中国発の新型コロナウイルスは、日本と韓国でもいま猛威を振るっている。日本では韓国政府の対応が日本に比べて優れているという議論が散見される。特に、ウイルス検査の件数の比較から、なぜ日本は韓国でできている大量の検査をできないのか、東京五輪・パラリンピックへの影響を恐れ、検査数を意図的に抑えているのではないか、などという疑惑の声をよく聞く。
●新興宗教団体の感染対策に忙殺
しかし、韓国内では文在寅政権のウイルス対応への批判が高まり、その失敗を理由に大統領弾劾を求める請願への署名が2月27日現在で100万を超えている。
確かに日韓の新型コロナウイルス検査の実績には大きな差がある。日本の厚生労働省によると、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客・乗員を除いた日本国内のウイルス検査件数は、26日午後基準で1890件だ。
一方、同日午前9時基準で、韓国の疾病管理本部は4万6127件を検査し、感染が確定したのは1146人だと発表している。この数字を捉え、テレビのワイドショーや国会では、日本はなぜ韓国のように広く検査ができないのか、と政府を追及している。
しかし、韓国の状況は日本とかなり異なっている。韓国では「新天地イエス教会」という新興宗教団体の信者に大量感染が起きたことで、政府が最優先で検査を実施している。新天地は信者が20万人いてその名簿を政府に提出したという。韓国の検査数の多さの背景には同宗教団体信者への集中的な検査がある。
●置き去り一般市民に文政権へ怒り
一方、信者ではない一般の2次感染を恐れる国民は、なかなか検査が受けられず、文在寅政権批判が高まる原因となっている。
大統領府のウェブサイトで展開されている文在寅大統領弾劾を求めるネット上の請願は100万を超えた。規定により、20万を超える請願には大統領府が回答を寄せることになっている。感染者が大量発生している大邱の市民から請願サイトに寄せられた書き込みには、韓国での検査と治療の危機的な実態がよく現れている。以下に全文を翻訳して紹介する。
こんにちは。私は大邱市民です。
今日、コロナ選別診療所で肺炎診断を受けた36歳の男性です。肺炎診断を受けたのですが入院できない状態で、「早ければ明日、検査結果が出れば応急治療を受けられる」と言われて、4歳の双子、6歳の長女、妻がいる自宅に帰されました。
私は新天地(大規模感染が起きている新興宗教)や海外旅行とはなんの関連もありません。この2週間、近所のスーパーマーケットに行く以外は、自宅で子供らと一緒に過ごしました。
先週水曜日から咳と熱が出たので翌々日の金曜日、大邱市南区保健所に電話をかけて状況を話したところ、新天地でも海外旅行者でもないので自宅で自己隔離しているのがよいとされ、保健所のマニュアル通り自宅で風邪薬を飲んでいました。
ところが、今週月曜日に37.5度の微熱があったので再び南区保健所に電話をして相談したところ、39、38度を超えたら選別診療所に行けるが、選別診療所に行くと2次感染が問題だから、むしろ自宅で自己隔離するほうがより安全だと言われ、近所の内科に行って風邪の注射を受けて自宅に戻りました。
もしかしたらと思って、インターネットで大邱選別診療所を検索して電話をしましたが、5カ所すべて通話中でした。それで自宅で薬を飲んで自己隔離をしていました。
昨日から熱が38度、今朝39度に上がり、選別診療所に行こうとしていたら突然倒れてしまい、119に電話して救急車に乗って大邱医療院選別診療所まで行き、検査を受けました。呼吸が苦しいと話したので肺の写真を撮りましたが、左側の肺が肺炎だがコロナウイルスは最大限早く検査しても明日にならないと結果がわからない、自宅で待つようにと言われました。息をするのも苦しいし、私は糖尿と高血圧があるから治療してくれと頼んだのですが、熱があるので治療を受けることはできない、方法がないとも言われました。
弱りきって再度、南区保健所に電話をしました。コロナウイルスは病気を持つ患者では致死率が高いのではないかと保健所職員に抗議をしたところ、病気になったのは本人のせいではないですかと言われ、本当に腹が立ちました。
私は新天地の信者でもなく海外旅行者でもないのに、これは国家が防疫に失敗して起きたことではないのかと抗議をしました。そして、私は地域感染による被害者であり、応急患者なのに、呼吸ができなくなって死亡に至り、後でコロナウイルスの陽性判定が出れば、私の人生と私の家族の命を誰が守ってくれるのかと、泣きながら話したら、保健所の職員も泣きながら「すみません」と言いました。
最大限に早く応急処置をしてあげますから自宅で、1人部屋で自己隔離をして待っていろと言いました。それで救急車で自宅に戻りました。
もし私の命に何かあれば、明白にこれは国家が市民を死に追いやったことになるので、先に国民の皆さんの助けを求めたところです。
今、大邱は本当に地獄です。選別診療所に行っても新天地と関連がなければ本人の負担で17万5000ウォン(約1万6000円)を負担して検査を受けなければならず、陽性判定が出れば払い戻してくれると言います。私も17万5000ウォン払って陽性診断が出たので払い戻ししてくれました。
今、大邱の全ての診療所は新天地と関連がある者を無料で検査をしてくれて、一般の2次感染の疑いのある者は自宅で自己隔離をせよと言っています。私は保健所が教えてくれたマニュアルの通り行動してこのような有様になりました。
大邱を特別災難地域として指定しながらこのような状態で、マスク一つ満足に買えない中、大邱地域住民は困難のなか耐えているということを大韓民国国民にお伝えします。