米国防総省は5月23日、中国海軍の環太平洋合同演習(リムパック)への招待取り止めを発表した。
米側は、南シナ海の中国人工島を軍事化したことを理由としているが、5月初めにはアフリカのジブチ上空で中国軍基地から米軍機がレーザー照射を受けたこともある。どこまで米国は中国にナイーブなのかと思っていただけに、今回の決定は寧ろ遅きに失した感すらある。
●理解に苦しむ王毅外相の反論
これに対し、偶々訪米中でポンペオ国務長官からリムパック招待取り消しを知らされた中国の王毅外相は「非建設的だ」と不快感を示した。
中国海軍がリムパックに招待されたのは2014年が最初であったが、この年、中国はスパイ船を差し向けて情報収集を行った。2016年に招待された時には、艦上レセプションに海上自衛隊の隊員だけを招待しなかった。非建設的なことをやってきたのはどっちかと、中国の厚顔ぶりに呆れてしまう。
王毅外相は、米側が招待取り止めの理由とした「南シナ海人工島の軍事化」に対しても「防衛のため」と言っていたが、爆撃機を防衛目的で展開するなどというのは聞いたことがない。そもそも習近平主席は、「南シナ海の人工島は軍事化しない」と嘗て明言していたのではなかったのか。
●文民統制とインテリジェンス
今年の1月から米国防総省のアジア・太平洋担当次官補に、それまでシンクタンク「プロジェクト2049」の所長をしていたランディ―・シュライバー氏が就いている。彼は嘗て米海軍の情報将校であった。当然、マティス国防長官の承認を得てのことであろうが、氏の果たした役割は大きいと思う。
筆者が在米日本大使館の防衛駐在官であった時、このポストの代理にカート・キャンベル氏が就いており、その下の中国課長がシュライバー氏であった。キャンベル氏も嘗て米海軍情報将校であった。このように、軍にもインテリジェンスにも造詣の深い人物が然るべきポストにあることが重要だ。それでこそ軍への適切なシビリアン・コントロールができる。
日本では、軍やインテリジェンスの知見のない国会議員に限って、やたらとシビリアン・コントロールを口にしてはいないだろうか。