松田学の記事一覧
【第162回】国会では国益をめぐる「攻防」を
国基研企画委員・横浜市立大学客員教授 松田学 「解散をめぐる攻防」という言葉が紙面に躍っている。政策をめぐる攻防ではない。政治は「国益」という価値を国民に提供する機能であり、何が国益であるかを国民に説得し、合意を得るのが選挙である。しかし、政権をめぐる党利党略と、落選したくない議員たちの「就活」の劇場と化した最近の政界は、私益追求の場に成り果てたように見える。 国民の政治不信が言われる...
【第147回】TPPで問われる「保守」の本質
国基研企画委員・横浜市立大学客員教授 松田学 日本の先を越してカナダとメキシコのTPP(環太平洋連携構想)交渉参加が承認された。だが、両国はもともと、昨年に日本が交渉参加を示唆したことを契機に参加を表明した国々だった。その理由は、TPPに入る日本との経済取引の有利性を維持するためであり、それは日本が参加した場合のTPPでの日本の立場の強さを暗示するものでもあった。 交渉参加は「親米」...
【第133回】消費税増税を景気回復につなげるために
大樹総研特別研究員 松田学 財政再建か景気か。この不幸な二項対立論が、課題解決への日本の決断を鈍らせている。本欄(第127回)で筆者は「社会保障と税の一体改革」の基礎知識として、5%程度の税率アップは選挙の対立軸にもならない最低限の措置だと論じた。だが、筆者の立場はむしろ「経済政策と税の一体改革」にある。それは、消費税増税が景気回復にもつながる第3の道だ。 赤字国債に歯止めを 残念な...
【第127回】消費税引き上げで国民の負担は増えない
大樹総研特別研究員 松田学 消費税率の5%引き上げを巡り、解散・総選挙も囁ささやかれているが、それは今の日本に必要な最低レベルにも満たない措置であり、国政選挙の選択肢になるものか疑問である。 私たちの世代の責任 国民は、高齢世代と現役世代と将来世代から成る。その国民全体では、消費税増税は負担の増加にならない。高齢世代や現役世代が(赤字国債の償還に必要な負担の形で)将来世代に押し付けて...
【第125回】TPP興国論
大樹総研特別研究員 松田学 環太平洋経済連携協定(TPP)賛成論者を売国奴と決め付ける「亡国論」が、ここまで日本を席巻する姿はやや異常である。正確な情報と事態への分析的な認識を持てば、例えば米国陰謀説が空想であることはすぐに分かる。 すでに日本は世界で最も開かれた国の一つであり、「開国」という言い方もやめるべきだ。TPPそれ自体が米国の対日輸出を大きく増やすものでもない。打撃を受けるの...
【第106回】震災復興財源の答えは増税なのか
大樹総研特別研究員 松田学 「震災復興の負担を将来世代にツケ回してはならない。だから復興国債を今の世代で償還すべく復興増税を」―。もっともらしい理屈だが、ちょっと待ってほしい。 将来世代へのツケ回しを言うなら、高齢世代への社会保障給付で膨らんできた赤字国債の方ではないか。こちらはなんと60年償還。借り換えを続け、3世代にわたり負担をツケ付け回している。60年とは本来、将来世代に資産を残...