公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

近藤正規の記事一覧

世界政治でインド系の活躍が目立ってきた。米国ではカマラ・ハリス副大統領が民主党大統領候補になり、史上初のインド系米大統領が誕生する可能性も出てきた。共和党副大統領候補になったJ・D・バンス上院議員の妻ウーシャ・バンスさん、共和党予備選に出馬したニッキー・ヘイリー元国連大使と実業家のビベック・ラマスワミ氏、ルイジアナ州元知事のボビー・ジンダル氏もインド系である。英国ではリシ・スナク前首相やサジド・ジ...

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予想外の辛勝だったモディ首相 6月4日に開票が行われたインドの総選挙(下院選、定数543)は、事前予想に反して与党連合の辛勝に終わった。モディ首相率いるインド人民党(BJP)は2019年の303議席から240議席へと大きく減らした。与党連合(国民民主同盟=NDA)が過半数の293議席を確保して政権を維持したものの、国民会議派を中心とする野党連合(インド国家開発包括同盟=INDIA)が234議...

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インドとフランスの軍事協力が進んでいる。インドのモディ首相は7月14日、フランスの革命記念日パレードに主賓として招待され、同日マクロン仏大統領と首脳会談を行った。今年は「印仏戦略的パートナーシップ」の25周年に当たり、共同声明では、防衛・安全保障や経済、エネルギーなどの分野で協力を進めていくことへの相互認識が示された。併せて、印仏関係の今後25年間の将来を示す「ホライズン2047:印仏戦略パートナ...

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米印関係が新たな段階に入った。国賓として米国を訪問したモディ首相は、6月22日のホワイトハウスの歓迎式典で、7000人のインド系米国人から大歓迎を受け、その後米議会の上下両院合同会議で自身7年ぶり2度目の演説を行って大喝采を浴びた。バイデン米大統領が同盟国以外の首脳を国賓として招いたのは初めてである。わずか数カ月前まではウクライナ問題でロシアに対するインドの姿勢を非難し、人権問題でインドを批判し続...

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安倍晋三元首相がテロ行為によって殺害されたことは、インドにも大きな衝撃を与えた。モディ首相は「最も親しい友人の悲劇的死去に、私は言葉にできないほどの悲しみと衝撃を受けている」とツイッターに投稿し、事件翌日の7月9日にインドが国を挙げて喪に服すると発表した。インドで過去に他国政治家の死去を受けて国全体が服喪した例を私は知らない。 モディ氏と安倍氏の付き合いは、モディ氏がまだグジャラート州の首相...

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3月19日、岸田文雄首相はインドを訪問し、モディ首相と首脳会談を行った。隔年に行われることになっている日本の首相の訪印は、2019年12月に予定されていた安倍晋三首相(当時)の訪印が直前で中止(正式には「延期」)となり、その後の新型コロナウイルスの感染拡大のため延び延びとなっていた。 周知のように、ロシアのウクライナ侵攻に対する国連安全保障理事会におけるロシア批判とロシア軍の即時撤退を求める...

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国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で、インドのモディ首相は「2070年までの温暖化ガスの排出実質ゼロ」という計画を打ち出した。世界第3位の温室効果ガス排出国インドは、これまで具体的な目標設定に慎重であったが、今回の会議で中国の習近平国家主席が欠席するのに対し、途上国を代表して気候変動問題に積極的に取り組む姿勢を示そうとしているようにも見えた。 しかし、気候変動問題に関する...

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自民党総裁選の投開票が29日に迫っている。事実上、日本の次期首相を決めるこの総裁選の結果は、日本の「自由で開かれたインド太平洋」戦略における重要なパートナーのインドにとっても少なからぬ重要性を持つことは言うまでもない。 安倍氏「後継」の高市氏に期待 今回出馬している4人の候補の中で、日印関係の観点からみて最も望ましいのは高市早苗氏であろう。第一の理由は、高市氏が安倍晋三前首相の支持を受...

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日米豪印4カ国によるQuad(クアッド)首脳が直接対面する会談が9月24日、ワシントンのホワイトハウスで開かれる。強硬路線を進める中国を念頭に置きつつ、自由で開かれたインド太平洋戦略を進めていくことを目的とするクアッドの中で、その中国を最も脅威と見ているのはインドである。 依然続く中国との国境問題 インドは昨年春、北部ラダック地方で中国軍の侵略を受け、6月には兵士20人の死者を出した。...

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 中国がインドの隣国ブータン東部の領有権を主張し始めた。6月初め中国は、世銀グループの地球環境ファシリティ(GEF)によるブータン東部「サクテン野生動物保護区」への支援案件に対して「中国が領有権を主張している地域だ」として反対した。 ブータンと中国は国交がないが、これまで国境画定協議を24回行っている。しかしブータン政府によると、これまで中国側が主張したのはブータン西部のドクラム高原と中部の...

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 国境問題を巡って中国とインドの関係が急速に悪化している。6月15日にはインド北西部のヒマラヤ山中の国境地帯ラダック地区にあるガルバン溪谷で軍事衝突が起き、20名のインド兵と43名の中国兵の死者が出た。1962年に突然の中国の侵略を受けたネルーと同じように、モディ首相は関係改善を目指してきた中国に裏切られたことを思い知らされた。 中印関係の虚実 インドは反中陣営の一員であるかのような感...

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 世界的な新型コロナウイルスの感染拡大と米中経済戦争の激化とともに、世界中の企業の間で中国から他国へ拠点を移そうとする動きが広まりつつある。最近の日経新聞の調査でも、日本企業の7割が海外のサプライ・チェーンの再構築を検討しているという。中国一辺倒になりすぎた多くの企業の有力な移転先として注目を集めつつあるのが、インドである。  ●中国からの移転を呼びかけ  インドでは新型コロナウイルスの感...

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国基研企画委員・国際基督教大学上級准教授 近藤正規    インド総選挙での与党人民党(BJP)の圧勝を受け、第2期モディ政権が発足した。外交政策は1期目と大きく変わらないとみられるが、とりわけ注目されるのは中国との関係だ。「強いインド」を掲げて選挙に勝ったBJPだが、そのマニフェストはインドの潜在的脅威である中国について一度しか触れていなく、それも日米印の3カ国協力と並んで記載さ...

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