新型コロナウイルスの感染蔓延で緊急事態宣言が発出された。諸外国の指導者は、今回の危機を第二次世界大戦以降最大の国家的危機と受け止め「戦時」という表現すら使っている。こうした国家非常時に、国民をリードしていく内閣総理大臣は戦時の指揮官とも言うべき存在であろう。
第3代統合幕僚長の折木良一元陸将は「自衛隊では休むことを戦力回復と呼ぶ」と述べている。戦時の指揮官には休んでもらわないと、適時適切な判断ができない。
自衛隊でメンタルヘルス教官を務めていた下園壮太氏は「イライラすると同じ出来事でも疲れやすさが倍になり、回復にも倍の時間がかかる。心身に病気の症状が現れると元気な時より3倍傷つきやすく、回復にも3倍の時間がかかる」と述べている。
指揮官たる総理大臣を適時適切に休ませることは非常時の国民の責務であろう。
●国会審議の一時停止は妥当だ
緊急事態宣言の発令を受け、8日と9日の国会審議は行わないことで、自民、立憲民主両党の国会対策委員長が一致した。当然である。
昨今の国会における議論を聞いていると、安保条約改定時、反対デモに参加した樺美智子さんが亡くなり、安倍晋三総理の祖父にあたる当時の岸信介総理が辞任したことと重ね合わせて、近畿財務局職員の自殺で総理の責任を追求するような愚劣な質問で総理を精神的、時間的に抑圧している。
このような国会審議であれば、止めて総理を休ませた方が良い。
ちなみに、岸総理が当時、退陣理由に挙げていたのは、アイゼンハワー米大統領の訪日中止に至る混乱の収拾ということであった。
●総理会見の質疑内容に疑問も
緊急事態宣言発出に関する総理会見後の質疑応答を聞いていても、愚にもつかない質問を長々とする記者が多すぎる。司会の内閣広報官が「次の予定がありますので」と打ち切ろうとしても、次から次へと質問を浴びせかける。司会者が容易に打ち切れない理由は次の事象があったからであろう。
2月29日の緊急記者会見で、ジャーナリストの江川紹子氏が「まだ質問がある」とする求めに応じずに会見を打ち切ったことに対し、江川氏は「次の予定があるとのことで質問を打ち切ったが、総理はそのまま自宅に帰宅した」と非難した。
この件について3月2日の参議院予算委員会で立憲民主党の蓮舫議員が政府の対応を追求した。「休む事も仕事の一つ」と言うことがわかっていない。イギリスのジョンソン首相のように、国家の指導者が新型コロナウイルスに感染したらどうなるか。国民は真剣に考えてみるべきだ。