公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2023.03.14 (火) 印刷する

日本もTikTok禁止を検討せよ 太田文雄(元防衛庁情報本部長)

8日、米国家情報長官室が情報機関による年次脅威査定報告書を公開した。日本のメディアでは「中国が最大の安全保障上の脅威」とか「2027年までに台湾有事への米国の介入を阻止できる軍事力を構築することを目指している」といった点を報じているが、筆者が注目したのは報告書に何回も出てくる「悪意ある影響(力行使)作戦」であり、それを具現化する偽情報の拡散や、中国共産党に都合の良い物語(narrative)の流布についてである。

中国の「悪意ある影響作戦」

悪意のある影響力行使作戦には、サイバー空間を通じて収集した個人情報をビッグデータとして活用し、対象国に影響力を行使することが含まれる。とりわけ中国のスパイ活動を西側諸国は警戒している。米国では、中国系動画共有アプリTikTok(ティクトック)を30日以内に公用の端末から削除するよう連邦政府機関に指示が出たのに続いて、国内での同アプリ利用を広く禁止する法案が下院外交委員会で可決された。

同様の排除措置が欧州やカナダ、そしてインドでも実施されているにも拘わらず、我が国における警戒感は希薄である。

かつて西側諸国が中国の通信機器ファーウェイやZTE(中興通訊)を排除したことがあったが、この時も我が国では「名指しはしないが、危ないところからは買わない」(政府高官)として国名やメーカーを名指しすることがなかった。この事実が、すでに中国の影響力が政界に浸透していることを物語っている。

民間人情報も悪用される

5日のフジテレビの番組「日曜報道THE PRIME」で、レギュラーコメンテーターの橋下徹氏は「国会議員がTikTokを使用することは保全上問題があるかもしれないが、私の息子が使用することに関しては全く問題がない」と発言していたが、これこそ日本の典型的な警戒感の欠如である。

民間人でも、異性や金銭の問題、あるいは持病など他人に知られたくない情報がある筈だ。中国が顔情報も含めて個人情報を収集し、親に「この件を公開されたくなければ、影響力のあるコメンテーターとして、例えば中国に侵略されてもすぐ逃げるような世論を形成して貰いたい」と圧力をかけてくる可能性もある。米情報機関の年次報告書には、中国国内の家族に圧力をかけることが記載されている(11ページ)が、家族を「人質」に取って影響力を行使するのは中国の常套手段である。

10日には、中国の国会に当たる全国人民代表大会(全人代)でデジタルデータの管理を担う国家データ局の新設が決まった。日本でもTikTokの使用禁止を検討すべきだ。(了)