公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

織田邦男の記事一覧

国基研企画委員・麗澤大学特別教授 織田邦男    フランスのマクロン大統領は4月5日訪中し、習近平国家主席と会談した。帰国の途次、マクロン氏は台湾問題に関して、欧州は中立的であるべきだとの見解を示し、「欧州を代表する見解ではない」と批判を浴びた。帰国後、「現状変更を認めないというフランスや欧州の立場は変わらない」と軌道修正したものの、欧州にとって「台湾有事」は所詮「対岸の火事」と...

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2月5日、米空軍は、領空に侵入して米本土を横断した中国の気球をサウスカロライナ州沖の大西洋上で撃墜した。最新鋭のF22戦闘機を出動させ、最新鋭の空対空ミサイルAIM9Xを使用した。 米政府は中国の偵察気球が領空を侵犯し、主権を侵害したと主張し、中国側は民間の気象観測気球が天候の影響を受けて予想外に米国領空に入ったと反論する。現在、米国が残骸の回収、分析作業を行っており、真相究明が待たれる。 ...

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国基研企画委員・麗澤大学特別教授 織田邦男    11月25日、防衛省のシンクタンクである防衛研究所は「中国安全保障レポート2023」を公表した。29日には米国防総省が中国の軍事力に関する年次報告書を公表した。両報告書とも中国が米国中心の国際秩序への挑戦を強めているという認識で一致している。  後者は核を含む軍事戦略的な記述が多く、前者は、サブタイトルが「認知領域とグレーゾーン...

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11月22日、「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」の報告書が提出された。9月、有識者会議の構成員が発表された際、自衛官OBが入っていないことに違和感を覚えたのは、筆者だけではない。「防衛力を考える」のに、防衛力の中核である自衛隊の現場の声は必要ないのかと。 この会議はもともと財務省が主導したものであり、防衛費を国内総生産(GDP)の2%にどう「見せかける」か、「財源確保」をどう担...

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国基研企画委員・麗澤大学特別教授 織田邦男    10月4日、北朝鮮が発射した「新型の地対地中長距離弾道ミサイル」(朝鮮中央通信)は、日本列島上空を通過して太平洋に着弾した。飛距離は4600キロで、米インド太平洋軍の拠点グアム島攻撃用と言われている。続いて6日に短距離弾道ミサイル2発、9日にさらに2発を発射した。今年になって既に25回、40発を超えるミサイルを発射しており、明らか...

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国基研企画委員・麗澤大学特別教授 織田邦男    今年5月の日米首脳会談で、岸田文雄首相は、日本の防衛力を抜本的に強化し、裏付けとなる防衛費を増額するとともに、「反撃能力」の保有を含めあらゆる選択肢を排除しない考えを伝え、バイデン米大統領から強い支持を得た。  6月、政府は経済財政運営の指針となる「骨太の方針」を決定し、防衛費については、北大西洋条約機構(NATO)加盟国が国内...

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国基研企画委員・麗澤大学特別教授 織田邦男    ペロシ米下院議長の台湾訪問を受けて、台湾海峡情勢が一挙に緊迫した。  7月28日、習近平中国国家主席はバイデン米大統領との電話協議で、ペロシ氏の訪台があれば「深刻な結果」をもたらすと述べ、「火遊びする者は身を焦がす」と強く警告した。これより先、バイデン大統領は、記者団にペロシ氏訪台に関する米軍の懸念を語り、政権内に慎重論があるこ...

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令和4年度版防衛白書が公表された。今回の特徴は、ロシアのウクライナ侵略について章を設けて詳述したことと、台湾に関する記述を倍増し、台湾侵攻シナリオを初めて記載したことだろう。 昨年、中国に対する認識を「脅威」と言わず「安全保障上の強い懸念」と記述したことに賛否両論があった。今年も「脅威」とは述べていない。これを踏襲した上で「こうした傾向は近年より一層強まっていることから、今後も強い関心を持っ...

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国基研企画委員・麗澤大学特別教授 織田邦男    参院選が始まり、各党の舌戦が続く。防衛力増強については、共産党と社民党を除き、概ね認めているようだ。だが、相変わらず論議は表層的であり、自衛隊は現代戦が戦えるのかといった本質的な問いかけをする政党はない。  ●サイバー戦を戦えない  例えばサイバー戦である。現代戦では、旧来の陸海空といった戦闘領域(ドメイン)に加え、宇宙、...

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2月24日、ロシアによるウクライナへの大規模侵攻が始まった。今回のウクライナ侵攻は「奇襲」なのかというと、実はそうではなかった。昨年11月、米国はロシアの不穏な動きを察知しており、バイデン大統領は、「計画外軍事演習を計画しており、重大な挑戦」だと警鐘を鳴らしていた。その後、情報集約組織「タイガー・チーム」を編成したことからも、相当な情報を掴んでいたといえよう。 正確だった米国のインテリジェン...

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12月16日、衆議院選挙後、初めての憲法論議が衆議院憲法審査会で行われた。自由民主党が「自衛隊の明記」など4項目をたたき台とし、「国民のための憲法論議を一層深めていきたい」と述べたのに対し、立憲民主党は「『論憲』の立場をとり、必要な議論は行っていくが、特定の改正案を前提とするものや、改憲ありきであってはならない」と述べた。 日本維新の会は「来年の参議院選挙で憲法改正の国民投票を」と具体的スケ...

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