奈良林直の記事一覧
【第1173回】原子力の最大限活用こそ首相候補の条件
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林 直 太陽光や風力発電は原子力に代わるクリーンなエネルギーとして世界的に持てはやされてきたが、今やこれら再生可能エネルギー(再エネ)の電力供給源としての力不足が認識される一方、原子力が地球温暖化対策の切り札として強力に推進され始めた。福島第一原子力発電所事故の教訓で世界中の原発の安全性は強化され、革新原子炉の建設も始まっている。 ...
【第1165回】原発の新規制基準を改定せよ
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林直 日本原子力発電が再稼働を目指している福井県の敦賀原発2号機に関し、原子力規制庁は26日の審査会合で、原子炉建屋近くの「K断層」が将来動く可能性があるかという「活動性」と、建屋真下の「D1断層」がK断層とつながっているかの「連続性」の二つについて、原電の主張が曖昧で、科学的根拠に乏しく、2号機が原発の新規制基準に適合しているとは認め...
【第1153回】不合理な敦賀原発の活断層論議
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林直 原子力規制委員会は6月6、7の両日、福井県敦賀市の日本原子力発電敦賀原発2号機の活断層に関する現地調査を行った。敦賀2号機は再稼働へ向けた安全審査が新規制基準に従って行われている。審査は敷地内の地層のひび(破砕帯)が活断層であるかの議論が延々と続き、審査書類の無断修正(規制委は改ざんと判断)や、報告書の1300か所の記載修正に伴う...
沖縄防衛とシェルター設置の必要性 奈良林直(東京工業大学特任教授)
政府は3月29日、日本への武力攻撃を想定し、住民の避難施設(シェルター)を整備する方針を決めた。沖縄では石垣島など先島諸島の五つの市町村に新たなシェルターを造る計画だ。これに対し、沖縄県の玉城デニー知事は「かねてから『対話による平和構築こそが日本が取るべき正しい外交手段だ』と言い続けてきた。基地の計画ありき、配備ありき、シェルターの建設ありきでは説明は十分ではない。平和であるための取り組みをどうす...
【第1132回】トカゲの尻尾切りで再エネ疑惑の幕引くな
国基研理事・北海道大学名誉教授 奈良林 直 太陽光や風力発電は、原子力に代わる安全でクリーンな再生可能エネルギーとして持て囃されてきたが、世界的に再エネの力不足が認識され、資源問題や土砂崩れや環境破壊も引き起こし、再エネ事業者と地元住民とのトラブルも多発している。そのような中で、河野太郎行革担当相の肝いりで設置された再エネ規制総点検タスクフォース(再エネTF)の会議資料に中...
【第1103回】柏崎刈羽原発の再稼働を急げ
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林 直 原子力規制委員会は昨年12月27日、東京電力柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)に出していた事実上の運転禁止命令の解除を決定し、東京電力に通知した。テロ対策について「自律的な改善が見込める」と判断した。同原発が再稼働すれば、首都圏の電力の需給逼迫状況が改善されるが、実際の運転再開には新潟県など地元自治体の同意が必要で、その時期は見通せ...
【第1078回】役に立たない日本学術会議は要らない
国基研理事・北海道大学名誉教授 奈良林直 10月2日、首相官邸で日本学術会議新会員の辞令が交付され、学術会議の新体制が決まった。新会長に選ばれた光石衛まもる・東京大学名誉教授(機械工学)は、菅義偉前首相が任命を拒否した6人について「改めて任命を求めていく」と語っており、左翼イデオロギーによる学術会議支配が今も続いていることが分かる。学術会議の反原発、反軍事思想の弊害が顕著に...
首相推奨のカットオフ条約は時代遅れ 奈良林直(東京工業大学特任教授)
国連総会出席のためニューヨークを訪問した岸田文雄首相は9月19日、核兵器用核分裂性物質生産禁止条約(カットオフ条約=FMCT)ハイレベル記念行事に出席し、以下の趣旨のスピーチをした。 「私は、唯一の戦争被爆国・日本の責任ある政治家として、また被爆地広島出身の首相として、いかに道のりが遠く厳しくても、『核兵器のない世界』に向けた歩みを着実に進めていきたい。しかし、現在の国際情勢に照らせば、...
