公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2021.01.25 (月) 印刷する

嫌がらせまで中国を真似る韓国 太田文雄(元防衛庁情報本部長)

 今月、韓国の海上警察が長崎県五島列島女島の日本の排他的経済水域で調査活動を行っていた海上保安庁の測量船に対し「ここは韓国の海域だ」と調査の中止を繰り返し要求した。これは中国の海警が尖閣周辺で日本の漁船や海上保安庁船に対して行っていることと同じである。

平成30年には韓国海軍の軍艦が日本の哨戒機に対して射撃用レーダーを照射した事案があったが、韓国側はいまだに自国の非を認めていない。これも5年前に中国海軍艦艇が海上自衛隊の護衛艦「すずなみ」と艦載ヘリコプターに対して、同様に射撃用レーダーを照射し、抗議した防衛省に対して「でっち上げ」と開き直った事とも重なる。

中国は、それまで21回にわたって日本の総理が靖国神社に参拝したのに問題視しなかったが、昭和60年の中曽根康弘総理の参拝から問題視し始めた。この時も韓国は中国に習って日本批判を始めた。このように日本に対する韓国の嫌がらせは、中国の行動を真似ているのだ。

仮に日本が尖閣で中国に譲歩すれば、竹島を不法占拠している韓国は対馬も韓国領だと言い始めるだろう。ドイツ法哲学者イェーリングの「領土の一部を失って黙っている国民は領土の全てを失う危険を負う」という指摘は正しい。

中国には何も言わず

韓国は日本の侵略をよく口にするが、日本とは桁が違う程行っている中国の朝鮮半島侵略には文句を言うのを聞いた事がない。また韓国は、日本海の呼称を「東海」だと国際的に言い募っているが、黄海を「西海」と呼称すべきだとは主張していない。いわゆるダブルスタンダードである。その理由は力の強い中国が怖いからであり、論理的な一貫性などはどうでも良いのである。

海上自衛隊の哨戒機に射撃用レーダーを照射した後、シンガポールで両海軍・外務当局の会談に出席した海自幹部に聞くと、いくら論理的かつ証拠を提示して説明しようとしても韓国側は聞く耳を持たなかったと言う。

要するに韓国は力の強い国には沈黙しているが、弱い日本に対しては強く出る行動パターンを有している事に留意しなければならない。

米国には理詰めで

昨年末に公表された米知日派によるアーミテージ・ナイ報告書や、オブライエン前大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が政権交代前に部分開示した「インド太平洋における戦略的枠組みに関する覚書」でも日韓の緊密な関係を期待しているが、実際には日韓関係は悪化していくばかりである。

バイデン新政権はホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)にインド太平洋調整官という幹部ポストを新設し、カート・キャンベル元国務次官補を起用した。彼は、筆者が在米日本大使館で防衛班長であった時、カウンターパートの国防総省でアジア太平洋担当の国防副次官補であった。共和党政権時代でのシンクタンク勤務を含め過去四半世紀以上一貫して北東アジア情勢を手がけ、過去の経緯を誰よりも知る人物である。

米国に対しては慰安婦問題にせよ戦時朝鮮半島労働者問題にしても国と国との約束を守らないのは韓国側である事を理詰めで訴えていく以外にない。


1996年7月20日、在米日本大使館の防衛班長官舎にてカート・キャンベルと筆者