島田洋一の記事一覧
【第1162回】トランプ戦略の重要ポイント
国基研企画委員兼研究員・福井県立大学名誉教授 島田洋一 米国でトランプ政権が復活する可能性が高まっている。また、トランプ氏暗殺未遂事件の影響などで共和党員の投票率が上がると見られる中、民主党の大統領候補選びの混乱もあって、議会の上下両院も共和党が多数を占める可能性が強まってきた。従って、第1次政権時以上に、トランプ共和党の目指す政策が高スピードで実現されていくと見ておくべき...
【第1148回】日台関係強化へ議員立法に踏み出せ
国基研企画委員兼評議員・福井県立大学名誉教授 島田洋一 5月20日、台湾の頼清徳新総統の就任式典が台北で開かれた。国基研からも、私を含む3名が招待を受けて参列した。 日本の超党派議員連盟である日華議員懇談会(日華懇、古屋圭司会長)も31名の代表団で訪れた。議員の数では、国別で最大だった。中国の反発を恐れずに参加した議員たちの姿勢は評価できる。頼総統も式典後に、日本の議員...
首相演説に欠けた米国人拉致問題 島田洋一(福井県立大学名誉教授)
米連邦議会の上下両院合同会議における岸田文雄首相の演説(4月11日)を聴いていて、明らかに不足を感じた部分があった。拉致問題である。 北朝鮮の拉致に関して岸田首相が発したのは次のひと言のみだった。 「北朝鮮による拉致問題は、引き続き重大な問題です」。簡単すぎるだろう。事情に疎い議員なら、何のことか意味を取り損ねたかもしれない。 米国の上下両院議員を前にしての演説という機会を得なが...
トランスジェンダーの不都合な真実 島田洋一(福井県立大学名誉教授)
アビゲイル・シュライアー著『トランスジェンダーになりたい少女たち』が産経新聞出版から出され、ベストセラーになっている。大変、意義深い。 米で成立しないLGBT法案 米議会上院は、民主党が提出したLGBT差別禁止法案(英語の名称は一般的装いをこらした「平等法」)を審議するに当たって、公聴会にシュライアーを公述人の1人として呼んでいる(共和党の推薦)。逆差別を生むとか、性観念の曖昧な児童を...
「ミシェル・オバマ奇襲作戦」はあるか 島田洋一(福井県立大学名誉教授)
米大統領選は、接戦州の多くで前大統領のトランプ(共和党)が現職のバイデン(民主党)をリードという世論調査結果の発表が続いている。 そうした中、取りざたされるのが、正式に大統領候補を決める夏の民主党大会の直前に同党候補をバイデンから元大統領夫人のミシェル・オバマに差し替えるという「ミシェル・パラシュート作戦」である。 共和党が注目する元大統領夫人 共和党きっての論客で上院議員のテッ...
【第1087回】手術で性別を変更できることが問題
国基研企画委員兼評議員・福井県立大学名誉教授 島田洋一 最高裁が10月25日、一定の条件の下で性別変更を認めた現行の性同一性障害特例法のうち、生殖腺(内性器である精巣又は卵巣)の「不機能化」を条件に定めた3条1項4号は違憲という決定を下した。 「性同一性障害者に対し、強度な身体的侵襲である生殖腺除去手術を受けることを甘受するか、又は性自認に従った法令上の性別の取扱いを受...
【第1059回】バイデン政権の対中宥和外交の危険
国基研企画委員兼研究員・福井県立大学名誉教授 島田洋一 米国のケリー気候変動問題担当大統領特使が7月中旬、中国を訪問し、外交トップの王毅中国共産党政治局員らと会談した。 気候変動対策は他の政治案件とは切り離して進めるべきだと訴えたケリー氏に対し、王氏は、米中関係は全ての問題がリンクしており、特に台湾問題で米側が中国側の意に沿う行動を取らなければ、脱炭素で踏み込んだ合意な...
【第1048回】米大使の「内政干渉」に苦言を呈す
国基研企画委員兼研究員・福井県立大学名誉教授 島田洋一 国会で先週成立したLGBTなど性的少数者への理解増進法については、エマニュエル駐日米大使が成立を執拗に働き掛けてきた。「内政干渉」とも言える出過ぎた行動であり、これで日米の友好な関係を保てるのか疑わしい。 大使の行動を「米国の圧力」と捉えると間違う。あくまで米民主党の圧力である。バイデン政権はLGBT担当特使を新設...
