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国基研ろんだん

2022.12.19 (月) 印刷する

公明党はどこの国の政党なのか 太田文雄(元防衛庁情報本部長)

12月16日に「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」の、いわゆる安保3文書が閣議決定された。これに先立って政権与党である自民党と公明党が12日に3文書に合意したが、ペロシ米下院議長訪台後に中国が我が国の排他的経済水域に弾道ミサイルを着弾させたことに関する「国家防衛戦略」の記述で「わが国および地域住民に脅威と受け止められた」の自民党案に対し、公明党は「わが国および」を削除するように主張して公明党案の通りになったと報じられた。公明党は一体どこの国の政権与党なのか。

中国の影響力工作の標的に

公明党は中国の影響力工作を受けている。11月末に防衛省のシンクタンク、防衛研究所が公表した「中国安全保障レポート2023」によれば、「影響力工作とは、国家の指導者や一般国民の心理・認知・決定に影響を及ぼすことで政治体制や政権を混乱させたり、望ましい方向に誘導する活動」(27ページ)である。在京中国大使館と公明党が頻繁に交流していることは周知の事実だ。

1980年代後半の米ソ中距離核戦力(INF)交渉において、米欧に歩調を合わせてソ連に対抗しようとした自民党をソ連は恫喝し、この動きに反対した社会党に対しては微笑接近するプロパガンダ活動を行った。今、中国は公明党に対して、当時のソ連のような微笑戦略を用い、日本の政策決定を中国に望ましい方向に誘導しようとしている。

軍機能否定の海保法25条に固執

安保3文書の作成に携わってきた自民党安全保障調査会長の小野寺五典氏(元防衛相)によれば、海上保安庁に軍機能を保持させないことを規定した海上保安庁法25条を改正しようとしたが、これに頑として反対したのが公明党であった。公明党は自公連立政権で、海上保安庁を管轄する国土交通省の大臣を一貫して出している。

海上保安庁は、海上自衛隊、米海軍、米沿岸警備隊艦艇の戦闘情報中枢(Combat Information Center=CIC)でリアルタイムに目標情報をデータリンクによって自動交換できる海軍戦術情報システム(Naval Tactical Data System=NTDS)のネットワークに入っていない。

したがって、日中両国の漁船(中国の海上民兵は普段は漁民)、中国海警船と海上保安庁巡視船、中国人民解放軍と自衛隊の艦艇・航空機、そして将来的には水中も含めた無人機や海警・海保巡視船搭載のヘリコプター等、おびただしい目標の動静について情報交換をするのに、か細い音声秘話通信に頼ることになる。NTDSに「海軍」、CICに「戦闘」という字句が含まれているので、海保法25条に抵触すると言うのだろうか。

海上自衛隊でデータリンクを装備したNTDS艦は昭和55年に就役した「しらね」で、その前に就役した「あさかぜ」や「たちかぜ」にはデーターリンクがなく、後日装備であった。筆者は「たちかぜ」へのNTDS装備準備で昭和48年から約1年米国留学し、「あさかぜ」では砲雷長を務め、さらに「たちかぜ」と「あさかぜ」を指揮下に置く第64護衛隊司令の任にあったので、NTDSの戦力化には時間を要することを認識している。今後、仮に海保巡視船がNTDSを装備しようとしても、今回の安保3文書の当面の目標到達時期となっている2027年までに「海上保安庁と自衛隊の連携・協力の強化」(国家安全保障戦略)を達成することは難しい。

軍機能を禁じた海保法25条を固守する限り、中国の海洋進出に有効に対処できず、それは取りも直さず中国を利することになるのだ。(了)
 
 

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第279回 公明党は一体どこを向いているのか

安保3文書の与党意見集約を報道で見た。公明党が「わが国及び地域住民」から「わが国及び」を削除。なぜ中国に配慮するのか。軍隊機能を否定する海保法25条の改正にも公明党は反対する。このままでは海保は海自だけでなく、米海軍や米沿岸警備隊との情報共有に黄信号。公明党は一体どこを向いているのか。