公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

大岩雄次郎の記事一覧

 米国の離脱で揺れた「環太平洋戦略的経済連携協定」(TPP)は11月11日、残る参加11カ国による閣僚間交渉の結果、米国抜きの新協定を発効させることで大筋合意に達した。新協定案の名称は「包括的及び先進的なTPP」(CPTPP)と改めた。  これに先立つ7月4日には、日EUの経済連携協定(EPA)も大枠合意して年内の最終合意を目指している。いずれも2019年の発効を目指すとされている。  TPP...

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 安倍晋三首相と黒田東彦日銀総裁がタッグで進めてきた異次元の金融緩和。円ドル相場はいまのところ円安方向で安定しており、平均株価も2万円を挟むレベルまで回復した。いわゆる「アベクロ景気」は、9月で景気拡大が58カ月となり、戦後最長記録の「いざなみ景気」(73カ月)を超える可能性もでてきた。  しかし、国民の側にその実感は乏しい。賃金は上がらず、将来を考えれば、ついつい財布のひもも固くなる。企業の設...

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 平成30年度予算編成に向けた各省の概算要求の提出期限が今月末に迫ってきた。報道では、最大の課題を抱える厚生労働省の要求額は、実質過去最大31.4兆円に及ぶ。一方、「国及び地方の長期債務残高」は、平成29年度末に1,093兆円(対GDP比193%)に達すると見込まれている。財政健全化は、毎年、お題目のように唱えられるだけで、改善どころか悪化の一途を辿ってきた。団塊の世代が後期高齢者の年齢に達するの...

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 しかし、政府は、「中長期の経済財政に関する試算」(平成29年1月25日、経済財政諮問会議提出)で、経済再生のケースのもとで、債務残高対GDP比が、2016年度をピーク(189.5%)に毎年度低下し、2025年度には169.6%まで下がるという試算を提示している。つまり、債務残高の増加率より、GDPの増加率が大きいことが想定されているのである。  ただし、注意を要するのは、経済再生のケースでは、...

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 世界経済における日本経済のプレゼンスは急激に低下している。1990年代初頭のバブル崩壊を契機に不況に陥って以来、長期にわたって経済が低迷し、いまだに国際社会における地位は回復していない。世界の国内総生産(GDP)に占める日本の割合の推移をみると、1995年には17.6%まで高まったものが、2010年には8.5%になり、2017年には6.4%(IMF予想)まで減少し、ほぼ40年前の位置付けに戻って...

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 こうした状況で、企業の利益剰余金の蓄積である内部留保が、2016年末に過去最高の375兆円に達した。10年前の水準からみれば、135兆円もの増加だが、企業は人手不足にもかかわらず、利益を人件費に回すことはなく、2016年末の労働分配率は43%台と過去最低水準である。  内部留保は、安倍晋三政権発足後に急増し、日銀の金融緩和と企業減税などで企業は業績が改善したが、新興国経済減速に伴う世界経済の下...

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 政府は8月、安倍晋三政権の新たな看板政策「人づくり革命」を議論する有識者会議の名称を「人生100年時代構想会議」とし、首相を議長として9月上旬にも初会合を開くと発表した。大学教育向けの「出世払いでの教育国債」制度の新設も目指すという。  これに先立ち、自民党の教育再生実行本部は5月、安倍晋三首相が意欲を示す「教育無償化」の財源について、「こども保険」「税制改正」「教育国債」で対応するよう求める...

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 日本と欧州連合(EU)は7月6日、経済連携協定(EPA)交渉で大枠合意にこぎ着けた。日欧EPAは2013年にスタートしたが、2015年及び2016年の2度にわたって合意が先送りされた経緯がある。今回の合意の背景には、米トランプ政権の保護主義的趨勢が世界に波及することへの危機感があることは確かであろう。反保護主義の流れを確実にするには、更なる自由貿易協定(FTA)の拡大を図る戦略が必要である。 ...

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 中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)が6月29日、米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスから最上位の格付け「Aaa(トリプルA)」を得たと発表した。これによりAIIBは、資本市場で債券を発行することで、わが国を含めて世界の民間資金の調達が容易となるが、ムーディーズの判断には大いに疑問がある。果たしてAIIBに、世界銀行やアジア開発銀行(ADB)などの国際開発金融機関(MD...

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 環太平洋戦略的経済連携協定(Trans-Pacific Partnership:TPP)署名11カ国は、5月21日にベトナム・ハノイで閣僚会合を開き、早期発効を目指すことで一致した。日本が目指す「11カ国での先行発効」など具体的な方向性には触れなかったが、米国抜きの早期発効に向けた選択肢の検討を11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議までに終えることなどが確認された。TPPは今後も予...