対馬市の核ごみ処分場調査請願の意義 奈良林直(東京工業大学特任教授)
9月12日、長崎県の対馬市で、原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」の最終処分場の選定に必要な「文献調査」の受け入れを促進する請願が市議会で採択された。調査に応募するかどうかの最終判断は比田勝尚喜ひたかつなおき市長に委ねられており、27日までの市議会会期中に判断すると見られる。 文献調査は処分場設置に必要な調査の第1段階で、既に北海道の寿都すっつ町と神恵内かもえない村...
英の高温ガス炉開発と日本の国際貢献 奈良林直(東京工業大学特任教授)
英国は、脱炭素の切り札として原子力利用の政策を鮮明にし、中でも高温ガス炉に着目して、「新型モジュール炉(AMR)研究開発・実証プログラム」を進め、2030年代初頭までに高温ガス炉の実証炉の運転開始を目指している。 日本原子力研究開発機構(JAEA)と英国国立原子力研究所(NNL)のチームが、英国の高温ガス炉実証炉プログラムの基本設計を行う事業者として採択されたことが、7月19日に報じられた。...
【第1049回】先端技術流出をスパイ防止法制定で防げ
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林直 我が国最大級の国立研究開発法人である産業技術総合研究所(産総研)の中国人研究者が、警視庁公安部によって不正競争防止法違反(営業秘密の開示)容疑で逮捕された。 逮捕されたのは権恒道容疑者で、2002年4月から産総研に勤務し、フッ化化合物に関する研究に従事していた。中国人民解放軍と関連がある「国防7校」の一つ、南京理工大学の出身で...
【第1047回】ウクライナのダム決壊と原発の危機
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林直 ウクライナ南部のカホフカ・ダムが6月6日に決壊し、ダム下流の広大な地域が洪水に見舞われた。ロシア軍に占拠されている近くの欧州最大のザポリージャ原子力発電所は冷却水をこのダムから取っていた。国際原子力機関(IAEA)は別の貯水池があるので「直ちに冷却に困ることはない」とパニックを抑える声明を出したが、筆者は潜在的にメルトダウン(炉心...
【第1044回】陸自ヘリ墜落は金属疲労が原因か
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林直 4月6日、沖縄県の宮古島周辺で陸上自衛隊のヘリコプターUH60JAが墜落し、搭乗していた坂本雄一第8師団長ら隊員10人全員が死亡した。サルベージ船によって引き揚げられた機体の残がいの写真(読売新聞撮影)を観察すると、メインローター(主回転翼)は引きちぎられ、エンジンカバーに刺さっているように見える。フライトレコーダーのデータが5月...
進歩した原発安全対策と女川訴訟のギャップ 奈良林直(東京工業大学特任教授)
5月21日から5日間、京都国際会館で開催された第30回原子力工学国際会議に出席した。参加者は約1000人。筆者は、東京電力福島第1原子力発電所の廃炉作業に関するパネルセッションの座長や、格納容器内の放射性物質を濾し取り排気するフィルターベントについての講演を行った。講演の直前に、東北電力女川原発再稼働差し止め訴訟の請求棄却の速報が入り、福島の事故後に進歩した世界の原発安全対策と、旧態依然たる原発反...
【第1040回】原子力規制委の抜本的改革が必須
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林直 原子力規制委員会は17日、東京電力柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)の事実上の運転禁止命令を解除しないことを決めた。テロ対策不備に関して 改善を要求した6項目のうち2項目の改善が不十分との理由だった。 規制委による現在の規制は、かつて米国のSALP(サルプ)という規制手法が許認可権限を振りかざして、全米の原発の大小トラブルに制裁を...
カルテル報道に思う電力自由化の失敗 奈良林直(東京工業大学特任教授)
大型連休前の各紙が九州電力、中国電力、中部電力、関西電力の4社による「電力カルテル」に対する過去最大の1010億円の課徴金を報じていた。「カルテルは電力自由化を骨抜きにする違法行為で、自社の利益を優先したコンプライアンス(法令順守)意識の希薄さを露呈した」「経済産業省は4社の入札参加や補助金交付を停止」「これらの電力会社の管内の県や市の地元自治体入札に参加させない動きが広がっている」と電力会社に厳...