【第1025回】バイデン政権の基本姿勢と実行力への疑問
国基研企画委員兼研究員・福井県立大学教授 島田洋一 3月10日、北京において、中国が仲介する形で、イランとサウジアラビアが外交関係回復で合意した。これは、左翼イデオロギーに迎合しつつ、様々な政治的思惑から腰が定まらず、ともすれば言葉と行動の乖離が目立つバイデン米政権の「弱さ」を象徴する事例ではないか。 バイデン政権は、脱炭素原理主義の立場から石油産業を敵視し、サウジアラ...
【第1014回】無限定の「LGBT差別禁止」の危険
国基研企画委員兼研究員・福井県立大学教授 島田洋一 先進7カ国(G7)でLGBTなど性的少数者の差別禁止法が無いのは日本だけという主張があるが、事実に反する。 米国では、「性、性自認、性的志向に基づく差別の禁止」を謳った民主党提出のLGBT差別禁止法案(名称は平等法)は共和党議員のほぼ全員が反対しており、成立の見込みはない。反対理由の柱は、差別の定義が曖昧で濫訴や逆差別...
【第1012回】バイデン一般教書演説に覚えた危惧
国基研企画委員兼研究員・福井県立大学教授 島田洋一 バイデン米大統領の7日の一般教書演説は、インド太平洋戦略を共に担う日本にとって不安を覚えざるを得ない内容だった。まず、中国に言及しながら「台湾」が一言も出なかった。「力による台湾の現状変更を許さない」どころか「台湾海峡の安定」といった表現すらなかった。 ●台湾への言及なし バイデン氏は過去4度にわたり、中国が台...
米下院が中国問題特別委設置 島田洋一(福井県立大学教授)
米国で新議会がスタートし、下院議長も決まった直後の1月10日、下院に「米国と中国共産党の間の戦略的競争に関する特別委員会」が設置された。 民主党議員も多くが支持し、設置賛成が365票、反対が65票だった(反対は全て民主党議員)。ただし、民主党側の賛同を得るため、証人喚問の権限は付与しない形で発足した。議事運営で主導権を握る多数派の共和党が、バイデン政権の関係者を次々喚問し、つるし上げる事態を...
台湾政策法はどうなったか 島田洋一(福井県立大学教授)
台湾の防衛体制強化および国際的地位の向上を目指した米国の「台湾政策法」は、予想通り2023年度国防権限法に一部組み込まれ、一部積み残される形でひとまず決着した。国防権限法は上下両院を通過後、12月23日にバイデン大統領が署名して成立した。 「ひとまず」と書いたのは、来年1月からの新議会において、新たな台湾関連法案が、今回積み残された部分の新バージョンも含め、次々提出されると見られるためである...
声を上げる米議員、沈黙する日本 島田洋一(福井県立大学教授)
11月3日、米共和党のビル・ハガティ、マルコ・ルビオ両上院議員が連名で、オースティン国防長官あてに公開書簡を出した。沖縄基地からのF15戦闘機全機引き揚げ方針に疑問を呈する内容である。沖縄には2飛行中隊、計50機が配備され、日本に展開する米軍戦闘機総数約100機の半数に当たる。 「沖縄からのF15撤収に懸念」 書簡は次のように言う。 「中国人民解放軍の高まる脅威に対抗するため、空...
【第985回】共和党主導で米の対中強硬姿勢強化か
国基研企画委員兼研究員・福井県立大学教授 島田洋一 米中間選挙の結果、下院で共和党が多数となり、来年1月以降、議長および全委員長ポストを確保して、議事運営の主導権を握る方向となった。 下院外交委員長に就任予定のマイケル・マッコール議員(現外交委員会共和党筆頭理事)は米議会きっての対中強硬派として知られる。 ●下院外交委員長にタカ派 台湾の防衛力および国際的地...
【第983回】デサンティス知事の圧勝が教えるもの
国基研企画委員兼研究員・福井県立大学教授 島田洋一 米中間選挙は本稿執筆時点で、上院における民主党の優位維持が決まったものの、下院はまだ大勢判明に至っていない。そこで、以下、最も印象的で示唆深いフロリダ州知事選に焦点を絞って論じたい。日本にとっても参考になる点が多々あると思う。 ●ぶれない政治姿勢で「時の人」に フロリダは、選挙のたびに民主、共和両党が競り合う、...
