太田文雄の記事一覧
爆発的感染防いだ日本の文化 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
緊急事態宣言が5月31日まで延長されたが、新型コロナウイルスの新規感染者の数は減少に転じて、一部の県では営業や学校を再開する所も出ている。既に「勝負あった」の感がする。 欧米に比し爆発的感染が防げたのは何故か? この点について外国のメディアは3月の時点から着目してきた。例えば米フォックスニュースは3月24日に「何故、日本はコロナウイルスの大量爆発が避けられているのか」とする分析報道を行ってい...
「9月入学」を支持する 太田文雄(元防衛庁情報部長)
新型コロナウイルスの感染拡大による学校休校が長期化していることに伴い、「9月入学」の導入が議論されている。 安倍晋三首相は4月30日の参院予算委員会で「今後、学校再開に向けた状況を見極めつつ、文科省を中心に、9月入学も含めてさまざまな選択肢を検討していく必要がある」と述べた。筆者も9月入学案には賛成である。 その理由は、防衛大学校の国際教育研究官として、諸外国の士官学校と1学期間交流プロ...
戦時モードへ発想転換を 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
政府の緊急事態宣言から2週間を経過したが、新型コロナウイルスの患者数は一向に減少する気配がない。5月6日までに収束する兆しは見えず、長期戦を覚悟しなければならない。 一方、北朝鮮の生物化学兵器からの脅威に備えてきた韓国や、中国の侵攻を何時受けるか判らない台湾など、常に敵と向き合って対策を練ってきた国々は、これまでウイルス感染の拡大防止でも見事な対応を示してきた。 翻って我が国は、高性能マ...
感染拡大と世界秩序の行方 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
15日のNHK‐BS1で「パンデミックは世界秩序を変えるのか」という特集があった。番組内容をNHKのホームページから紹介すると以下のようなものである。 「新型コロナウイルスの感染者と死者の数が世界で最も多いアメリカ。感染は力の象徴でもある空母などにも広がり、アメリカ軍の活動は大幅な縮小を余儀なくされている。この機に乗じて、中国海軍は大規模演習を行うなど活動を活発化。コロナ終息後を見据えて影響...
空母以上に心配な米原潜での感染 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
西太平洋に展開する米原子力空母セオドア・ルーズベルトの乗員約4800名のうち300名が新型コロナウイルスに感染した。恐らく3月上旬にベトナムに寄港した際に乗員が上陸して感染したものと思われる。この実情を艦長が海軍上層部に訴えると共に、その写しをメディアにも送付したことから解任され、その解任した海軍長官代行も辞任した。 10日付の産経新聞によれば、米空母11隻中、4隻で感染者が出ており、米海軍...
指揮官たる総理を休ませることも必要 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
新型コロナウイルスの感染蔓延で緊急事態宣言が発出された。諸外国の指導者は、今回の危機を第二次世界大戦以降最大の国家的危機と受け止め「戦時」という表現すら使っている。こうした国家非常時に、国民をリードしていく内閣総理大臣は戦時の指揮官とも言うべき存在であろう。 第3代統合幕僚長の折木良一元陸将は「自衛隊では休むことを戦力回復と呼ぶ」と述べている。戦時の指揮官には休んでもらわないと、適時適切な判...
恐るべき中共スパイ活動の実態 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
昨年、米海軍協会出版部から『中共のスパイ活動―インテリジェンス入門―(Chinese Communist Espionage-An Intelligence Primer)』という本が出版された。著者は中国に関する米議会行政委員会副局長であり、CIA(米中央情報局)のカウンター・インテリジェンス分析官でもあったピーター・マティス氏と、陸軍で20年以上アジア勤務をしていたマシュー・ブラジル博士の2...
【第665回】コロナ対策で協力しても対立深める米中
国基研企画委員兼研究員 太田文雄 トランプ米大統領と習近平中国国家主席は27日、電話会談を行い、新型コロナウイルス対策で協力していくことで合意した。しかし、コロナウイルスという共通の脅威が存在しても、米中間では台湾や南シナ海をめぐって軍事的な対立が激しさを増している。当面の協力に目を奪われることなく、複眼的に米中関係を捉える必要がある。 ●台湾周辺で高まる軍事的緊張...
