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国基研ろんだん

2022.06.27 (月) 印刷する

交戦せず台湾侵攻抑止できる機雷 太田文雄(元防衛庁情報本部長)

ロシア海軍が黒海に敷設した機雷による海上封鎖により、ウクライナの穀物輸出ができなくなり、それによって引き起こされた世界的な食糧危機がロシア側の〝武器〟として使われている。

機雷は日露戦争の時代から使用され、日本海軍は機雷により、ロシア太平洋艦隊旗艦ペトロパブロフスクを撃沈し、座乗していた司令官で当時屈指の名将とされたマカロフ中将が死亡した。逆にロシアが敷設した機雷により、日本海軍も当時、保有数6隻に過ぎなかった戦艦中、「初瀬」と「八島」を同じ日に触雷で失っている。

貿易の約60%を海上交通路に頼っている中国にとって機雷による海上封鎖は大きな脅威で、台湾海峡を侵攻する人民解放軍の強襲上陸部隊に対しても機雷は極めて有効であるとする論評が、最新の『米海軍大学評論』(Naval War College Review)2022年冬号に掲載されている。

比較的容易な爆撃機による敷設

現在、米海軍は水上艦艇から機雷を敷設する能力を有していない。潜水艦からの敷設は、隠密裡に行える利点があるが量に限りがある。従って、米軍が企図しているのは航空機、とりわけ爆撃機からの大量敷設である。

米軍が保有する爆撃機はB-1とステレス爆撃機のB-2、そしてB-52の3機種であるが、B-2とB-52は核兵器搭載機でもあるので中国との緊張を必要以上に高めることになる。B-1が1機で敷設できるクイックストライク(Mk62)と呼称している機雷は140発で、6機編隊であれば一度に840発の機雷が敷設できる。

この機雷は、中国が設定した防空識別圏である沿岸から22kmの約3倍の64km遠方からGPS誘導で正確に台湾海峡内の意図する海域に敷設することができるので、爆撃機を迎撃しようとする人民解放軍空軍戦闘機の脅威は、それほど感ぜずに敷設ができる。また当然、米爆撃機は戦闘機が護衛につく。

解放軍の上陸を長期間足止めに

人民解放軍海軍が保有する現在の掃海能力では、上記敷設機雷を掃海するのに2~3カ月を要する。その間に、米海軍はハワイを根拠地とする太平洋艦隊や米本土から、場合によっては欧州正面から海軍兵力を台湾正面に集中させることが可能になるであろう。

また掃海が完了しそうになる時点で、再度爆撃機から機雷を敷設すれば、人民解放軍の強襲上陸部隊は長期間、作戦不可能となる。海を経ずに、空路からのみで台湾に投入できる兵力は限られる。

このように機雷は、実際に戦火を交えることなく、人民解放軍の台湾侵攻という危機を抑止できる。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルでは先月、2人の識者が「台湾をヤマアラシのように変えて中国を抑止すべし」として同様の抑止力保有を求める台湾防衛の方策を訴えていた。
 
 

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第167回 ウクライナ情勢 機雷戦が展開されている

米海軍大学が台湾有事に応用する可能性を示唆。台湾海峡に敷設すると中国軍の侵攻を食い止める効果も。さらなる研究の余地あり。