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2023.09.14 (木) 印刷する

中国は露朝「ならず者同盟」に参画するか 名越健郎(拓殖大学特任教授)

北朝鮮の金正恩総書記がロシア極東を訪れてプーチン大統領と会談し、軍事協力の強化で合意したことで、露朝の連携が今後、東アジアに脅威をもたらすのは間違いない。やや距離を置く中国が露朝に同調し、「三国枢軸」を築くかどうかが焦点になる。

露は大量破壊兵器技術供与に慎重

筆者らが最近オンラインで会見したロシア人の朝鮮問題専門家は、ロシア軍がウクライナ戦争の兵力不足を補うため、北朝鮮軍を義勇軍として受け入れる可能性は少なからずあるとし、「言葉の障害はあるが、北朝鮮にとっては兵士の訓練になり、外貨獲得につながる」と話していた。ロシアはキューバやセルビアでも義勇兵を募集していたことが発覚し、キューバ当局は今月初め、ロシアが絡む人身売買組織を摘発した。

この専門家によれば、ロシアは今後、国内の労働力不足を補うため、現在3万人とされる北朝鮮労働者を増加させる方針で、併合したウクライナ南部、東部の復興に投入する可能性もある。北朝鮮はロシア軍のための軍服も製造中だ。

軍事協力の詳細は公表されていないが、北朝鮮が望む大量破壊兵器技術について、専門家は「北朝鮮が核・ミサイル技術や軍事技術を第三国に提供し、外貨稼ぎをすることをロシアは警戒している」とし、慎重に対処すると指摘した。ただし、米露関係が一段と悪化した場合など、ロシアは段階的に軍事技術を北朝鮮に提供し、東アジア情勢のかく乱を狙うこともありそうだ。

北朝鮮との兵器取引や北朝鮮労働者受け入れは、国連安保理決議に違反し、ロシアには安保理常任理事国の資格がないことを意味する。

中国は食糧、燃料など提供

今後は中国が露朝軍事連携に加わるかどうかが注目される。8月末に訪朝したショイグ・ロシア国防相は、中露が毎年行う海軍合同演習に北朝鮮を加える方針を打ち出した。

ロシア人専門家は「中国は北朝鮮を緩衝地帯として存続させる方針で、食糧、肥料、燃料を一定程度毎年支援することを決めている。北朝鮮はこれがある限り、改革開放をする必要もなければ、日米韓と関係を改善し、援助を求める必要もなくなった」と指摘していた。

反面、中国が露朝「ならず者同盟」に公然と加担すれば、グローバルサウス諸国向けも含め、国際的イメージが悪化する。

差し当たり、今後の露朝軍事連携の進展や10月のプーチン大統領の訪中、11月にサンフランシスコで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議への習近平国家主席の出席を注視すべきだ。(了)