ワインスタイン氏の駐日米大使指名を歓迎する 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
空席となっていた駐日米国大使に米ハドソン研究所所長のケネス・ワインスタイン氏が指名された。上院の承認を得て正式就任する。ハドソン研究所は国家基本問題研究所(国基研)の設立以来、シンクタンクの米国側カウンターパートとなってきた。氏の駐日大使指名を歓迎したい。 ●言論の自由に敏感な反応 国基研が設立して間もない2009年に正副理事長と企画委員2名の計4名でハドソン研究所を訪問、櫻井よしこ...
「感染者ゼロ」のまやかし 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
中国政府の発表によれば、このところ武漢ウイルスの感染患者数が激減し、ついに3月18日には湖北省で新規感染者はゼロになったという。この数値を信じる人は少ないと思うが、どうしてこのような結果となるのか、そのからくりを筆者の知人に送られてきた中国国内の医師の怒りのメールによって披露したい。 ●「陽性」基準を次々と変更 日本を含め、世界ではPCR(Polymerase Chain React...
加害者が被害者を装う傲慢 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
中国の習近平国家主席が10日、新型コロナウイルス発生後初めて武漢を訪れ「中国政府が事態を収束させた」とのメッセージを発した。しかし、発生直後の隠蔽によって約2カ月も対応が遅れたことにより、これだけ全世界に蔓延させて迷惑をかけたことへの謝罪の言葉は一切なかった。 香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」(電子版)は13日、中国政府の非公開情報によると感染は11月17日には起きていた可...
国際機関信奉神話からの脱却を 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
今回の新型コロナウイルス対策で、日本政府が初動に失敗した最大の原因は、中国に忖度した発言ばかりしている国際機関の世界保健機構(WHO)を信じ過ぎたことである。 世界にウイルス患者が蔓延し始めた1月末の段階で、WHOのテドロス事務局長は緊急事態宣言を躊躇った。しかし、国際機関を信用していない米国や台湾、それにオーストラリアは、その時点で全ての中国人の入国を禁止した。現在WHOの調査チームが中国...
人民解放軍にとって武漢の意味 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
これまで新型コロナウイルスの震源地は、武漢の海鮮市場だとばかり思っていたが、最近の報道ではそうでないとする報道が多い。2月10日の「直言」では国基研の細川昌彦企画委員が、武漢が軍民融合を掲げる中国の産業政策「中国製造2025」の拠点であることを指摘した。筆者は、2015年末から習近平政権が行ってきた人民解放軍改編にとって武漢の意味合いについて紹介し、今回の新型コロナウイルスの発生源について考察し...
期待に応じた処遇を自衛隊に与えてきたか 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
今回の新型コロナウイルスの感染拡大で、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に乗船していた人を隔離させる上で、諸外国の軍人と日本の自衛隊員に対する処遇の違いが目についた。 米国やブラジルでは、感染リスクを最小限に抑えるため乗客の帰国に当たってチャーター機を軍の基地に着陸させ、一時隔離についても軍の宿泊施設を使っている。日本でも、そうした措置が検討されたが、自衛隊の居住施設は大部屋でトイレ・浴...
裏目に出ている一帯一路 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
新型コロナウイルスの世界的拡散は中国の「一帯一路」政策とも関係している。一帯一路政策は、労働力も現地の労働者を使って現地の経済を潤すことはせず、中国本土から囚人まで現地に派遣する等の方法をとっている。このため春節等で一度中国本土に帰った労働者達がウイルスを現地に持ち帰って、感染を拡大する結果にも陥っているという。 ●一帯一路の拠点にウイルスは拡散 12日の米紙ニューヨーク・タイムズ(...
日本の神話を再評価すべき 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
我々が初等教育を受けた時、「非科学的な神話ではなく科学的な史実に基づいた歴史を」と先生から教わった。戦前の歴史教育が科学的な根拠に乏しい神話に基づいていることに対する戦後教育の反動であった。 しかし当時の人達が、古事記に代表されるような神話に基づいて思考していたことは事実である。時を経るにつれ、古事記の擬人化された表現の中に散りばめられた戦略・情報観が含まれていることを知るにつけ、建国記念日...