【第971回】対北朝鮮外交の落とし穴
国基研企画委員兼研究員・福井県立大学教授 島田洋一 10月4日、北朝鮮が推定飛距離約4600キロの弾道ミサイルを発射した。西太平洋の米軍重要拠点グアムに十分届くことから、明らかに米国を睨にらんだものである。 ここで危惧されるのは、米バイデン政権がブッシュ(子)政権の犯した対北朝鮮外交の歴史的失敗を繰り返さないかである。 ●圧力緩和で失敗したブッシュ政権 20...
原発新設に「地域の理解得られず」の虚偽 島田洋一(福井県立大学教授)
まずはファクトを押さえねばならない。 8月30日、公明党の山口那津男代表は記者会見で、岸田文雄首相が次世代型原発の開発・建設を進める方針を示したことに関し、「現状では地域の理解を得られていないし、簡単ではない」と語った。 全国有数の原発立地地域、福井県に関する限り、これは明らかに虚偽である。論より証拠、山口発言と同日の福井新聞の記事を見ておこう。 福井の自治体首長は期待表明 ...
【第953回】日米台軍事協議に必要な日本版台湾旅行法
国基研企画委員兼研究員・福井県立大学教授 島田洋一 2018年3月16日、米上下両院を全会一致で通過していた「台湾旅行法」がトランプ大統領の署名を得て成立した。中国政府が「米中関係のレッドラインを超える」と強く廃案を求めていた法案だった。意識的に何気ない名称を付されたこの法律が、なぜそれほど中国を刺激したのか。米国の議員やビジネスマンはそれ以前から頻繁に台湾を訪れていた。台...
米国でも論議呼ぶバイデン「台湾」発言 島田洋一(福井県立大学教授)
「台湾防衛のため軍事介入するのがアメリカの公約」という趣旨のバイデン米大統領の発言がその「真意」を巡って論議を呼んでいる。この発言は5月23日、東京で行われた日米首脳会談後の合同記者会見で、記者の質問に答える形でなされたが、はたして米国の対中強硬派にはどのように受け止められているか。ここでは、共和党きっての理念的ハードライナーとして存在感を増すトム・コットン上院議員(アーカンソー州選出)が5月24...
参考にしたいイギリスの核戦略 島田洋一(福井県立大学教授)
自由民主制を取る高度産業国家で、周りを海洋に囲まれた島国、アメリカと同盟条約を結んでいるなど日本と様々に共通点の多いイギリスは、一方で日本と違い、独自の核抑止力を保持している。「連続航行抑止」(Continuous at Sea Deterrent, CASD)と呼ばれる。 英政府はこれを、「少なくとも1隻の核兵器装備潜水艦が、最も極端な脅威に対応するため、発見されずに常時パトロールを続ける...
【第880回】堂々と歴史戦を戦おう―佐渡金山
国基研企画委員兼研究員・福井県立大学教授 島田洋一 「聞く力」をぎりぎりまで発揮するせいか、「決める力」がないように見える岸田文雄首相だが、2月1日の期限を目前にした1月28日、「佐渡島の金山」(新潟県佐渡市)の世界文化遺産登録を国連教育科学文化機関(ユネスコ)に推薦すると正式に表明した。 今後の焦点は、国際舞台において日本政府がどこまで事実に基づく主張を展開できるかに...
米中間選挙の民主勝利遠のいた採決阻止ルール継続 島田洋一(福井県立大学教授)
2022年1月19日、バイデン・ホワイトハウスと民主党議員の大多数が推進したフィリバスター(採決阻止)ルール変更案が否決された。日本政治は、この意味を充分理解しておかねば、引き続き気候変動問題などでカモにされかねない。 投票法改正の思惑も費える 全ての議事が単純過半数で進められる米下院と異なり、上院では、5分の3(60人)以上が賛成しないと審議を打ち切って採決に入れない独自の院内規則が...
【第870回】日本に必要な攻撃能力の構築
国基研企画委員兼研究員・福井県立大学教授 島田洋一 1月5日に北朝鮮が発射した弾道ミサイルについて、防衛省は、高度50キロ、飛距離500キロ、速度はマッハ5を超える新型との分析結果を示した。日本を射程に収め、核弾頭を搭載できる極超音速ミサイルが北朝鮮によって配備されるのは時間の問題と見なければならない。一方で、中国の同種ミサイルの開発は急速かつ大規模に進んでいる。 ...
