新型コロナウイルスの感染拡大による学校休校が長期化していることに伴い、「9月入学」の導入が議論されている。
安倍晋三首相は4月30日の参院予算委員会で「今後、学校再開に向けた状況を見極めつつ、文科省を中心に、9月入学も含めてさまざまな選択肢を検討していく必要がある」と述べた。筆者も9月入学案には賛成である。
その理由は、防衛大学校の国際教育研究官として、諸外国の士官学校と1学期間交流プログラム推進してきた者として、学期を国際標準に合わせることが国際交流を進める上で極めて大切だと痛感したからである。
●明治初期は秋入学だった
安倍首相は既に、大型連休明けの5月7日以降も一カ月程度は緊急事態宣言を継続すると表明している。そうなると学校を再開しても一カ月余りで夏休みに入る。6月以降も緊急事態宣言が続く場合には9月始業式としても何ら問題はないだろう。
4月29日の「産経抄」によれば、明治の初めに欧米の教育制度を導入した時には、諸外国同様、9月入学であった。ところが、明治19年の徴兵制改正で徴兵対象者の届け出期日が9月1日から4月1日になったことから、人材を軍に先に取られかねないと恐れた教員養成の高等師範学校が、4月入学に切り替えたことが現在の学制につながるきっかけになった。日本の学校が完全に4月入学となったのは大正10年になってからだという。そうであるならば、元通り9月入学に戻しても良いではないか。
9月入学慎重論者の意見を聞いていると、その殆どが今年の実施に踏み切る困難性を指摘しているだけで、長期的かつ大局的な視点からの議論がない。
●世界標準に合わせる好機
筆者は防大の国際教育研究官として28カ国、約60カ所の士官学校を訪問したが、例外なく9月入学であった。士官学校が秋の入学であれば、他の大学や小中高校も同じであることは疑いがない。通常、1学期交換プログラムは9月の初めからクリスマスまでの間に行われるので、防大をはじめとして日本の2学期制あるいは3学期制のプログラムとは周期が合わない。
このため、世界から優秀な人材を集めようとしている東京大学は平成23年に秋入学を提案した。しかし、小中高の関係者や企業から反対されて当面は見送らざるを得なかった。今回は、小中高を含め全ての学校が春から止まっているのであるからやり易い。逆に言えば、今回のような機会は「世界標準」に切り替える千載一遇のチャンスと言える。この機会を逃すべきではない。