日本のイラン専門家に欠けているもの 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
米イラン関係が厳しい中、自衛隊が中東に派遣される。このような情勢からテレビではイラン問題に関して多くの専門家が意見を述べているが、その中で決定的に欠落している点がある。それは、日本の喫緊の脅威となっている北朝鮮とイランは軍事技術の交流で極めて緊密で、イランは北から兵器を購入して外貨獲得に便宜を図り、日本に間接的に脅威を与えているという点である。 ●なぜ触れぬ北朝鮮との軍事協力 1月1...
感染症対策に見る中国の情報開示 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
中国の湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎患者が、中国のみならず日本、韓国、台湾、米国でも確認されている。こうした感染症の対策として最も大切なことは「情報の透明性」である。中国での新型ウイルス肺炎蔓延をNHKの海外放送が報じた時、中国では画像が真っ暗になって消されてしまった。中国政府が記者会見を行ったのは、21日の習近平主席指示を受けて22日になって初めてである。 一党独裁の国...
「日米同盟60年」に思う 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
19日で日米同盟が60周年の還暦を迎えた。50周年の2010年1月には、日米修好通商条約批准のために江戸幕府が派遣した訪米使節団が宿泊したワシントンDCのウイラードホテルで、米戦略・国際問題研究所(CSIS)主催の記念セミナーが行われ、筆者も参加した。 当時は、鳩山由紀夫首相の普天間飛行場移設先に関する「最低でも県外」発言や、インド洋で燃料補給活動に従事していた海上自衛隊の撤退などに対する米...
再検討時期に来た日本の核政策 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
昨年、『核武装と知識人—内閣調査室でつくられた非核政策—』(岸俊光著)が勁草書房から出版された。現在の日本の核政策は、1964年の中国初の核実験を受け内閣調査室が識者を結集して纏め上げたとする内容である。 中でも、核政策の骨幹となったのは、内閣調査室の機関紙『調査月報』が1970年5月に巻頭論文として掲載した「日本の核政策に関する一考察」(以下内調論文とする)で、作成の中心は「カナマロ会」、...
【第648回・特別版】海自の中東派遣で政治家に望むこと
国基研企画委員兼研究員 太田文雄 10日、河野太郎防衛相は海上自衛隊の護衛艦と哨戒機に中東海域への派遣命令を出した。 米イラン関係の緊張の高まりを受け、大半の野党は派遣に反対するが、日本の原油輸入量の約9割を依存する中東海上交通路の安全確保に日本が参画しなくて良いのかという疑問には答えない。 米国は中東への軍増派を決めた。日本が「安保ただ乗り」をしていれば、いつ再び...
イラン情勢緊迫で喜ぶのは中國 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
『孫子の兵法』火攻篇第十二に「「主は怒りを以って師(戦争)を興すべからず。将は慍いきどおりを以って戦いを致すべからず。利に合えば而ち動き、利に合わざれば而ち止まる。怒りは復た喜ぶべく、慍りは復た悦ぶべきも、亡国は復た存すべからず、死者は復た生くべからず。故に明主はこれを慎しみ、良将はこれを警む。此れ国を安んじ軍を全うするの道なり」とある。 トランプ大統領は、年末にイラクへのロケット弾攻撃で殺...
韓国は米国の同盟国なのか 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
23日の中韓首脳会談で、韓国の文在寅大統領は中国の習近平国家主席に「香港やウイグルの問題は中国の内政」「(トランプ米政権を念頭に)保護主義や一国主義は世界を撹乱」「一帯一路への連携協力を模索する」と述べた。 文大統領の発言は、米国の方針とは一線を画し、中国に擦り寄る姿勢を鮮明としたものと言わざるを得ず、これが米国の同盟国かと耳を疑う。 文大統領は韓国で有名な人権弁護士だったというが、単な...
【第638回・特別版】ローマ教皇の言葉に違和感
国基研企画委員兼研究員 太田文雄 11月23日、ローマ教皇フランシスコは日本へ向かう機中から中国、台湾、香港の指導者にメッセージを送った。香港ではキリスト教信者の一部が大規模デモの人道的解決へ向けて教皇の介入を求める署名活動を行っていたにもかかわらず、教皇は香港で抗議活動をする人達に言及しなかった。また、欧州国家のうちバチカンのみが外交関係を持つ台湾に対しても、儀礼的なメッ...