自衛隊か国防軍かは別途議論を 島田洋一(福井県立大学教授)
自民党はそのホームページにおいて、憲法改正の「条文イメージ」として、①自衛隊の明記②緊急事態対応③合区解消・地方公共団体④教育充実―の4項目を提示し、このうち①について次のように敷衍している。 ・憲法改正により自衛隊をきちんと憲法に位置づけ、「自衛隊違憲論」は解消すべき ・現行の9条1項・2項とその解釈を維持し、自衛隊を明記するとともに自衛の措置(自衛権)についても言及すべき と...
憲法改正の日米比較 島田洋一(福井県立大学教授)
日本国憲法は、様々な点でアメリカ合衆国憲法をモデルとした(させられた)が、重要な違いも少なからずある。その一つが改憲規定である。 米国憲法では、「連邦議会は、両院の3分の2が必要と認めるときは、この憲法に対する修正を発議し」(ここまでは日本国憲法とほぼ同じ)と規定した後に、「または3分の2の州の立法部が請求するときは、修正を発議するための憲法会議を召集しなければならない」との一節が続く。 ...
ウクライナ情勢と現職CIA長官のプーチン論 島田洋一(福井県立大学教授)
ロシア軍が国境地帯に集結するなどウクライナ情勢が緊迫している。その背景に関し、ウイリアム・バーンズ米CIA長官が、より自由な立場にあった2年前に、興味深い分析を記している。バーンズ氏は国務省出身で、外交現場において長く中東、ロシアを担当した。 NATO拡張は「不必要に挑発的」 『裏交渉−アメリカ外交回顧録』(原題 William J. Burns, The Back Channel: ...
彭帥問題追及で女子テニス協会に続け 島田洋一(福井県立大学教授)
「(暴力団だからといって)お友達の嫌がることをあなたしますか。しないでしょ」 中国共産党政権(以下中共)に対するこの元首相の福田康夫ドクトリンは、実は日本のみの宿痾ではない。世界中の政界、学界、スポーツ界で主流であり続けてきた。 中共幹部の性行為強要を告発した彭帥選手の「軟禁」を理由に中国ツアーをすべてキャンセルしたWTA(女子テニス協会)が開けた風穴をどこまで広げられるか。来年2月開...
【第854回】最低でも外交的ボイコットを―北京五輪
国基研企画委員兼研究員・福井県立大学教授 島田洋一 米バイデン政権が2022年北京冬季五輪の「外交的ボイコット」を検討中と伝えられる。 五輪の主催者は国際オリンピック委員会(IOC)だが、IOC規則は「開会宣言は開催国の国家元首によって行われる」と定めている。北京五輪の場合、習近平国家主席が行う。 さらに次のような開会式実施細則が続く。 「開催国の国家元首は、ス...
米上院アフガニスタン公聴会での追及 島田洋一(福井県立大学教授)
9月28日、米上院軍事委員会で、「戦略的失敗」に至ったアフガニスタン問題をめぐる公聴会が開かれた。「戦略的失敗」とは他ならぬ軍制服組のトップ、マーク・ミリー統合参謀本部議長が、アフガニスタン撤退時の混乱を総括した言葉である。公述人は、ミリー氏の他にロイド・オースティン国防長官、アフガニスタンを含む中東地域を担当するケネス・マッケンジー中央軍司令官の軍政、軍令幹部3人であった。 2001年10...
アフガン崩落招いたバイデン「外交安保チーム」 島田洋一(福井県立大学教授)
バイデン大統領の頭にあるのは「大政治家たる自分が大向こうを唸らせる演説を行う」光景だけなのかも知れない。 米軍がアフガニスタン撤退を急ぐ中、タリバン支配の恐怖から国外脱出を急ぐ人々が首都カブールの空港に殺到し、いまなお大混乱が続いている。バイデン氏としては完全撤退させた状態で、同時多発テロ20周年に当たる9月11日の演説に臨み、10月から執行が始まるバイデン政権として最初の予算に「アフガン...
日本政治の混迷示す中共100年への祝辞 島田洋一(福井県立大学教授)
7月1日の中国共産党創建100周年に当たり、3年後の米大統領選で共和党の有力候補と目される政治家たちは、いずれも歯に衣着せぬ厳しいメッセージを出している。 常識と勇気ある米政治家のツイート まずポンペオ前国務長官のツイートである。 中共の100年は殺戮とジェノサイドの1世紀。これ以上に人を殺した政党はない https://twitter.com/mikepompeo/st...
