空席となっていた駐日米国大使に米ハドソン研究所所長のケネス・ワインスタイン氏が指名された。上院の承認を得て正式就任する。ハドソン研究所は国家基本問題研究所(国基研)の設立以来、シンクタンクの米国側カウンターパートとなってきた。氏の駐日大使指名を歓迎したい。
●言論の自由に敏感な反応
国基研が設立して間もない2009年に正副理事長と企画委員2名の計4名でハドソン研究所を訪問、櫻井よしこ理事長が講演を行った。また翌2010年にも、西岡力、島田洋一の両企画委員が訪問し、北朝鮮による日本人拉致問題について講演するなど、両研究所は密接な関係を保ってきた。
筆者は2014年10月にハドソン研究所を訪問し、ワインスタイン所長と一対一で面談した。この時、いわゆる慰安婦問題を話題とし、米下院決議と「慰安婦は性奴隷ではなかった」ことを示す1944年ビルマ発の連合軍電報の内容とを比較、説明した。
ワインスタイン氏はさほど興味を示さなかったが、当時韓国で不当に拘束されていた産経新聞の加藤達也記者について、言論の自由が侵害されていることを主張すると、俄然メモを取り始め「近々韓国に行くので本件について問い質してみる」と約束してくれた。
さらにワインスタイン氏は、ハドソン研究所で日本との防衛技術協力問題を研究しているアーサー・ハーマン博士を紹介してくれた。以後、彼が連絡窓口となる。
●毅然たる対中姿勢にも期待
筆者は2017年2月に「孫子を基盤とした中国のハイブリッド戦」についてハドソン研究所で講演したが、この時は副所長でブッシュ政権時の副大統領首席補佐官や国防次官補などを歴任したルイス・リビー氏が聴衆として参加、また『100年マラソン』(邦訳タイトル『China 2049 秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」』)の著者として有名なマイケル・ピルツベリー氏の名札もあった。
この年は、北朝鮮が弾道ミサイルを連続して発射した年でもあり、9月には「北朝鮮の弾道ミサイルに対処するため」と題して日米間での技術交流について円卓会議形式で講演した。
そして、今年もこの3月に「新型コロナウイルスとグローバルな課題」について講演する予定であったが、米大統領の国家非常事態宣言が出されたことで、残念ながら訪米そのものを断念せざるを得なかった。
ワシントンのシンクタンクは保守系の多くもチャイナマネーによって中国寄りになったり、超党派のシンクタンクであった戦略国際問題研究所(CSIS)ですら、韓国マネーにより韓国に厳しい主張をしていたエドワード・ルトワック博士が追い出されたりする事態となっている。その中でハドソン研究所は、ペンス副大統領が中国に厳しい姿勢を示す演説をした場所であることからも分るように保守系シンクタンクとしての矜持を保っている。