東大紛争とは大違いの香港の大学籠城 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
1週間ほど前、朱建栄東洋学園大学教授はBSフジの番組で香港での大学立て籠もりを、昭和44年1月の東大紛争における安田講堂封鎖解除事件と同一視する発言をした。 しかし、最も香港の民意が反映されるとして注目されていた今回の香港区議会選挙は、投票率が過去最高を記録するとともに、民主派が総議席の85%を獲得して圧勝した。安田講堂立て籠もりが、過激な極左学生集団による事件として全く国民から支持されなか...
信頼感なき同盟は砂上の楼閣 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
韓国が日本とのGSOMIA(軍事情報包括保護協定)からの脱退を踏みとどまったが、親北・親中で日米とは距離を置く根本的な構造に変化はなく、文在寅政権が続く限り米韓同盟の弱体化という問題は解決しない。 米国は、在韓米軍の駐留経費分担の大幅増額を韓国に迫り、交渉を開始したが、交渉は80分で決裂した。在韓米軍はカーター政権で撤退が検討され、やはり親北の盧武鉉政権時代に米陸軍第2歩兵師団の1個旅団がイ...
中国の偽情報流布戦に騙されるな 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
香港で起きているデモについて中国外務省の華春瑩報道官は数ヶ月前、「明らかに外国勢力が背後で糸を引いている。米国は早く香港への魔手を引っ込めるよう忠告する」と述べた。これを受けるように12日の中国共産党機関紙「人民日報」系の「中国日報」(英語版)は、操られた人形が火炎瓶と血塗られたナイフを持って香港の将来を脅かしているとする風刺画を掲載した。また「デモ参加者達は金をもらっている」という偽情報もSN...
【第633回】「桜を見る会」を議論している場合か
国基研企画委員兼研究員 太田文雄 首相主催の毎春恒例の「桜を見る会」に後援会関係者が多く招待されているとの批判を受け、安倍晋三首相は来年の会の中止を決定した。これに対し、第1野党である立憲民主党の安住淳国会対策委員長は「首相が非を認めたので徹底的にやる」と息巻き、野党は衆参両院で首相が出席する予算委員会集中審議を求めている。マスコミも本件の報道に多くの時間とスペースを割いて...
香港への武装警察投入は近い 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
ついに香港デモ隊に死者が出た。現地からの報道によると11日にも香港の警察官が無防備の市民に実弾を発砲し、男性1人がケガをして病院に搬送されたが重体だという。その模様は動画サイトでも流れているが、警察官は至近距離から躊躇なく連続発射している。香港デモのきっかけとなった中国へ犯罪者を引き渡す逃亡犯条例が行政府によって撤回されたにもかかわらず、香港デモは鎮静化するどころか益々激化している。 香港の...
習氏の国賓訪日の意義は何なのか 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
天皇陛下が訪中された1992年、中国は尖閣を含む海域を領海とした領海法を制定した。98年に江沢民主席が国賓として訪日した際には、宮中晩餐会を含めて何回も歴史問題で日本の反省を求めた。当時、在米日本大使館に武官として勤務していた筆者は、日本からの出張者が「江沢民の度重なる対日歴史問題非難の発言には吐き気を催した」と語っていたのを覚えている。その中には、現立憲民主党国会対策委員長の安住淳氏もいた。 ...
「調査・研究」では日本船は守れず 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
政府は中東海域に自衛隊を派遣するよう検討を開始した。その法的根拠は防衛省設置法が定める「調査・研究」だという。つまり通常の任務の延長線上に位置づけられる。6月に日本のタンカー「コクカ・カレイジャス」が吸着機雷で攻撃されたような場合には、反撃ができない。 その場合には自衛隊法に基づく「海上警備行動」を発動するのかもしれないが、それでも使用できる権限は警察官職務執行法(警職法)に基づく警察行動の...
【第629回】習主席の国賓訪日は再検討を要す
国基研企画委員兼研究員 太田文雄 24日にペンス米副大統領が、中国に関する講演を約1年ぶりに行った。中国の内政外交を包括的に批判した昨年10月の演説以降、中国の行動はますます攻撃的かつ安定を損ねるものになってきたと指摘し、特に大規模デモに揺れる最近の香港情勢に危機感を示し、中国に自制を要求した。日本との関連では「中国の挑発に対する(航空自衛隊の)スクランブル回数は2019年...
