公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2024.04.08 (月) 印刷する

沖縄防衛とシェルター設置の必要性 奈良林直(東京工業大学特任教授)

政府は3月29日、日本への武力攻撃を想定し、住民の避難施設(シェルター)を整備する方針を決めた。沖縄では石垣島など先島諸島の五つの市町村に新たなシェルターを造る計画だ。これに対し、沖縄県の玉城デニー知事は「かねてから『対話による平和構築こそが日本が取るべき正しい外交手段だ』と言い続けてきた。基地の計画ありき、配備ありき、シェルターの建設ありきでは説明は十分ではない。平和であるための取り組みをどうするのか政府の説明を受けたい」と述べた。この発言は現在の緊迫した国際情勢を理解していない。

知事の無理解は中国を利する

中国の軍事的圧力が高まり、政府は先島諸島を含む南西諸島の防衛力強化を急いでいるが、玉城知事は以前から非協力姿勢が顕著だ。例えば、政府は那覇市に駐屯している陸上自衛隊第15旅団を師団に格上げする方針で、人員増に伴う訓練場用地として沖縄県うるま市のゴルフ場跡地を整備する計画だ。しかし、2月17日に玉城知事は県庁に訪れた木原稔防衛相に反対の意を伝えた。県議会も「白紙撤回を求める意見書」を3月7日に全会一致で可決した。

シェルター建設を含め、有事に備えることに対する玉城知事の無理解は、台湾の武力統一を否定しない中国を利する。4月5日昼過ぎに沖縄県の尖閣諸島の沖合で中国海警局の船舶2隻が、日本の領海に侵入した。このような領海侵入は3月28日にもあり、今年で8回目となる。中国は尖閣諸島の日本の実効支配を突き崩そうとしている意図が見える。

ロシアのウクライナ侵略で明らかになったのは、武力侵略が軍事施設ではない民間アパートや病院、学校などを破壊し、子供を含む一般国民を大量に殺戮することだ。台湾有事は日本有事だから、中国の武力攻撃に備え、特に台湾に近接する沖縄の先島諸島にシェルターを建設するのは当然のことだ。

原発事故・テロにも対応可能

シェルターの整備方針は、令和4年12月に閣議決定された「国家安全保障戦略」に基づく。3月29日、政府は「武力攻撃を想定した避難施設(シェルター)の確保に係る基本的考え方」を関係省庁に通知した。武力攻撃を受ける可能性がある場合、攻撃に先立って住民を避難させることが最も重要だが、避難が困難な地域では「特定臨時避難施設」とする新たなシェルターを造る。

現在、避難施設は全国で約9000カ所指定され、Jアラートの発出後の避難訓練を実施している地方自治体も多い。しかし、欧米の主要先進国では国民の70%から100%を収容できるシェルターが整備されているのに、我が国の収容能力は0.02%で皆無に等しい。国民の命を守る防衛力の強化とシェルターの設置は急務である。

筆者は、国土強靭化を目指す一般社団法人「レジリエンスジャパン推進協議会」の委員を務めている。南西諸島などの備えを優先しつつ、本土の大都市でもシェルターの整備を推進する。筆者の開発した空気浄化システムをシェルターに設置することで、「NBCR」(原子力発電所事故、バイオテロ、化学テロ、核物質テロ)への対応が可能になる。米国の連邦非常事態管理庁(FEMA)の核攻撃対応ガイダンスが指摘する電磁波パルス(EMP)攻撃にも備えたい。

https://www.kokuminhogo.go.jp/hinan/index.html#shelter