公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

織田邦男の記事一覧

国基研企画委員・麗澤大学特別教授・元空将 織田邦男    4月10日の日米首脳会談で、「未来のためのグローバル・パートナー」と題する共同声明が発表された。11日、岸田文雄首相は米議会演説で、日本はグローバル・パートナーとして応分の責任を果たすと力説した。  グローバル・パートナーシップが日米首脳会談で取り上げられたのは、初めてではない。竹下登、海部俊樹、宮沢喜一各元首相の首脳会...

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国基研企画委員・麗澤大学特別教授・元空将 織田邦男    円安、物価高騰の影響で、防衛装備品の調達価格が高騰し、「防衛力の抜本的強化」が危ぶまれている。2月19日、防衛省の有識者会議で、座長の榊原定征経団連名誉会長は「為替変動を考えると、5年間に43兆円の枠で防衛力強化ができるのか。現実的な視点で見直す必要がある」と問題提起した。  これに対し木原稔防衛相は20日、「必要な防衛...

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国基研企画委員・麗澤大学特別教授・元空将 織田邦男    1月14日、ロシアの早期警戒機A50(メインステイ)がウクライナ南東のアゾフ海上空でウクライナ軍の対空ミサイルによって撃墜された。日本ではあまり報道されていないが、外国メディアはこの日をロシア軍の「暗黒の日」と伝えた。A50 が撃墜された軍事的意味は大きい。  A50は、半径650キロ以内の航空機を発見し、半径300キロ...

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国基研企画委員・麗澤大学特別教授・元空将 織田邦男    「戦争の帰趨は後方(ロジスティックス)で決まる」という。また「制空権なき勝利はあり得ない」ともいわれる。今年6月からのウクライナ軍による反転攻勢は思ったほどの成果を出せず、ウクライナの戦線は膠着気味である。ウクライナ軍の苦戦は、ロシアが制空権を握る戦況に加え、兵器不足、弾薬不足という「後方」に起因する面が大きい。  後方...

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国基研企画委員・麗澤大学特別教授・元空将 織田邦男    昨年12月に閣議決定された国家安全保障戦略は、総合的な国力により安全保障を確保するという観点が強調されており、優れた戦略といえる。だが、残念ながら二つの欠陥がある。  一つは我が国の核抑止戦略が欠けていることだ。安保戦略は全31ページの労作だが、核抑止については、たった2行の記述しかない。米国による拡大抑止の強化と非核三...

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7月28日、令和5年度版防衛白書が公表された。昨年12月の国家安全保障戦略(以下「安保戦略」)など3文書の決定後、初めて刊行される白書である。 初めて安保戦略を策定した2013年以降、約10年間における安全保障環境の変化や、我が国の防衛力強化の取り組み、3文書決定に至った経緯や概要を本文の前に特集している点、また、防衛省が主管官庁である国家防衛戦略(以下「国防戦略」)について、本文とは別に特...

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6月6日、ウクライナ南部のカホフカ・ダムが決壊した。これによりへルソン地区の広域(東京23区に匹敵)が洪水に襲われている。 決壊の原因として、①ロシアによる爆破②ウクライナによる爆破③豪雨により安全水位を超えたことによる自然決壊―の3通りの可能性が考えられる。 ②と推定する根拠は、洪水によりドニプロ川東岸のロシア軍陣地が無力化されると共に、ロシア占領下のクリミア半島の水源地喪失といった...

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国基研企画委員・麗澤大学特別教授 織田邦男    フランスのマクロン大統領は4月5日訪中し、習近平国家主席と会談した。帰国の途次、マクロン氏は台湾問題に関して、欧州は中立的であるべきだとの見解を示し、「欧州を代表する見解ではない」と批判を浴びた。帰国後、「現状変更を認めないというフランスや欧州の立場は変わらない」と軌道修正したものの、欧州にとって「台湾有事」は所詮「対岸の火事」と...

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2月5日、米空軍は、領空に侵入して米本土を横断した中国の気球をサウスカロライナ州沖の大西洋上で撃墜した。最新鋭のF22戦闘機を出動させ、最新鋭の空対空ミサイルAIM9Xを使用した。 米政府は中国の偵察気球が領空を侵犯し、主権を侵害したと主張し、中国側は民間の気象観測気球が天候の影響を受けて予想外に米国領空に入ったと反論する。現在、米国が残骸の回収、分析作業を行っており、真相究明が待たれる。 ...

