バイデン米大統領は3月28日、2023年会計年度(22年10月~23年9月)の優先施策を盛り込んだ予算教書と国家防衛戦略(National Defense Strategy-NDS-)及び核態勢報告(Nuclear Posture Review-NPR-)のファクトシート(概要書)を発表した。予算は最終的に議会の判断を待つことになるが、教書ではバイデン政権の取り組み方針が窺われる。
国防予算は8133億ドル(約100兆円)で、報道によれば22年度比4%増加した。しかし米国では2月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比7.9%の上昇と高い水準で推移している。来年度の国防費は実質では前年度を下回る結果になると思われる。予算教書を見ると同盟国の日本にとって相当気になる点が多々ある。
気懸りなPDI予算の減少
対中抑止の目玉である太平洋抑止構想(PDI)の予算が、22年度が72億ドルであったのに対し、23年度は61億ドルと減少している。一方、NDSファクトシートでは、ウクライナ戦争にも拘らず、引き続き「インド太平洋における中国を最優先」とはしているものの、欧州抑止構想(European Defense Initiative-EDI-)は逆に31億ドル増加して42億ドルとなっている。
ウクライナ戦争を受けて日本では米国との核共有議論が盛んになりつつあるが、自民党安全保障調査会に招かれた有識者は、陸上に核を貯蔵すれば相手にすぐわかり格好の攻撃目標となるので海上に配備することが現実的であると述べたとされている。
具体的には米攻撃型原子力潜水艦(SSN)発射のトマホーク巡航ミサイル搭載の戦術核と低出力核であるが、これはトランプ政権時代の2018年国防予算から追加されたものの、今回の予算では廃棄されることとなった。今後の米議会審議で海軍の巻き返しを期待したいが、米国が核抑止してくれる「筈だ」では済まない状況になりつつある。
さらに有識者が期待する米海軍兵力は、9隻が建造されるものの24隻退役するので数的には280隻艦隊となり、トランプ政権が目指した355隻艦隊はおろか現在の300隻艦隊も維持できなくなる。
宇宙関連は伸びたというが
宇宙関連予算は、前年度予算180億ドルに対して245億ドルと3分の1近く上乗せされ、極超音速かつ変則軌道の弾道ミサイルに対応する衛星コンステレーション計画を含む早期警戒機能は強化される。しかし、このうちの40億ドル程度は、かつて他の名目だったものからの項目変更であり、実質的な伸びは25億ドルに過ぎない。
我が国の安全保障や核共有の議論は、以上のような米国防予算教書を踏まえて行わなければなるまい。