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2020.09.23 (水) 印刷する

改革断行に向け年内総選挙を 有元隆志(産経新聞正論調査室長兼月刊「正論」発行人)

 菅義偉首相は省庁改革などの諸課題を断行するためにも、年内の衆院解散・総選挙に踏み切るべきだ。そして、選挙後に「媚中派」の二階俊博自民党幹事長を外すことで、膨張を図る中国共産党に対峙するための国造りに尽力してほしい。

菅首相は14日の自民党新総裁就任の記者会見で「解散の時期というのは、いずれにせよ1年しかないわけだからなかなか悩ましい問題だ」と語った。中国・武漢発の新型コロナウイルスの感染拡大で落ち込んだ経済対策、来年夏の東京都議選、東京五輪・パラリンピックを考慮すると、総選挙のタイミングは事実上、年内か来年10月の任期満了のいずれかに絞られる。

「時間切れ」狙う抵抗勢力

菅首相は「役所の縦割り」「既得権益」「あしき前例主義」の打破を目指して、「国民のために『働く内閣』をつくっていく」と強調した。当然のことながら、官僚、族議員、業界団体などからの強い抵抗が予想される。

菅首相は第1次安倍晋三政権で総務相に就任し、NHK改革に取り組んだが、参院選での自民党の敗北、安倍首相の退陣によって頓挫した。「抵抗勢力」がねらうのは「時間切れ」だ。任期満了まであの手この手を使ってサボタージュするほか、閣僚のスキャンダルなどを流し、政権を弱体化させようとするだろう。

菅首相は総選挙を実施し、国民に改革断行への理解と支持を訴えてほしい。勝利すれば衆院議員の任期は4年あり、「抵抗勢力」も時間切れを狙うことは難しくなる。新型コロナウイルスの感染が続いているなか、従来型の選挙運動はできないが、7月には東京都知事選が行われており、感染対策を徹底すればいい。

二階幹事長の交代が国益に

「人事の佐藤」と呼ばれ長期政権を築いた佐藤栄作元首相は退任後、「解散・総選挙をやればやるほど総理・総裁の権力は強くなるが、内閣改造はすればするほど権力を弱める」と述懐したと言われている。

総選挙を実施すれば当然、世代交代が進む。今回の総裁交代劇でも見られたように、政局に影響力を行使したのは若手よりも長老だった。中でも傑出していたのが二階幹事長の動きだった。菅氏にとって二階氏の存在は頼りになる反面、マイナス面も多い。なかでも中国寄りの二階氏の存在は、今後、菅氏が米国との同盟関係の強化を図るにあたり障害ともなる。

二階氏は17日の講演で、中国の習近平国家主席の国賓待遇での来日について「中国とは長い冬の時代もあったが、今は誰が考えても春。訪問を穏やかな雰囲気の中で実現できることを心から願っている」と述べた。どこが「春」なのか。二階氏は「熾烈な米中激突」とも呼べる対立状況を何ら認識していないのか。中国による香港、新疆ウイグル自治区、内モンゴル自治区などでの人権侵害や知的財産権の盗用、南シナ海・東シナ海での挑発行為は看過できない。

菅氏にとって自民党総裁選出にあたり恩義はあったかもしれないが、二階氏を一日も早く幹事長のポストから外すことが日本の国益となる。そのためにも、年内に総選挙を実施し、自らの求心力を高め、改革を断行できる態勢を整えるべきだろう。