【第1019回】岸田首相が指示すべきウクライナ支援
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林直 ロシア軍がこの冬、連日のようにウクライナの発電所や送電線にミサイル攻撃を加え、ウクライナの電力インフラを破壊し続けた。厳冬期を乗り切るため、日本も官民が一体となって発電機をウクライナに送ったが、ウクライナ側は「依然として電力不足は厳しい」として、さらなる支援を求めている。 ●「発電機を1万台でも欲しい」 在日ウクライナ...
日経新聞の核融合報道に異議あり 奈良林直(東京工業大学特任教授)
日本経済新聞が2月22日夜の電子版「イブニングスクープ」で「核融合、特許競争力で中国首位、未来のエネルギーに布石」との記事を配信し、まるで日本が核融合の分野で大幅に遅れを取っているかのように報じていた。核融合の過去10年間の特許出願を点数化して、1位が中国だと主張している。23日付朝刊にも1面トップで掲載されたこの記事に関して、核融合に詳しい研究者の間で、強い批判のメールが駆け巡った 核融合...
【第1007回】日本の原子力活用が称賛された
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林直 1月30日から2月2日まで米フロリダ州フォートローダーデールで開催された職業被ばく情報システム(Information System on Occupational Exposure=ISOE、アイゾエ)の北米シンポジウムに参加した。ISOEは、世界の430基を超える原子力発電所の事故・トラブル情報を共有し、原発で働く人たちの職業...
2050年カーボンニュートラルに必要なこと 奈良林直(東京工業大学特任教授)
グリーントランスフォーメーション(GX)とは、地球温暖化や環境破壊などを引き起こす温室効果ガスの排出を削減し、環境改善と共に経済社会システムの改革を行う政策である。この中核を成すのが二酸化炭素(CO2)を出さないグリーンエネルギーで、太陽光や風力などの再生可能エネルギーだけでなく、原子力にもにわかに注目が集まっている。 我が国も、産業革命以来の化石燃料中心の経済・社会・産業構造をクリーンエネ...
【第991回】成長戦略を起動させる原子力の活用
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林直 今年8月、岸田文雄首相は「原子力発電の活用」を指示した。それを受けて経済産業省が11月28日、有識者会議の原子力小委員会で、原子力活用策の方向性と行動計画の原案を提示した。政府のGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議で年内に最終決定する。活用策は、①安全審査を合格した原子力発電所の早期再稼働②現行法で最長60年とされてい...
【第979回】小型核融合炉は実用段階に程遠い
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林直 高市早苗内閣府特命担当大臣(科学技術政策)が昨年の自民党総裁選の時から主張している小型核融合炉の開発戦略を策定する政府の「核融合戦略有識者会議」の初会合が9月30日に開催された。世界の開発競争に負けないように開発投資を急ぐべきだとの意見も一部にあるが、実は核融合炉が商業用発電炉として実用化される見通しすら付いていないことを指摘した...
核シェルターの早期普及を 奈良林直(東京工業大学特任教授)
10月4日午前、北朝鮮から弾道ミサイル1発が発射され、東北地方上空を通過して約4600キロ飛行し、日本の排他的経済水域(EEZ)外側の太平洋に落下した。我が国の数か所で「Jアラート」(全国瞬時警報システム)による緊急情報発信が行われ、警戒の必要がない地域に誤って発信されたり、ミサイル通過後に警報が出されたりするなど、トラブルが相次いだ。しかし、北朝鮮は水爆をすでに所有し、運搬手段の大型の弾道ミサイ...
【第959回】IAEAは対ロシア制裁を発動せよ
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林直 ロシア軍に占拠されたウクライナ南部のザポリージャ原子力発電所が非常に危険な状態になっている。事態を深刻にとらえた国際原子力機関(IAEA)は、グロッシ事務局長が自ら現地に乗り込み、居座るロシア軍とザポリージャ原発の現状の調査に乗り出した。 ●メルトダウンの危険 ザポリージャ原発はロシアのウクライナ侵攻開始から間もない3...
【第956回】首相の原発政策転換を歓迎する
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林直 ロシアのウクライナ侵略に対する西側諸国の経済制裁とロシアの報復により、石油、天然ガスをはじめとするエネルギー価格が高騰する中で、電力需給は今冬へ向けて厳しい状況が続く。エネルギー資源を持たない我が国にとって、原子力発電所の最大限の活用は国家存続の唯一の選択肢である。岸田文雄首相が次世代型原発の開発・建設の検討を指示するなどエネルギ...
