公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

江崎道朗

【第1273回】創生『日本』が自民党の軸となれ

江崎道朗 / 2025.07.22 (火)


国基研企画委員・麗澤大学特任教授 江崎道朗

 

 石破自民党は昨年の衆院選、今年の都議会選、そして今回の参院選と3回続いて敗北した。
一方、2012年12月の衆院選以来、アベノミクスと積極的平和主義を掲げた安倍自民党(第2次政権)は連戦連勝し、現役世代を含む幅広い世代からの支持を獲得した。
 自民党の支持率が低迷しているのは安倍路線を見失ったからではないか。そう考えた派閥横断的政策集団「創生『日本』」は、安倍路線を引き継ぐ立場から、今年5月より自民党の政策見直しを進めてきた。創生『日本』の衛藤晟一幹事長、木原稔事務局長は6月29日、記者会見を行い、「日本がめざすべき道──創生『日本』の役割」と題する新方針を発表した。

 ●始動した安倍路線継承集団
 創生『日本』は、自民党の支持率が近年低迷し、昨年の衆院選では大敗を喫し、与党が過半数割れとなったことについて、「その一因は、創生『日本』及び第2次安倍政権が掲げた政策理念を見失いつつあることにある」と分析し、第2次安倍政権以降の政治が成し遂げたことと残された課題について論点整理を行った、としている。
 論点整理の会合には昨年の自民党総裁選に出馬した高市早苗、小林鷹之両氏も参加しており、安倍路線を引き継ぐ立場から、以下のような新方針を打ち出した。
 一、皇室を中心として営まれてきた歴史と伝統、精神こそが我が国の支柱である。皇室を支える仕組みの再建に取り組み、日本社会の秩序を揺るがす選択的夫婦別姓などには断固反対する。
 一、「台湾有事は日本有事」という認識のもと、自分の国は自分で守る防衛・インテリ
ジェンス体制を強化し、同盟国、同志国との連携を深め、「自由で開かれたインド太平洋」を推進する。
 一、親の世代の家族が存命のうちに全拉致被害者の即時一括帰国を実現する。
 一、軍事組織としての自衛隊、緊急事態条項を明記する憲法改正を何としても成し遂げる。
 一、アベノミクスの影響で日本経済は再び成長軌道に乗りつつあるが、一方で企業の設備投資、個人の所得、家計の消費は伸び悩んでいる。そこでさらなる設備投資(人件費を含む)を喚起すべく、科学技術予算の増加や減税、規制改革を含むあらゆる政策を総動員する。
 一、太陽光、風力など再生可能エネルギーの政策を、国益に資する方向で見直し、政治の責任において原子力活用の拡大を進める。
 一、アベノミクスを通じて近年の雇用状況は改善したとはいえ、消費税増税と急増した社会保障費によって現役世代の負担が強まっている。よって改めて自助、共助、公助の原則を踏まえ、負担能力に応じて国民が国家運営を支える態勢を再構築する。

 ●選挙大敗を党再生につなげよ
 参院選で大敗を喫した自民党には、創生『日本』の新方針に基づき、人事だけでなく、政策の全面的立て直しを行うことを期待したい。(了)