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2020.06.22 (月) 印刷する

「準軍事同盟」と化した中露 遠藤良介(産経新聞論説委員、前モスクワ支局長)

 尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の接続水域にロシア海軍艦艇が出没し、中国海警局の公船と伴走するケースが目立っている。18日付の産経新聞が報じた。
 中国海警船は露艦艇に尖閣の領有権を通知する内容の交信を行っており、「外国軍への対応」を領有権主張の補強材料にする狙いがあるとの見方が出ている。
 露軍がどれだけ意図的・積極的に中国と協調しているかは現時点で不明だが、重要なのは、露艦艇と中国公船の伴走が今年に入って10回程度は確認されているという事実である。
 日本は、中露の軍事連携が新たな段階に入った現実を直視し、その前提に立って行動する必要がある。

 ●初の合同パトロールも
 尖閣をめぐっては2016年6月、露駆逐艦など3隻が、中国海軍のフリゲート艦と同時間帯に接続水域を航行した前例がある。ロシア側の関係者は当時、露艦艇の行動は「演習への往来に伴う通常の航行」だったが、「中国船が出てきたために日本の警戒を招いてしまった」との認識を示していた。
 だが、周知のように中露の関係はこの数年間で急速に密接の度を深めた。昨年7月には、韓国が不法占拠する竹島(島根県隠岐の島町)周辺の日本領空を露軍の空中警戒管制機が侵犯し、韓国軍の警告射撃を受けた。露国防省は領空侵犯を否定しつつ、中国軍の爆撃機などと「初の長距離合同パトロール」を行っていたと発表した。
 ロシアは従来、尖閣など東アジアでの中国の領有権主張に加担しすぎないよう配慮していた。日本や他の中国周辺国を刺激すれば、外交や経済関係の幅を狭めてしまうからである。それが変わってきた、あるいは変わらざるを得なくなってきたというのが現状であろう。

 ●「核心的利益」で連携へ
 プーチン露政権はかねて米国の「一極支配」打破を掲げ、対中関係を重視していた。2014年のクリミア併合で米欧との関係が悪化すると、中国接近の流れは決定的になった。米欧から経済制裁も科され、中国に活路を求めることが必須となったのである。
 近年の中露は極東を含む各地で陸海空の合同軍事演習を繰り返し、「準軍事同盟」の水準まで関係を深めている。ロシアは防空システム「S400」やスホイ35戦闘機といった新鋭兵器を中国に売却し、中国のミサイル早期警戒システム構築にも協力している。
 新型コロナウイルス禍で米中対立が激化し、世界では経済を含むデカップリング(切り離し)が進もうとしている。ロシアは、中国の「弟分」として埋没することを警戒しつつも、中国との連携を強化する以外に選択肢を持たない状況だ。
 中露首脳は2010年、「国家主権や領土保全にかかわる核心的利益の問題で支持し合う」と表明していた。それがいよいよ現実の行動となって表れてきたといえる。ロシアが尖閣問題で中国に、中国が北方領土問題でロシアに手を貸すことを警戒せねばならない。