米共和党のジョン・マケイン上院議員が8月25日亡くなった。81歳だった。議員と最後に出会ったのは数年前の太平洋艦隊司令官交代行事であった。父、祖父とも海軍大将であったことから海軍や太平洋艦隊に対する思い入れは強く、自身も海軍航空士官としてベトナム戦争に従軍した。
1967年にハノイ上空で撃墜されて捕虜となったが、厳しい拷問にも耐え、5年半の抑留生活から帰還した。1984年には政界に転じ、2008年の大統領選では共和党候補として指名を受けたがオバマ氏に敗れた。
イージス駆逐艦ジョン・S・マケインの艦名は、上院議員の父と祖父の名前から採られている。残念ながら昨年8月にシンガポール沖で衝突事故を起こしている。
●大統領も配慮する軍の出身
米海軍兵学校の学生舎バンクラフト・ホールの中央には、顕著な成績を収めた卒業生の写真が掲げられているが、大統領となったカーター氏と共にマケイン氏の写真が高く掲げられている。マケイン上院議員の遺体はアナポリスの海軍兵学校にある海軍墓地に埋葬されるという。
海軍に限らず、米国では軍への信頼度は極めて高く、教会を上回る。マティス国防長官はトランプ大統領との意見の相違がこのところ顕著であるが、未だに解任されていない。背景にはトランプ氏に軍を敵に回したらまずいという意識があるのではなかろうか。
大統領首席補佐官のケリー元海兵隊大将も、現職の制服のトップである統合参謀本部議長ダンフォード海兵隊大将も、かつてマティス海兵隊大将の部下であった。
●日本の防衛力強化を後押し
過去の日米関係を考察するに、貿易面で大きな摩擦があろうとも、軍同士の絆がしっかりと保たれていることが全般的に安定した両国関係に寄与してきた。マケイン上院議員は、日米貿易摩擦で日本に対する制裁決議が米議会に上程されると、それに必ず反対した。
同時にマケイン氏は「日本を悪玉としてビンの蓋の内に閉じ込めるべき」といういわゆる「日本悪玉論」には常に反論し、日本の防衛力強化を積極的に後押ししてくれた。逆に湾岸戦争で多国籍軍に参加しなかった日本に対しては厳しかった。そのマケイン氏が亡くなった。米国の良識が、また一人いなくなったというのが偽らざる実感である。謹んで哀悼の意を表したい。