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2022.04.18 (月) 印刷する

国民の命を守ることができる憲法改正を 奈良林直(東京工業大学特任教授)

ロシアの核兵器の恫喝のなかで、ウクライナに対する侵略と市民の虐殺が続いている。国連常任理事国のロシアや中国の同意が無ければ、安全保障理事会は機能しないことが証明された。まさにやりたい放題である。ロシア軍は原子力発電所へも侵入、制圧しており、核不拡散防止条約(NPT)体制も、脆くも破壊された。日本海でもロシアは軍事訓練を活発化しており、平和ボケした日本はこのロシア侵略の危機に覚醒すべきだ。

フィンランドなどもNATO加盟へ

ロシアと1340キロにわたって国境を接しているフィンランドのサンナ・マリン首相は、NATO加盟申請をめぐる政府内の議論を「6月よりも前に終わらせる」と述べ、スウェーデンの与党・社会民主党は4月11日に「ロシアのウクライナ侵攻により、スウェーデンの安全保障の立場は根本的に変わった」と声明を発表した。また、4月7日、日本もベルギーに滞在中の林外務大臣がパートナー国として招待されたNATO外相会議がウクライナへの軍事支援の強化で合意した。

一方、プーチン大統領に近いとされるロシアの政党「公正なロシア」のセルゲイ・ミロの党首は、北海道はロシアが権利を有する」などと、わが国のロシアへの経済制裁に対してとんでもない発言をし、日本海でのミサイル発射訓練などの軍事作戦も活発化している。

ロシア、北朝鮮、中国の3方向から核ミサイルがわが国に狙いを定めている。ロシアの大陸間弾道弾は、ロシア西部から北極海を越え、至近距離で米国本土にも照準を合わせている。そのような危機的な状況にわが国は置かれている。一見、平和に見える我が国も、核ミサイルに囲まれた環境の中にあるのだ。

非核三原則と9条の見直し急げ

我が国は核拡散防止条約(NPT)に加盟し、国際原子力機関(IAEA)の厳しい査察を忠実に守って、原子力の平和利用と再処理を認められている。しかし、核保有国が非核保有国を核兵器で恫喝しながら侵略して戦争犯罪も厭わないようでは、NPT体制そのものが立ち行かない。

特に、我が国は、従来から非核三原則のもとで、原子力発電と再処理による平和利用に徹してきたNPT体制の優等国であることはIAEAが認めている。しかし、北朝鮮は最近行った大型のICBM実験で、米国本土への射程確保とともに大気圏への再突入にも成功した可能性が報じられている。ロシア、北朝鮮、中国の核ミサイルのかなりの割合が日本に狙いを定めている事実はもっと自覚しなければならない。

我が国が再び被爆国にならないためには、いかに国を守るべきか、核攻撃に対する抑止力をどのように確保すべきかの議論を真剣に行うべきだ。憲法9条も変える必要がある。「ノーモア広島」は、残念ながら核の抑止力を持って初めて可能となる。自衛隊を国防軍に位置づける憲法改正や非核三原則の見直しも急がねばならない。これらの議論は参議院選挙の最大の争点であるべきだ。

最近は、節操もなく、共産党までが、有事には、自衛隊を使うと明言している。憲法9条の制約のもとで、わが国は核兵器保有国から見れば、核攻撃に丸腰で、これほど侵略しやすい国はない。ひとたび、ロシアや中国、北朝鮮から恫喝されたら間に合わない。