公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

太田文雄

【第1097回】日台抑止力強化へ政治意思を示せ

太田文雄 / 2023.12.11 (月)


国基研企画委員・元防衛庁情報本部長 太田文雄

 

 ロシアとウクライナの戦争が膠着状態に陥り、最大の軍事援助国である米国の議会が与野党対立によりウクライナ向け追加援助で合意できない状況にある。このままでは、ロシアがウクライナに対し「侵略し得」の状態を作り出すことになりかねない。
 この状態を見ている中国の習近平政権は、台湾侵攻も成功するチャンスがあると判断して、侵略に踏み切る可能性が出てくる。我が国は、台湾有事で国土が焦土化し、無実の国民の命が奪われないようにするため、中国に侵略させない抑止力を高めなければならない。
 6日に米上下両院が超党派で合意した2024会計年度の国防権限法案(国防支出総額8860億ドル)には、台湾軍の訓練や能力構築支援が盛り込まれた。これを見る限り米国は、台湾有事に備えた抑止力強化へ政治意思を示したと言える。翻って我が国の抑止力向上策はどうか。

 ●自衛隊と台湾軍の交流が必要
 最大の抑止力は、特に中国に対しては軍事力だ。米軍は台湾軍訓練のため台湾に要員を派遣している。日本にも米軍基地が多くあり、頻繁に日米共同訓練を行っている。しかし、日米台の三角関係において、日台の関係がないことが最も弱いリンクとして対中抑止力を著しく低下させている。
 台湾軍と自衛隊の間には、直接の交流がない。交流を阻んでいるのは外交当局かと思い、かつての外務省事務方トップレベルに質したところ、どうやら政治意思の問題でありそうだ。
 我が国と同様に台湾と外交関係を持たない幾つもの国が、台湾と軍同士の交流をしている。例えば、シンガポールや韓国は現役陸海空佐官を台湾に常駐させている。筆者が今年8月に訪問したチェコでも、国防大学校長が台湾の国防大学校長と堂々と制服で対話していた。日本の統合幕僚学校長や防衛研究所長が台湾の国防大学校長と直接対話することは絶対に許されない。
 台湾は今年、初の国産潜水艦を進水させ、2025年には就役させる予定である。台湾海軍と海上自衛隊の間に直接の交流チャンネルがなければ、有事に海上自衛隊が友軍である台湾の潜水艦を国籍不明艦として撃沈することも、あるいはその逆も起こり得るのだ。

 ●戦わずして中国に屈服するな
 自衛隊と台湾軍が直接交流することになれば、中国は日本への経済的威圧や在留邦人拘束といった対抗策を強めるかもしれない。しかし、それを恐れて然るべき措置を取らなければ、戦わずして中国のいわゆる影響力行使作戦に屈服することになり、有事には貴重な艦船、航空機、そしてかけがえない自衛官の命が同士討ちによって失われる可能性が増す。どちらがより深刻か。
 台湾有事に日米台が連携して当たることを示し、その抑止力を中国に理解させることが台湾有事を起こさせない最上策だ。(了)
 
 

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ウクライナは戦線が膠着し支援も滞りぎみです。このままではロシアが侵略で得をします。米国は台湾有事への支援を表明しています。他方、日本は台湾と軍同士の連携さえありません。これでは有事の際、敵味方識別さえできません。韓国やシンガポールでさえ現役軍人が台湾に常駐しています。今こそ抑止力を高めるためにも政治が主導して欲しいです。