学術会議は学問の中立性を保て 奈良林直(北海道大学名誉教授)
「日本学術会議こそ学問の自由を守れ」と題した2020年10月5日付の「今週の直言」は大きな反響を呼んだ。学術会議は大学での軍事研究に反対して2016年9月に設立された「軍学共同反対連絡会」に牛耳られている。憲法9条の改正に反対する「九条科学者の会」の呼び掛け人の1人で名古屋大学名誉教授の池内了氏らが連絡会の共同代表を務める。船底に空気泡を注入すると船の推進抵抗が削減されるという北海道大学のM教授の...
【第947回】首相は原発審査の迅速化を指示せよ
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林直 電力需給は今冬へ向けて厳しい状況が続く。岸田文雄首相は今月、冬までに最大9基の原子力発電所を再稼働するよう指示を出したが、電力会社が航空機テロ対策の工事を終えて再稼働することを決めている原発も含むので、新味に乏しい。しかも、対象となる原発は西日本のものに限られ、電力需給の逼迫ひっぱくが特に懸念される東日本の原発が入っていない。 ...
【第939回】過度の再エネ優先が招いた電力逼迫
国基研理事・北海道大学名誉教授 奈良林直 6月下旬の35度を超える酷暑の中で、東京電力管内に電力需給逼迫ひっぱく注意報が連日発令された。寒波が到来した3月に一段上の「警報」が出されたのに続く事態だ。電力が不足する根本的な原因は、静岡県の浜岡原子力発電所から北の多数の原発が再稼働していないことにある。つまり、原発への依存度をできる限り減らし、不安定な太陽光などの再生可能エネル...
日独エネルギー政策の失敗 奈良林直(東京工業大学特任教授)
ロシアのウクライナ侵攻を機に、欧州はエネルギー政策の大幅な見直しを迫られている。中でもドイツでは、メルケル前首相により石炭火力や原発に依存しないグリーンエネルギー政策を採ってきたことが、ここにきて大きく響いている。 一方のロシアは、短期のウクライナ占領には失敗したが、西側の経済制裁はしのいでいる。多くの経済学者が「ロシアはすぐにデフォルト(債務不履行)に陥り、経済破綻する」と言ったが、現実は...
【第928回】泊原発運転差し止め判決と原告弁護団
国基研理事・北海道大学名誉教授 奈良林直 札幌地裁が5月31日、北海道泊村にある北海道電力泊原子力発電所1~3号機の運転差し止めを認める判決を出した。東日本大震災に伴う東京電力福島第一原発の事故後、各地で原発の運転差し止めや設置許可取り消しを求める訴訟が起こされたが、いずれも上級審で覆っている。今回の原告も「脱原発弁護団全国連絡会」の支援を受けた「日本国内又は海外に居住する...
急ピッチのSMR開発と日本への期待 奈良林直(東京工業大学特任教授)
国際原子力機関(IAEA)の要請により小型量産型原子炉(SMR)の規格や効率的な設計・製造の技術に関するオンラインの国際会議に急遽参加した。会議は5月10日から13日にかけてウイーンのIAEA本部で開かれ、世界から約70名の専門家が参加したが、なんと筆者は初日のプレゼンに指名された。 SMRを設計・建設するうえで、安全性と信頼性の確保と大幅なコストダウンは欠かせない。そのためのCodes a...
もんじゅをSMRとして生かせ 奈良林直(東京工業大学特任教授)
欧州はロシアの天然ガスと石油に依存しており、現在も輸入を続けている。もしもロシアが欧州向けの天然ガスのバルブを閉めれば、ドイツをはじめ欧州の国々のエネルギー源は断たれ、大停電が発生して産業と経済は大打撃を受ける。ドイツは2022年中に脱原発を完了すると言っているが、自国の石炭エネルギーに戻るだけだ。フランスをはじめ欧州連合(EU)各国が原発の建設を急ぐとしているが、建設には4、5年かかる。我が国で...
