先崎彰容の記事一覧
2021.06.29 (火)
【第810回】国民の心に響かない夫婦別姓論争
日本大学教授 先崎彰容 昭和20年8月1日、日本民俗学の第一人者・柳田國男は友人から終戦が近いことを教えられた。齢70歳を超えていた柳田は決意を固める――「いよいよ働かねばならぬ世になりぬ」。こうして書き始められたのが『先祖の話』である。 柳田の関心は、戦争で亡くなった死者の霊魂の行き先と、そして多くの若者が死ぬことによって「家」を守り固める存在がいなくなることへの危機...
2020.12.03 (木)
三島由紀夫の魅力と危うさ 先崎彰容(日本大学危機管理学部教授)
三島由紀夫と言えば、その壮烈な自死と晩年の急速な天皇への思い入れが、とかく注目されがちである。憲法改正による自衛隊の国軍化を主張し、戦後日本に覚醒を求めた。蹶起が1970年であることは象徴的で、この年開かれた大阪万博には、実に6400万人もの人びとが殺到した。この来客数は2010年に北京万博に抜かれるまで1位を記録しつづけた。つまり三島の自決は、日本人の関心が「政治的主張から経済的豊かさへ」と場...