中国の武漢ウイルス発生源について国際的な調査を要求するオーストラリアに対し、中国は牛肉の輸入制限を行った。中国外務省の趙立堅報道官は12日の記者会見で、調査要求について「間違った政治的解釈」と切り捨て、輸入制限は「中国消費者の健康と安全を守るため」だと主張した。
中国は昨年6月に孟晩舟ファーウェイ副社長を拘束したカナダに対しても食肉の輸入制限を実施。2010年には尖閣諸島周辺海域で海上保安庁巡視船に体当たりした中国漁船の船長を拘束した日本に対し、泣き所であるレアアースの輸出制限を行った。同年に中国の人権派弁護士、劉暁波氏がノーベル平和賞を受賞した際には、ノルウェー産の鮭の輸入制限を行った。2012年、南シナ海のスカボロー礁を巡る領有権で対立するフィリッピンに対してはバナナの輸入制限を行った。
2019年には韓国が終末高高度防衛ミサイル(THAAD)を配備しようとすると観光客を削減して圧力をかけた。武漢ウイルス蔓延後、マクロン仏大統領が中国に10億枚のマスクを要求したところ、見返りとしてファーウェイの第5世代移動通信システム(5G)の導入を要請したと言われている。
●中国の伝統的なやり口
以上の例は、中国が自国の意に沿わない決定を行う国に対し、貿易依存関係を利用して意趣返しをする国であることを示している。インバウンドと称する外国人観光客の招致についても中国に大きく依存すれば、中国の意向に左右される結果になりかねない。取り急ぎ、目下武漢ウイルスを克服するための医薬品は絶対に中国に依存すべきではない。
1999年に2人の人民解放軍空軍大佐が著した戦略研究書『超限戦』の第II部「新戦法論」の冒頭には、孫子の「兵に常勢なく、水に常形なし。能く敵に因りて変化して勝を取る者は、これを神と謂う」が引用されている。
『孫子の兵法』九地篇第十一には「先ず其の愛する所を奪わば、則ち聴かん」とある。相手に先んじて敵の大切にしているものを奪取すれば、敵はこちらの思い通りになるということだ。これが中国の伝統的なやり口だ。
●国家の主体性を維持すべき
レアアースに関しては米国も中国に依存しているが、中国は米国に対してレアアースの輸出制限をかけていない。報復が恐ろしいからだ。要するに弱い者いじめである。国力乏しくして国の主体性を維持するには、経済性を重視するあまり、中国への過度の依存は避けるべきだ。