国民の命守る核シェルター設置を 奈良林直(東京工業大学特任教授)
ロシアが核兵器で恫喝する中、ウクライナ侵略と市民の虐殺が続いている。国連も北大西洋条約機構(NATO)もこの暴虐を止める術がない。せいぜいドローンや対戦車ミサイル、地対空ミサイルなどを供与するに留まっている。 そうした中で、ウクライナのマリウポリでは、アゾフスタリ製鉄所の地下に築かれたシェルターがウクライナ軍の抵抗拠点になっているが、永世中立国のスイスは、全国民を収容できる核シェルターの設置...
国民の命を守ることができる憲法改正を 奈良林直(東京工業大学特任教授)
ロシアの核兵器の恫喝のなかで、ウクライナに対する侵略と市民の虐殺が続いている。国連常任理事国のロシアや中国の同意が無ければ、安全保障理事会は機能しないことが証明された。まさにやりたい放題である。ロシア軍は原子力発電所へも侵入、制圧しており、核不拡散防止条約(NPT)体制も、脆くも破壊された。日本海でもロシアは軍事訓練を活発化しており、平和ボケした日本はこのロシア侵略の危機に覚醒すべきだ。 フ...
再び被爆国にならぬために 奈良林直(東京工業大学特任教授)
ロシアのウクライナを侵略から1カ月余り、プーチン大統領は「我々は最強の核大国の一つ」と西側諸国を恫喝しながら、侵略開始早々、核戦力を「特別警戒態勢」に置くように命じ、すでに作戦部隊を展開している。また、小型の戦術核使用もほのめかして状況をエスカレートさせ、西側を牽制している。ウクライナへの支援を弱める意図も読み取れる。西側の軍事専門家は、ロシアが生物化学兵器を使用する可能性についても指摘している。...
【第904回】原発を再稼働させれば電力危機は起きない
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林直 2011年3月の東京電力福島第一原発事故以降、我が国は太陽光発電を中心とする再生可能エネルギー優先政策を推進してきた。しかし、太陽光や風力発電は変動電源と呼ばれ、出力低下を補うために火力発電所が需給調整をしている。これでは、二酸化炭素の排出を効果的に減らすことはできないし、需給調整がうまくいかないと大停電を引き起こしかねない。3月...
急がれる原発再稼働と規制委の改革 奈良林直(東京工業大学特任教授)
天然ガスや石油の価格はロシアのウクライナ侵攻でさらに高騰を続けている。欧米諸国や我が国もロシアに対する経済制裁を強化しているが、プーチン大統領は、欧州への天然ガス供給バルブを開閉する権利は、ロシアにあると明言している。欧州は天然ガスの約4割をロシアに依存しており、ロシアにより天然ガスの供給が絶たれると国の経済や産業活動が破綻する。我が国も天然ガスの約10%がロシア産で、日本の経済制裁に対してロシア...
ウクライナ侵攻で見直し迫られる脱炭素政策 奈良林直(東京工業大学特任教授)
ロシアのウクライナ侵攻に伴い、脱炭素を主眼とする欧州のエネルギー政策が大幅な見直しを迫られている。欧州連合(EU)の脱炭素政策を主導してきたドイツは、メルケル前首相により脱原発政策と太陽光や風力発電による再生可能エネルギー優先の政策を十年以上にわたり強力に推進してきた。その一方、発電出力が低下した際にその谷を埋めるための火力発電の燃料を自前の石炭からロシアから供給される天然ガスに挿げ替えることで、...
【第893回】ロシアが狙うウクライナ原発の順次制圧と運転停止
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林直 3月4日未明、ロシア軍がウクライナ南部のザポリージャ原子力発電所の敷地内に侵入し、同原発を制圧した。ここはウクライナにある原子炉15基のうち6基を持ち、合計出力600万キロワット(kW)の欧州最大の原発だ。ウクライナでは電力の51%を原発が供給している。ロシアはウクライナの石油施設や天然ガスパイプラインも攻撃しており、国内のエネル...
【第890回】水力と原子力の組み合わせが最強―国会で意見陳述
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林直 参議院の「資源エネルギーに関する調査会」に参考人として招かれ、国基研のエネルギー問題研究会による政策提言「脱炭素の答えは原発活用だ」(令和3年4月12日)の基になった具体的なデータを用いて意見陳述をした。エネルギー問題研究会は、気候変動枠組み条約の交渉に加わった有馬純東大特任教授らの参加を得て、工学分野だけでなく、経済、防衛の視点...