これまで新型コロナウイルスの震源地は、武漢の海鮮市場だとばかり思っていたが、最近の報道ではそうでないとする報道が多い。2月10日の「直言」では国基研の細川昌彦企画委員が、武漢が軍民融合を掲げる中国の産業政策「中国製造2025」の拠点であることを指摘した。筆者は、2015年末から習近平政権が行ってきた人民解放軍改編にとって武漢の意味合いについて紹介し、今回の新型コロナウイルスの発生源について考察してみたい。
●医務・衛生含む後方支援の一大拠点
米国防大学が昨年出版した「習主席の人民解放軍改編」という厚さ約7cmもある大冊の中には、2016年頭からの改編によって中央軍事委員会直属の統合後方支援軍が創設され、その司令部が武漢に置かれたことが273頁に図示されている。
武漢の司令部隷下には、無錫(東部戦区)、桂林(南部戦区)、西寧(西部戦区)、瀋陽(北部戦区)、鄭州(中部戦区)の5戦区があり、それぞれに後方支援センターが置かれている。
なぜ、後方支援軍司令部が武漢に置かれたのか? それは細川氏も指摘するように武漢が「中国製造2025」の中心地で、後方支援の重要な機能である整備・補給・輸送に、「中国製造2025」で育成された技術が活用できるからであろう。しかし、そればかりではない。
後方支援の機能の中には医務・衛生があることは防衛庁(当時)の統合幕僚会議事務局で後方支援を統轄する第四幕僚室長をやっていた筆者は痛いほど判っている。
●ウイルス研で遺伝子操作、流出か
武漢には「武漢P4」と俗称される「ウイルス研究所」が置かれ、1月26日に女性の陳薇少将が派遣されたことからも同研究所が人民解放軍と密接な関係を持っていることがわかる。
興味深いことに、同研究所には「SARS(重症急性呼吸器症候群)ウイルスとコウモリのウイルスとを組み合わせることによって人間の気道に感染する新しいタイプのコロナウイルスができる」とする発表を2018年11月に上海交通大学で基調講演した石正麗女史がいる事も判明している。
遺伝子の専門家である防衛医科大学校のS教授によれば「自然界で突然変異するDNAは、せいぜい元のDNAの1%しか変化しないのに対し、今回の新型コロナウイルスは4%も変化している。このことからも遺伝子を人為的に操作して病原菌を作った可能性が極めて高い」と指摘している。
通常、ウイルス研究所では病原菌を作ると同時に、それを防御できるワクチンも作成するが、今回はワクチンが出来ていないうちに作った病原菌を保有する生物を地上に放してしまった可能性もある。
勿論、真相は判らない。しかし、可能性として上記推論が成り立つし、それを否定する明確な証拠を中国政府は示していない。