要求がなされていない。放置すれば来年度の予算要求で、8月4日に自民党が提出した「ミサイル阻止に関する安保政策の新たな方針」を具体化することができなくなる。

安倍前首相は離任前の9月11日、「迎撃能力を向上させるだけで本当に国民の命と平和な暮らしを守り抜くことができるのか。そういった問題意識の下、抑止力を強化するため、ミサイル阻止に関する安全保障政策の新たな方針を検討してきたが、今年末までに、あるべき方策を示し、わが国を取り巻く厳しい安全保障環境において、平和と安全を守り抜く方策を検討していきたい」と表明した。

そして岸防衛相は、さっそく16日の就任会見で「今月11日に発表された(安倍)総理大臣談話や菅総理大臣の指示を踏まえ…」と述べている。この問題に速やかに着手する事が本質的議論の第一である。

台湾との連携協力を進めよ

国家基本問題研究所では4年前の6月、岸信夫氏と日本版「台湾関係法」について意見交換したが、中国は米軍の来援を防止するため、日本からフィリピンに至る第一列島線をコントロールすることを国防上の最大の眼目にしており、南西諸島を保有する日本と台湾が統一戦線を組むことは当然である。これが岸防衛相に望む本質的議論の第二である。

1972年の日中国交正常化の際に取り交わされた文書には、いわゆる「一つの中国」の認識について「(中国の)立場を日本政府は十分に理解」となっているが、強制はされていない。米国が台湾との交流をレベルアップしている今、日本にとっても日台が連携を推進するチャンスである。

人民日報系の環球時報は、さっそく9月17日付で岸防衛相について長文の記事を掲載し、著名な「親台派」としても警戒心を示した。これまで、周辺事態法にせよ弾道ミサイル防衛にせよ、中国が反対することを推進すれば日本の防衛にプラスとなることばかりであった。岸氏の防衛相起用も、その一つとして期待したい。中国に何を遠慮する必要があるのだろうか。