「用心棒の風呂焚き」を危惧する 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
用心棒として雇ったが、普段仕事がないので風呂焚きとして毎日便利に使っていたところ、ある日賊が入り、肝心の時に本来の役目が果たせなかったという話がある。 相次ぐ台風の襲来に自衛隊が便利屋として使われている。入浴施設の提供や給水支援等は被災者の評判もよくメディアも好意的に扱っているが、浴場を提供する国軍は国際的に見ても稀有な存在である。副次的な任務に勢力や時間を費やしてばかりでは、本来の任務が疎...
【第624回】「日本の防衛は日本にさせよ」が米の本音
国基研企画委員兼研究員 太田文雄 10月2日に北朝鮮は、東部元山沖から潜水艦発射弾道ミサイル「北極星3号」を通常より角度を上げて高く打ち上げるロフテッド軌道で発射し、日本の排他的経済水域(EEZ)に落下させた。河野太郎防衛相によると、通常軌道で発射した場合の射程は2500kmで、日本全域が射程内に入る。 北の潜水艦が米国沿岸に進出すれば米本土も狙えるとの報道もあるが、静...
建国70周年軍事パレードで示した中国の狙い 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
10月1日、中国で建国70周年の軍事パレードが過去最大規模で行われた。習近平政権の下での軍事パレードは、2015年の抗日戦争勝利70周年、2017年の軍創設90周年に継ぎ3回目である。江沢民、胡錦濤政権時代、軍事パレードはそれぞれ1回のみであったことから、習主席がいかに軍に力を入れているかが窺える。 習近平は、事あるごとにアヘン戦争からの約100年を「屈辱の100年」とし、「軍事的に弱かった...
まだまだ甘い情勢激変への国防認識 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
令和元年版防衛白書が9月27日、閣議で了承された。今回の情勢判断の特徴としては、北朝鮮の核開発について「核兵器の小型化・弾頭化の実現に至っているとみられる」としたことが大きい。 一方、気がかりなのは、同盟国アメリカのトランプ大統領が「日米同盟は不公平」と再三発言したことについて、何故か白書が全く取り上げていないことだ。 第3に、これまで安全保障上の友好国として認識されていた韓国が親北的な...
軍事的マッチポンプ役は中国だ 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
19日のBSフジ「プライムニュース」に中東問題専門家として出演した田中浩一郎慶応大学教授は、今回のサウジ石油施設攻撃について「米トランプ大統領は歴史や国際法を知らず、イラン核合意から離脱して今回の危機を生んだマッチポンプ」と酷評し、「安倍総理はトランプ大統領にイラン核合意に復帰するように直言すべき」と主張した。 田中氏の〝助言〟を安倍総理が真に受けるとは思わないが、仮にそんな話になれば、平素...
オイルショック前夜の兆候 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
14日にサウジアラビア東岸の国営石油会社施設二箇所が数十機の無人機(ドローン)と巡航ミサイルによって攻撃を受けた。イエメンの親イラン武装組織フーシ派が犯行声明を出したが、ポンペオ米国務長官は攻撃にはイランが関与していると主張し、トランプ米大統領は備蓄石油の放出を決断した。サウジも、攻撃したドローンがイラン製と断定している。 15日のニューヨーク市場の原油先物価格は一時1バレル63ドル代と先週...
在韓米軍の撤退に備えよ 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を韓国が一方的に破棄を決めたことにより、米韓関係も極めて厳しくなってきた。嘗て1970年代末期に米大統領となったカーター氏は在韓米軍の撤退を選挙公約に掲げたものの実現できなかったが、韓国の文在寅現政権と同じ左翼政権であった盧武鉉政権時代の2004年に米国は、在韓米陸軍の主力である第二歩兵師団隷下の一個旅団をイラクに派遣して、その後、韓国に復帰させていない...
人民解放軍は既に香港に介入している 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
米国防大学は先ごろ、2015年から始まった中国人民解放軍の改編と、それによって生じた事象を纏めた『習主席の人民解放軍再建(Chairman Xi Remakes the PLA)』を出版した。厚さ6cmもの詳細な報告だが、それによれば、2003年に政治工作条例によって規定された世論戦、心理戦、法律戦の「三戦」を司る台湾対岸の福建省福州市にある第311基地は、改編後、電子戦、サイバー戦、宇宙戦を司...