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 環太平洋戦略的経済連携協定(Trans-Pacific Partnership:TPP)は、周知のように、2006 年に発効したシンガポール、ニュージーランド、チリ及びブルネイの4カ国によるP4協定(Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement)を拡大発展させたものである。そのP4協定は「環太平洋の広範な経済統合を促進する手段」(「...

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 一縷の望みもむなしく、11日の日米首脳会談後の共同声明で、米国は環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)離脱決定で翻意する意思のないことが決定的となった。これにより、わが国の成長戦略も見直しが必至となっている。  今後の日本の平和と経済的繁栄には、アジア太平洋地域に自由で開放的、かつ透明性の高いルールを体現したアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の実現が必須である。このままTPPが頓挫した場合、そ...

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 2012年12月に発足した第2次安倍内閣が掲げたアベノミクスも5年目に突入した。2015年9月には第2次ステージに移ると宣言し、「新3本の矢」(希望を生み出す強い経済、夢を紡ぐ子育て支援、安心につながる社会保障)を番えたが、第1次ステージの「3本の矢」(「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「投資を喚起する成長戦略」)の成果はどうなったのか。  アベノミクスの「1丁目1番地」と位置付けられた「...

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 トランプ次期大統領が選挙戦で繰り返したのは、米国の目に見える利益を最優先に置く「米国第一主義」である。つまり、グローバリズムを経済停滞や格差といった国内の経済・社会問題の根源に仕立て上げたのである。これは、保護主義の台頭を許し、自由市場経済の大幅な後退の危険性を孕み、米国経済のみならず、世界経済にとって計り知れない損失をもたらすことが懸念される。  米大統領選でトランプ氏が勝利してから株価は上...

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 原油安で各国の国家収入が目減りしていることを背景に石油輸出国機構(OPEC)は10日、ウィーンの本部でロシアなど非加盟国との閣僚会議を開き、非加盟国側が15年ぶりに日量約56万バレルを減産することで合意した。加盟国も11月末の総会で、8年ぶりの減産で最終合意している。  これにより協調減産量は約180万バレルとなり、世界全体の生産量の約2%に相当する。最大の産油国サウジアラビアは約50万バレル...

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 国際通貨基金(IMF)は10月1日付けで、中国の人民元(RMB)を特別引出権(SDR)通貨バスケットに採用した。新たなSDRの構成比は、米ドル41.73%、ユーロ30.93%、人民元10.92%、日本円8.33%、ポンド8.09%の順となる。  主要先進各国は、中国政府が為替レートや国境を越える資本の動きを厳しく管理していることを踏まえ、人民元のSDR入りを疑問視しているが、IMFは中国の経済...

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 黒田東彦日銀総裁が、異次元の金融緩和政策を導入してから既に3年半が経過した。この政策転換の結果、一言で言うならば、円安をもたらして株価を上昇させたが、実体経済には影響を与えることができなかった。  それどころか、今度は総括的検証の結果として、世界でも異例といわれる中央銀行による長期金利の操作という未知の領域に踏み込んだ。異次元の金融緩和政策と同様、肝心の目的である資金需要の拡大にどれほど効果が...

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 日本は、2013年3月に環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉への参加を表明し、同年7月から、オーストラリア(豪州)、ブルネイ、カナダ、チリ、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド(NZ)、ペルー、シンガポール、米国、ベトナムの11か国と交渉を始めた。日本の参加から約4年に及ぶ交渉は、2015年10月5日に大筋合意に至り、2016年2月4日にはNZにおいて署名式が行われた。  TPPは、マク...

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 国内は元より、国際通貨基金(IMF)などの国際機関からもアベノミクスの限界が指摘されている。しかし、相変わらず政府は大規模な経済対策を、日銀は金融緩和政策の一層の深堀効果を主張し、一向に政策を見直す兆しはない。それどころか、アベノミクスの目指す経済の好循環を妨げているのは、不十分な賃上げと低調な民間設備投資にあるとして、「官民対話」と称し、民間企業に圧力をかけ続けている。  財務省が9月1日、...

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 当初、「三本の矢」を掲げたアベノミクスは、もはや金融緩和政策の戦術論に変質しているといっても過言ではない。量的・質的金融緩和(QQE)政策は、消費者物価2%増(対前年比)を2年以内に達成、マネタリーベースは2年間で2倍、を目標としたが、達成されたのは後者だけで、明らかに機能不全といえる。  岩田規久男日銀副総裁は、「予想インフレ率が上昇するのは、マネタリーベースの量を大幅に増やし続ければ、将来...

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