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2018.10.09 (火) 印刷する

対中抑止に有効な日米共同統合任務部隊の創設 太田文雄(元防衛庁情報本部長)

 10月3日に公表されたアーミテージ・ナイ報告書は合計10の政策提言を挙げたが、その中で特に軍事的観点から有効と思われるのが、日米の合同統合任務部隊の創設である。同報告書については、アーミテージ、ナイ両氏とも、現在はトランプ政権の外にいるため、影響力は小さいいとする向きもあるが、国防総省でアジア・太平洋安全保障問題担当を務めているランディー・シュライバー次官補はアーミテージ氏と表裏一体で、日本政府に対して依然大きな影響力を持っている。

 ●自衛隊の統合能力向上にも
 合同統合任務部隊の創設は、台湾海峡、南シナ海、東シナ海などでの偶発的な衝突に対応できるよう、海上保安庁との連携を含め、日米が共同対処能力を高めるためのものだ。具体的には日米による基地の共同運用の拡大、自衛隊の統合司令部の創設、共同作戦計画の策定などを提案している。
 合同統合任務部隊の設置により、対中抑止力は格段に向上するのはもちろんだが、自衛隊にとっては、陸・海・空の統合運用で進んでいる米軍の手法を直接学ぶメリットもある。
 6年前に大連で海上安全に関する国際シンポジウムが行われた際、尖閣諸島周辺海域での日中の鍔迫り合いが話題になった。中国からは人民解放軍や政府系シンクタンク「外交政策研究センター」のセンター長が出席していた。筆者が「尖閣諸島に中国が手を出したら、直ちに日米が共同で対応する」と発言したところ、彼らは深刻な顔で休憩時間に額を付き合わせて協議していたことを思い出す。

 ●日米韓の安保協力は疑問だ
 提言には、日米韓3カ国の安全保障協力を再活性化すべきだとする提言もあったが、文在寅政権の現状に照らして実現は難しいであろう。提言には「情報の共有」という文言もあったが、いまの韓国情報機関に我が国が保有する機微な情報を流したら、直ちに北朝鮮に流れかねない。
 過去に何回も掲揚したまま韓国に入港しているにも関わらず問題視されず、また国内・国際法で定められている自衛艦旗を掲揚したまま韓国の国際観艦式には参加するな、と強要するような国との協力は慎重にならざるを得ない。