6月7日、中国海軍の空母「山東」を太平洋上で監視していた海上自衛隊P3C哨戒機に対し、山東から発艦したJ15戦闘機が水平距離約45メートルまで接近し、約40分間付きまとった。8日にも、山東を監視していたP3Cの進路前方約900メートルを横切るという危険飛行を繰り返した。日本政府は外交・防衛当局のルートを通じて中国側に強い懸念を伝え、再発防止を求めた。だが中国側は「日本の哨戒機の偵察活動がリスクの根本原因」とし、「日本側にこのような危険な行為をやめるよう促す」と反発した。
当時、別の中国空母「遼寧」が「第2列島線」(小笠原諸島~グアム~サイパン~パラオ)を初めて越えて日本最東端の南鳥島の西方まで進出していた。西太平洋に中国空母が2隻同時に展開したのは初めてである。
●遠洋海軍に成長した中国海軍
今回の中国海軍の動きには二つの意味がある。一つは空母が地上レーダーの届く沿岸でしか行動できない「ブラウンウォーター・ネイビー」(沿岸海軍)から脱し、遠洋での持続的な海上作戦を実施できる「ブルーウォーター・ネイビー」(遠洋海軍)に成長したこと。二つ目は空母から戦闘機が発艦して海自P3Cに接近したように、洋上での艦隊防空能力を保有したことだ。J15には2種類の空対空ミサイルが搭載されていたことが写真で確認されている。積載燃料が搭載兵器次第で制約されるスキージャンプ方式での発艦にもかかわらず、8日には約80分間もP3Cに付きまとった事実は注目に値する。
他方、中国空母が太平洋上で行動する際の弱点は、「第1列島線」(南西諸島~台湾~フィリピン)を通過しなければならないことだ。通過時点から、今回のように行動がリアルタイムで捕捉される。位置が特定される空母は、対艦ミサイルや潜水艦の容易な目標になり、極めて脆弱である。
しかも遼寧、山東のようなスキージャンプ方式の空母では、発艦に加速を必要とする大型で重い早期警戒機の運用ができない。このため、水平線を超えて低高度で飛来する戦闘機には無力である。だが建造中の3隻目の空母「福建」はカタパルト方式で、早期警戒機KJ600が搭載されるという。福建が就役すれば、空母打撃群としての能力は格段に向上する。
●硫黄島を「不沈空母」に
西太平洋で中国空母の跳梁跋扈を許してはならない。日本の防空監視網は米ソ冷戦時代の北方重視のままであり、太平洋側は驚くほど手薄である。北大東島(沖縄県)、南鳥島(東京都)への対空レーダー配備を急ぐとともに、第2列島線の要である硫黄島(東京都)を要塞化、「不沈空母」化し、米領グアムとの連携で強力な第2列島線を築く必要がある。(了)