中国の習近平国家主席が10日、新型コロナウイルス発生後初めて武漢を訪れ「中国政府が事態を収束させた」とのメッセージを発した。しかし、発生直後の隠蔽によって約2カ月も対応が遅れたことにより、これだけ全世界に蔓延させて迷惑をかけたことへの謝罪の言葉は一切なかった。
香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」(電子版)は13日、中国政府の非公開情報によると感染は11月17日には起きていた可能性があると報じている。これが本当だとすれば約3カ月の遅れになる。対応の遅れの責任を、判断や発表の権限がない武漢市に一切押し付け、公安出身者の市長に首をすげ替えて自らの生き残りを確保した。
それどころか「事態を収束させた」理由は、監視カメラ等による監視社会の中国モデルであるとして、これを逆に発展途上国等に輸出しようとすらしている。
●「武漢ウイルス」と呼称せよ
中国外交部の趙立堅報道官は12日夜、ツイッターを通じて「米軍が武漢にコロナウイルス感染症を持ち込んだ可能性がある」と根拠を示さず主張した。
また、中国政府系メディア「環球時報」は14日、欧米諸国の新型コロナウイルスへの対応は遅く「反省すべき」との社説を掲載した。
今回の新型コロナウイルスは、発生源を明らかにして「武漢ウイルス」と呼称すべきである。しかし中東呼吸器症候群(MERS)が発生した2012年、世界保健機関(WHO)の事務局長補であった中国籍の陳馮富珍女史は新型感染症の命名には発生地名を使用しないように求めており、この時既に布石を打っていたのである。
●中国のプロパガンダのウソ
新型コロナウイルスに効果的に対処できた例は台湾である。台湾は、中国におもねるWHOを信用せず、1月中旬の段階で専門家を武漢に派遣して感染症渡航情報をレベル1の「注意」からレベル2の「警戒」に引き上げ、25日には全中国人の台湾入域を禁止した。
小中学校の休校を決めたのは2月2日で、日本より約1カ月早かった。これらの指揮を執ったのは、日本の厚生労働相にあたる衛生福祉部長の陳時中氏で医大卒、彼を上から監督していた副総統の陳建仁氏は歯科医師である。
この他、マスクの転売禁止や、学校の始業日延期などについても早い段階で手が打たれ、検温態勢の強化、教育機関へのアルコール消毒液配布等も怠りなく進められてきた。経済対策も1月30日には始動していたし、コンサート等への特別助成も行われてきた。
これらは全て民主主義体制下の台湾で行われてきたことである。中国が発する「独裁国家の方が、危機時の対処に有利」というプロパガンダに乗せられてはいけない。