公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2020.06.24 (水) 印刷する

還暦を迎えた日米同盟 太田文雄(元防衛庁情報本部長)

 日米安保条約は6月23日で締結から60年を迎えた。10年前の2010年6月17日、日米通商150周年、日米安保50周年記念セミナーがワシントンのウィラード・ホテルで行われ、筆者も「グローバルな公共財へのアクセス安保を保持しよう」(Let’s maintain secure access to the Global Commons)と題する講演を行った。

それにしても、この10年で世界情勢は大きく変わった。最大の変化は中国の拡張意図が顕著となり、それを可能にする人民解放軍の増強が着々と図られていることだ。第二に北朝鮮の核武装が明確になり、かつこれまで日本と同じように米国との同盟関係を保って来た韓国が、明白に北朝鮮寄りとなって日本に対する敵対行動を重ねつつある。第三に米国が内向き志向を強め、日米同盟維持の意思を疑わざるを得ない言動を重ねるようになったことである。

米軍撤退を脅しに使う米大統領

折しも、ボルトン前米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が在任中のトランプ政権の内幕を描いた暴露本を出版し、報道によればその中でボルトン氏は、昨年7月の訪日時、トランプ大統領は在日米軍駐留経費の日本側負担を現状のほぼ4倍の80億ドルとするよう求めていると日本側に伝え、その際「大統領は在日米軍の全面撤退を脅しに使えと指示した」とも書いている。

日本が脅しに屈しなければ、在日米軍を本気で撤退させるというのであろうか。事実であれば、これまで日本防衛の基本であった「アメリカが鉾、日本は盾」として来た専守防衛構想は根本から崩れ去ることになる。

米国頼みの防衛構想から脱却の時

『孫子の兵法』虚実篇第六に「兵の形は水に象る。水の行は高きを避けて下きに趨く」とある、自ら新型コロナ禍からの回復が比較的早かった中国は、米軍のプレゼンス低下に乗じて尖閣をはじめとする東シナ海、台湾、南シナ海、そして中印国境で自国の領域を拡張しようとしている。1962年に中国がインドに武力侵攻した時も、米ソがキューバ危機で動きが取れない時期であった。

また日清戦争後、一度も他国の領土となっていない我が国固有の領土である尖閣の地名変更を地元の石垣市が決議しただけで中国のみならず台湾までもが抗議している。朝鮮半島では再び南北間の緊張が高まり、武力衝突にエスカレートするかもしれない。米国の抑止力に頼っているこれまでの防衛構想から早々に脱却すべき時がきている。幻想にとらわれてはいけない。

この夏、国家安全保障戦略の見直しが行われるとの報道もあるが、こうした情勢の変化を基本に据えて見直して欲しい。

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