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国基研ろんだん

2023.09.19 (火) 印刷する

国交相は常に公明党で良いのか 太田文雄(元防衛庁情報本部長)

9月13日に第2次岸田再改造内閣が発足した中で、国土交通相がまた公明党から出ていることに疑問を感じる。民主党政権が終了した2012年から約10年、連続して国交相は公明党である。公明党の若手の中には、防衛大学校准教授であった人物などもおり、その主張に違和感を覚えないこともあるが、党全体としてはいわゆる「平和の党」として自民党の安全保障政策の足を引っ張る主張が目立つ。そのうちの特に2点を指摘したい。

海保法25条改正に消極的

国交省は海上保安庁を管轄している。現行憲法と同様、占領軍による日本弱体化政策の一環として制定された海上保安庁法25条は、海保の軍としての機能を否定している。

現憲法は前文で「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」と、今日の我が国を取り巻く安全保障環境からかけ離れた情勢認識を規定している。これが、国際的な世論調査で「国のために戦うか」という問いに対して「はい」の割合が極端に低い日本人のメンタリティーを生み出している。

同様に、海保の軍事的機能を否定した海保法25条から、国防に積極的に貢献しようとする発想は出にくい。台湾有事にせよ朝鮮半島有事にせよ、日米共同で対処しなければならないことは明らかであるが、海保のカウンターパートである米沿岸警備隊が6軍(陸軍、海軍、空軍、宇宙軍、海兵隊、沿岸警備隊)の一つとなっている米国と比較してみると違いが鮮明になる。

米海軍協会が出版している月刊誌プロシーディングスの今年8月号には「沿岸警備隊は(重要通信インフラである)海底ケーブルの防護を主導すべし」とする米沿岸警備隊大尉の論文が沿岸警備隊懸賞論文の3位に選出されたことが紹介されている。7月号には「より重装備の沿岸警備隊の船が今日の海の脅威に適合する」という米沿岸警備隊少尉の論文が掲載されている。

非軍事にこだわる海保若手幹部からは、こうした発想が出にくい。にもかかわらず、公明党の国交相の下で、海保は25条改正に消極的である。

安保戦略の空港・港湾政策が取れるか

昨年末に閣議決定された国家安全保障戦略には「総合的な防衛体制の強化の一環として、自衛隊・海上保安庁による国民保護への対応、平素の訓練、有事の際の展開等を目的とした円滑な利用・配備のため、自衛隊・海上保安庁のニーズに基づき、空港、港湾等の公共インフラの整備や機能を強化する政府横断的な仕組みを創設する」とある。

空港、港湾の使用ニーズは自衛隊、海保だけではなく、有事に来援する米軍にもある。筆者は2000年代初頭、後方支援を担当する統幕4室長として、1997年の「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)に基づき米軍による日本の民間空港・港湾使用ニーズが相当数に上ることを米軍の時間段階別戦力展開データ(Time-phased Force and Deployment Data=TPFDD)から認識した。

当時の懸念は主として朝鮮半島有事であったが、今日ではそれに台湾有事が加わっている。こうしたニーズに適切に対処する政策を打ち出さなければならない時に、常に公明党出身の国交相では、その推進が危ぶまれる。(了)
 
 

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