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2021.06.01 (火) 印刷する

コロナ禍機に「第四次産業革命」推進を 大岩雄次郎(国基研企画委員兼研究員)

 海外では新型コロナウイルスのワクチン接種が進んでいる国では経済が回復している。日本経済の行方も、接種スピードにかかっていると言っても過言ではない。

先進国の中で日本の接種は出遅れたとはいえ、今後スピードが加速し、新型コロナの収束・終息が見込める状況になれば、早晩コロナ禍以前からの問題として抱えていた潜在成長力の強化や財政の健全化といった重要テーマが経済政策の中心になる。

なぜ伸び悩む労働生産性

今回のコロナ禍では、日本のデジタル化やIT化の遅れが問題点として際立った。いずれもDX(デジタルトランスフォーメイション)実現の要件であり、その遅れは企業の国際競争力を左右すると言われる。つまり、近年の日本の労働生産性(実質GDP÷就業者数)低下の主因の一つというわけだ。 

日本生産性本部の直近のデータ(2019年)によれば、日本の労働生産性は経済協力開発機構(OECD)加盟37カ国の中で、前年から5つも順位を下げて26位になった(為替レートは購買力平価で換算)。

これまで日本より上位に位置したことのないトルコ、スロベニア、チェコ、韓国、ニュージーランドにも逆転された。これは主に、それらの国の労働生産性が上昇したというより、日本の労働生産性が2016年以降ほとんど伸びていないことが原因である。

日本の労働生産性急落は、2019年の休日の多さに起因する総労働時間の減少といった要因もあるが、近年、働き方改革が叫ばれた結果、正規雇用者の労働時間の短縮、さらに高齢者・女性の非正規雇用の拡大に原因があると考えられる。

本来は、能力開発やスキルの向上による労働生産性の上昇により労働時間の減少が実現される必要があるが、単に労働時間が短縮しただけでは労働生産性は上昇しない。

今後もデジタル化やIT化で後れを取れば、ポーランド、ギリシャ、リトアニア、エストニア、ハンガリー、スロバキアなどOECDの下位諸国が人件費の安さを武器に、輸出拡大をテコとして日本にキャッチアップする可能性は高いと言わざるを得ない。

カギ握るIT化の推進とDX

労働生産性向上のカギを握るのが、IT化の推進とDXである。ITを基盤とするDXとは、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」(経済産業省)である。また「デジタル技術の活用によって企業のビジネスモデルを変革し、新たなデジタル時代にも十分に勝ち残れるように自社の競争力を高めていくこと」(IPA=情報処理推進機構)だ。コロナ禍以前に掲げられていた「第四次産業革命」の主要目的の一つである。その推進は、国際競争力を向上し、労働生産性を高めることに繋がる。

しかし、2020年7月の「世界電子政府ランキング」によれば現在の日本は、前回2018年の10位から14位に後退した。また国際経営開発研究所(IMD)の「世界のデジタル競争力ランキング」(2020年)でも、前回の23位から26位に後退している。

感染拡大の収束が見られた後も、在宅勤務を含めたITの利活用による働き方の効率化が生産性にプラスの効果をもたらすようにしなければならない。企業内の組織改革、官民の教育・訓練の拡充、各種の制度改革を進めることが必須である。 

コロナ禍による多大な犠牲を無駄にしないためにも、社会変革を実現するチャンスとして生かさなければならない。われわれ一人一人の真価が問われている。