韓国が日本とのGSOMIA(軍事情報包括保護協定)からの脱退を踏みとどまったが、親北・親中で日米とは距離を置く根本的な構造に変化はなく、文在寅政権が続く限り米韓同盟の弱体化という問題は解決しない。
米国は、在韓米軍の駐留経費分担の大幅増額を韓国に迫り、交渉を開始したが、交渉は80分で決裂した。在韓米軍はカーター政権で撤退が検討され、やはり親北の盧武鉉政権時代に米陸軍第2歩兵師団の1個旅団がイラクに引き抜かれた後、韓国に戻っていない。
さらに、これまで38度線とソウル間に配備されていた米陸軍部隊がソウルより南の平沢に集約され、北が南進したら自動的に米軍が参戦するという構図は消滅してしまった。2022年に有事の作戦統制権が韓国側に移ることになれば、外国人の指揮官統制下で作戦したことがない米軍が韓国から撤退するのは時間の問題であろう。
弱体の一途を辿る米韓同盟と、揺るぎない日米同盟とを比較すると、その根底には軍人の倫理観の相違があるような気がする。
●軍人の本分は「嘘をつくな」
韓国でも日本でもベストセラーとなった『反日種族主義』には「嘘をつく国民・政治・学問・裁判」と、「嘘の国」としての韓国の実態が散りばめられている。国定教科書に掲載されている「強制労働に動員された我が朝鮮民族」の写真が、実は北海道旭川の土木現場の写真であったことなどが典型的な例である。
米国の陸・海・空三軍士官学校の学生綱領は「嘘をつくな、騙すな、盗むな」である。片や日本武士道の権化である山岡鉄舟の修身二十則の最初に出てくるのが「嘘を言うべからず」である。イラク派遣部隊初代隊長の番匠幸一郎が書いた『武士道の国から来た自衛隊』にもあるように、自衛官の倫理観も武士道精神を継承している。古くは、米セオドア・ルーズベルト大統領が新渡戸稲造の『武士道』に感銘して自ら何冊も購入して友人に配布している。こうした共通の倫理観が日米同盟のバックボーンである。
●不信の根底に倫理観の違い
米上院は日韓両政府に信頼関係の再構築を訴える超党派の決議案を全会一致で可決した。だが筆者の同期生(将官)が日韓防衛交流のために訪韓した際、ヘリコプターで移動中に不時着したことがある。この時、本来彼を救出する任務で随行している韓国のエスコートオフィサーが、我先に彼を踏みつけてヘリから脱出したと本人から聞いた。
生死を共にして敵と戦う軍人同士に信頼感なかったら仲介役の米国が何を言おうと、単なる砂上の楼閣に過ぎないのだ。
倫理感の観点から言えば、サイバー攻撃やスパイを通じて軍事技術情報をはじめとするアメリカの知的財産を盗み、「南シナ海人工島の軍事化はしない」と言いながら軍事化して騙す中国は、さらに許しがたい存在であろう。最近とみに激しくなりつつある米国の対中姿勢には、単なる貿易赤字の問題だけでなく、根底に倫理観の違いがあるように思われる。