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国基研企画委員・麗澤大学特別教授 織田邦男    11月25日、防衛省のシンクタンクである防衛研究所は「中国安全保障レポート2023」を公表した。29日には米国防総省が中国の軍事力に関する年次報告書を公表した。両報告書とも中国が米国中心の国際秩序への挑戦を強めているという認識で一致している。  後者は核を含む軍事戦略的な記述が多く、前者は、サブタイトルが「認知領域とグレーゾーン...

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11月22日、「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」の報告書が提出された。9月、有識者会議の構成員が発表された際、自衛官OBが入っていないことに違和感を覚えたのは、筆者だけではない。「防衛力を考える」のに、防衛力の中核である自衛隊の現場の声は必要ないのかと。 この会議はもともと財務省が主導したものであり、防衛費を国内総生産(GDP)の2%にどう「見せかける」か、「財源確保」をどう担...

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国基研企画委員・麗澤大学特別教授 織田邦男    10月4日、北朝鮮が発射した「新型の地対地中長距離弾道ミサイル」(朝鮮中央通信)は、日本列島上空を通過して太平洋に着弾した。飛距離は4600キロで、米インド太平洋軍の拠点グアム島攻撃用と言われている。続いて6日に短距離弾道ミサイル2発、9日にさらに2発を発射した。今年になって既に25回、40発を超えるミサイルを発射しており、明らか...

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国基研企画委員・麗澤大学特別教授 織田邦男    今年5月の日米首脳会談で、岸田文雄首相は、日本の防衛力を抜本的に強化し、裏付けとなる防衛費を増額するとともに、「反撃能力」の保有を含めあらゆる選択肢を排除しない考えを伝え、バイデン米大統領から強い支持を得た。  6月、政府は経済財政運営の指針となる「骨太の方針」を決定し、防衛費については、北大西洋条約機構(NATO)加盟国が国内...

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国基研企画委員・麗澤大学特別教授 織田邦男    ペロシ米下院議長の台湾訪問を受けて、台湾海峡情勢が一挙に緊迫した。  7月28日、習近平中国国家主席はバイデン米大統領との電話協議で、ペロシ氏の訪台があれば「深刻な結果」をもたらすと述べ、「火遊びする者は身を焦がす」と強く警告した。これより先、バイデン大統領は、記者団にペロシ氏訪台に関する米軍の懸念を語り、政権内に慎重論があるこ...

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令和4年度版防衛白書が公表された。今回の特徴は、ロシアのウクライナ侵略について章を設けて詳述したことと、台湾に関する記述を倍増し、台湾侵攻シナリオを初めて記載したことだろう。 昨年、中国に対する認識を「脅威」と言わず「安全保障上の強い懸念」と記述したことに賛否両論があった。今年も「脅威」とは述べていない。これを踏襲した上で「こうした傾向は近年より一層強まっていることから、今後も強い関心を持っ...

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国基研企画委員・麗澤大学特別教授 織田邦男    参院選が始まり、各党の舌戦が続く。防衛力増強については、共産党と社民党を除き、概ね認めているようだ。だが、相変わらず論議は表層的であり、自衛隊は現代戦が戦えるのかといった本質的な問いかけをする政党はない。  ●サイバー戦を戦えない  例えばサイバー戦である。現代戦では、旧来の陸海空といった戦闘領域(ドメイン)に加え、宇宙、...

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2月24日、ロシアによるウクライナへの大規模侵攻が始まった。今回のウクライナ侵攻は「奇襲」なのかというと、実はそうではなかった。昨年11月、米国はロシアの不穏な動きを察知しており、バイデン大統領は、「計画外軍事演習を計画しており、重大な挑戦」だと警鐘を鳴らしていた。その後、情報集約組織「タイガー・チーム」を編成したことからも、相当な情報を掴んでいたといえよう。 正確だった米国のインテリジェン...

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12月16日、衆議院選挙後、初めての憲法論議が衆議院憲法審査会で行われた。自由民主党が「自衛隊の明記」など4項目をたたき台とし、「国民のための憲法論議を一層深めていきたい」と述べたのに対し、立憲民主党は「『論憲』の立場をとり、必要な議論は行っていくが、特定の改正案を前提とするものや、改憲ありきであってはならない」と述べた。 日本維新の会は「来年の参議院選挙で憲法改正の国民投票を」と具体的スケ...

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