ロシア軍がこの冬、連日のようにウクライナの発電所や送電線にミサイル攻撃を加え、ウクライナの電力インフラを破壊し続けた。厳冬期を乗り切るため、日本も官民が一体となって発電機をウクライナに送ったが、ウクライナ側は「依然として電力不足は厳しい」として、さらなる支援を求めている。
●「発電機を1万台でも欲しい」
在日ウクライナ大使館高官は筆者に対し、「これから春に向かうとしても、小型のもので良いから、発電機は7000台でも1万台でも欲しい。停電した病院の手術室や避難中の地下室で、医師がスマートフォンの明かりを頼りに多くのけが人の手術をしている状況であり、発電機を必要としている所はたくさんある」と訴えた。
日本の外務省の報道発表(1月23日付)によると、日本政府はこれまでに発電機262台をウクライナへ供与することを決め、国際協力機構(JICA)を通じて輸送した第1陣の25台が昨年12月に現地に到着した。続いて237台が1月20日以降、順次ウクライナに到着している。「現地に到着した発電機は、ウクライナの電力や熱、ガス供給などを担う企業等に供与され、エネルギー事業の継続等のために活用される予定」という。
日本政府が供与した発電機の多くはヤマハ発動機製で、同社は小型発電機215台をJICAに納品し、それが1月20日に現地に到着したと発表した。デンヨー社も、JICAを介して中大型サイズ8機種のエンジン発電機12台をウクライナへ向け出荷したと発表した。楽天はウクライナへの人道支援として、10億円の寄付に加え、発電機500台を寄贈した。
ウクライナでは1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故の後、電力不足に見舞われ、停電が頻発した。これがもとで、製鉄所や造船所などウクライナの重工業は壊滅的な打撃を受けた。ロシア軍による電力インフラ破壊は、ウクライナにとって2回目の危機なのだ。
ウクライナの原発がロシアのミサイル攻撃を受ければ、電力不足の一層の深刻化に加えて、放射能汚染が広がりかねない。そのため国際原子力機関(IAEA)は昨年12月から多くの職員が志願してウクライナ国内の原発に常駐し、人間の盾となって攻撃を防いでいる。
以前、スウェーデンの原発を訪問した際、職員が小型のHondaの可搬型発電機を指し、「万一のときに外部電源を喪失しても、この発電機があれば、フィルターベントのバルブを開けて放射性物質を濾し取り、地元汚染を回避できる」と言って、発電機の有用性を強調した。
●空気浄化システムも所望
ウクライナ大使館高官は筆者に、発電機以外では、「ロシアの無差別テロ攻撃に備え、ウイルスや細菌を除去できる空気浄化システムを学校、病院、自治体の役所、地下鉄の駅に欲しい」と語った。
岸田首相はそうした要望に応えて、発電機でも空気浄化システムでも、日本が供給できるものをウクライナに供給するよう関係官庁に指示を出すべきだ。5月の主要7カ国(G7)首脳会議(広島サミット)に向けて、首相のリーダーシップが必要だ。(了)
第326回 早急にウクライナに電源車両を
ロシアはウクライナの電力インフラを執拗に攻撃し大ダメージを与えている。電源ロスなら原発が危険に晒され、病院で手術もできず、市民は寒さに震える。わが国は震災でも活躍する電源車両を持つ。早急にウクライナに送り届けるようリーダーシップを発揮して欲しい。