今後5年間の防衛計画を決める大綱と中期防衛力整備計画が18日、閣議決定された。大綱では「多次元統合防衛力」が謳われているが、統合幕僚学校長を経験した筆者に言わせてもらえるなら、陸海空それぞれの専門的基盤があって初めて有効な統合が具現化する。のっぺりとした紫色(統合色)の軍人をいくら育成しても有効な統合にはつながらない。
●人材確保にさらなる改善必要
中国人民解放軍は、陸海空戦で米国に劣るので、電戦(サイバー・電磁波戦)と天戦(宇宙戦)に近代化の力点を集中させている。
今回の大綱では、陸・海・空自衛隊に加え、宇宙・サイバー・電磁波領域における優位を謳っているが、有為な人材なくしては絵に描いた餅になってしまう。とりわけサイバー領域の人材は、諸外国では4桁の陣容であるのに、自衛隊の現状は数百人程度にすぎない。
防衛力の強化における優先事項として「人的基盤の強化」がある。自衛官の俸給は警察官等に比して少なく、良質な人材確保のためには改善が必要である。
また人的基盤強化の中には「栄典・礼遇に関する施策の推進」もある。これまで自衛隊の将官は天皇陛下への拝謁の機会があった。筆者も現役の時には拝謁の恩恵に4度浴したが、平成28年以降は陛下のご負担の軽減に伴い、取りやめになってしまった。外国の高級軍人の拝謁は継続しており、新天皇の下では是非とも復活していただきたい。
●国内防衛産業の基盤強化を
輸入兵器は機微な部分がブラック・ボックスとなっているばかりか、緊急時の調達が難しい。国内産業を強化・育成し、先端技術を獲得していく上でも国産化比率の向上が望ましい。現状は外国、とりわけ米国からの輸入品が近年急増し、国内の防衛産業は撤退・廃業する企業が後を絶たない。
今後5年間の防衛費総額は総額27兆4700億円で過去最高といっても、米国との貿易赤字削減のために予算が投入されてしまったら国内の防衛産業は疲弊するだけだ。ブエノスアイレスで先ごろ行われた日米首脳会談でトランプ大統領は、米製戦闘機F-35の購入について安倍晋三総理に謝意を示したと報じられた。だが、支援戦闘機F-2の後継機は是非とも国産化としたいものである。
1980年代に日本は、次期支援戦闘機FSXの選定で米国の圧力により純国産化を断念、F-16を基本として共同開発することに変更させられた苦い経験がある。当時は国産の戦闘機エンジンが未開発であったが、今では国際的にも通用するものが出来上がっている。防衛装備品を日米貿易赤字削減のスケープゴートにしてもらいたくない。