今回の新型コロナウイルスの感染拡大で、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に乗船していた人を隔離させる上で、諸外国の軍人と日本の自衛隊員に対する処遇の違いが目についた。
米国やブラジルでは、感染リスクを最小限に抑えるため乗客の帰国に当たってチャーター機を軍の基地に着陸させ、一時隔離についても軍の宿泊施設を使っている。日本でも、そうした措置が検討されたが、自衛隊の居住施設は大部屋でトイレ・浴場が共用のため、収容できないことがわかり、国税庁所管の税務大学校のような施設に収容せざるを得なかった。
●震災時には決死隊任務も
今回のような危機が起こると、必ず自衛隊には過大な役割が期待される。現実に、クルーズ船から下りた人達をチャーター機が着いた羽田空港まで輸送したのは災害派遣で出動した自衛隊員だったし、その宿泊先となったのはチャーター契約を結んだ民間フェリーだった。初期段階でクルーズ船の乗員を総員、自衛隊員に総入れ替えすべきであったとの指摘もあった。
東日本大震災の時も同様であった。常日頃訓練もしていないような過酷な任務を要求されたり、放射能に汚染されている現場に決死隊のように突入させられたりした隊員も多かった。その後の度重なる地震や洪水災害に際しても自衛隊に対する期待度は高かった。
●大きすぎる米海軍との違い
クルーズ船が停泊した横浜のふ頭に最も近い、海上自衛隊最大の基地である横須賀ですら、隊員の居住施設は大部屋かつ共用の浴場・トイレと劣悪である。
筆者は、若い時に米海軍のグレート・レイクス訓練センター、ノーフォーク海軍基地の近郊ダムネックにあるミサイル学校、サンフランシスコ近郊のメア・アイランド戦闘システム学校といった米海軍の施設で独身幹部隊舎(Bachelor Officers Quarters)にあわせて数カ月滞在したことがある。この時に感じた日米の軍施設の差は、強烈な思い出として残っている。
今回、与党内では「外務省は横田、横須賀、厚木、座間といった首都圏の在日米軍基地施設を利用させてもらうべきだ」との意見も出ているというが、自国の自衛隊の劣悪な居住環境を世界に発信するような恥ずかしい話ではないのか。
自衛隊に対していざという時に期待ばかり多く、平素からの処遇を粗末にしてはいないか。今回の危機は、そうした事実にも目を向けるべきであると思う。