日本の近海は、かつてない危機に襲われている。
4月7日、中国人民解放軍のY9機が沖縄県の与那国島近海上空から宮古島南方の太平洋上を往復した。機体に取り付けられているアンテナ等から電子戦機であることが判明した。電子戦機とは、電磁波を軍事行動に利用するための装備を持った航空機で、レーダーやGPS機能、ミサイル誘導機能などに影響を与え、戦線を有利に展開させるために活用される。電子戦機が上空にいる間は、ミサイル等の発射を制限しなければならない状況が生じる。
活発な動き見せる中露
電磁波を利用する電子戦は、相手の通信能力を停止させるとともに、破壊活動や人を傷つける攻撃をすることも可能だ。電子戦機の登場は、中国の台湾攻略に向けた新たな動きであり、日本近海に電子戦の脅威が忍び寄っていることを示唆している。今回の飛来は、台湾から111キロの距離に配置されている陸上自衛隊与那国沿岸監視隊の電磁波防衛能力の調査のためと考えられる。台湾進攻に向け、日米と中国との本格的な情報戦が始まっているのだ。
また、東シナ海のみならず日本海における近隣国の軍事展開が危惧される。昨年来、北朝鮮は頻繁に弾道ミサイルの発射実験を行い、3月24日には、わが国の排他的経済水域内に落下させている。周囲の漁船や航行船舶に被害は無かったものの、「お花畑」日本以外の国であれば宣戦布告と受け取り臨戦態勢に入るほどの挑発行為だ。
日本海ではウラジオストクに基地を置くロシア太平洋艦隊が展開している。特に潜水艦は、日本海を潜航しウラジオストクと太平洋を往来している。そのため、北朝鮮が日本海に向けてミサイルを発射する時には、ロシアの合意が必要である。燃料の調達、技術的支援など北朝鮮の弾道ミサイル開発には、ロシアが支援していることも考えられる。
危機への意識薄い日本
ロシアのクリミア侵攻に関係し、日本海では、米国および日本の潜水艦が展開しロシア海軍の動きをけん制している。北朝鮮のミサイル発射実験は、日米の潜水艦を威嚇するために、ロシアの指示を受けて行った可能性もある。また、4月13日には、中国の情報収集艦が、米空母「エイブラハム・リンカーン」を追うように日本海に侵入し、偵察活動を行っている。ウクライナ問題に絡み、日本沿岸は軍事的な脅威にさらされている。
さらに、ロシアは、日本海で弾道ミサイルの発射訓練を行った。日本海は紛争の現場になっているのだ。
しかし、日本は山口県および秋田県において、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の整備を地域住民の反対運動により見送るなど、迫りくる危機に対する意識が薄い。
早急に日本の沿岸警備防衛体制の強化を図るべきである。特に日本海は手薄であることは否めない。中国、ロシア、北朝鮮、この三方からのミサイル攻撃、電磁波攻撃、さらにサイバー攻撃から日本国民を守るためには、最新鋭の防衛機能が求められる。その整備のためには、防衛費の増額は必要不可欠となる。