【第791回】原子力活用へ政治家は真の世論に耳を傾けよ
国基研企画委員兼研究員・福井県立大学教授 島田洋一 菅義偉首相は、2030年度の温室効果ガス排出量を2013年度比で46%削減する目標を発表した。その達成には、常識的に考えて、既存原発の活用はもちろんのこと、原発の新増設やリプレース(建て替え)が不可欠である。ところが、政府のエネルギー基本計画の柱となる2030年度の電源構成の見直しでは、原子力は現行目標の据え置きで調整が進...
注目すべき新選挙権法案の米議会攻防 島田洋一(福井県立大学教授)
3月4日、新たな選挙権法案が米下院を通過した。提案した民主党側は「人民のため法」(For the People Act)という呼称を付けている。コロナ下で緊急避難的に実施された広範囲の郵便投票を恒久化すると共に、オンライン有権者登録、当日有権者登録を認めるなどの内容である。その分、本人確認は難しくならざるを得ない。 採決の結果は220対210。多数派の民主党が全員賛成し、共和党は全員が反対...
小泉環境相は「脱炭素」で地に足着けよ 島田洋一(福井県立大学教授)
小泉進次郎環境大臣と環境省が盛んに旗を振る「2050年カーボンニュートラル」論を聴くと、かねて日本外交の足をすくい国益を損なってきた「バスに乗り遅れるな」という言葉を思い出さずにおられない。 小泉氏は、現行の「エネルギー基本計画」が掲げる「2030年・再エネ比率22~24%」を大きく上回る「2030年・再エネ比率40%超」を打ち出し、その間、「炭素税」や「排出量取引」など企業や家計に負担を...
【第766回】米のWHO復帰は台湾参加を条件にすべきだった
国基研企画委員兼研究員・福井県立大学教授 島田洋一 バイデン米政権が世界保健機構(WHO)への復帰を決めた。予想された動きだが、台湾のWHO総会参加などの条件を付けることなく簡単に復帰した姿勢には、強い危惧の念を抱かざるを得ない。 トランプ政権は昨年7月6日、中国に支配され、本来の責任を果たさず、改革の意思も見せないWHOとの関係に終止符を打つとして、1年後に脱退する旨...
警官の発砲めぐる日米の反応の違い 島田洋一(福井県立大学教授)
産経新聞電子版12月19日付に、新潟県警の警察官による発砲死事件の記事が載った。読みながら、これがアメリカだったらどういう展開になるかと考えた。不幸な事件ではあるが、アメリカの状況を知る意味では参考になる。 暴動化しやすい米国の土壌 まず、「警官が発砲、包丁の男性死亡 新潟県警『適正使用』」と題する、当該記事を引いておく。 18日午後8時50分ごろ、新潟市西蒲区の住宅に通報...
米最高裁人事は「百年マラソン」 島田洋一(福井県立大学教授)
安倍晋三前首相の功績を称える声は多くあるが、その最高裁人事については全く話題にならない。これは日米の大きな違いである。アメリカでは、任期中の裁判官人事が、大統領の歴史的評価における大きなポイントとなる。 9月26日、トランプ大統領が、最高裁で最左翼に位置したルース・ベイダー・ギンズバーグ判事(享年87)の後任候補に、保守派がかねて推してきたエイミー・コーニー・バレット控訴裁判事(48)を指名...
【第712回】バイデン陣営が答えるべきこと
国基研企画委員兼研究員・福井県立大学教授 島田洋一 中国共産党政権(以下中共)が覇権を握れば、自由で人間的な文明は地を払う。中共にどう立ち向かうか。世界が米大統領選の両候補に関し、最も注視するのはそこである。 バイデン民主党大統領候補はオバマ政権の副大統領だった。2015年、訪米した習近平中国国家主席はオバマ大統領(当時)との共同記者会見で、①サイバー犯罪に共同で戦うと...
カマラ・ハリス氏の問題点 島田洋一(福井県立大学教授)
米民主党の大統領候補指名を確実にしているジョー・バイデン前副大統領が、副大統領候補に非白人で女性のカマラ・ハリス上院議員(1964年生)を選んだ。ハリス氏の父はジャマイカ生まれ、母はインド生まれで、先祖を辿ればアフリカと南アジアにルーツを持つ。ただし陣営内に異論もあり、すんなりとは決まったわけではない。 バイデン氏追及の過去も 最大の問題は、ハリス氏が公開の場でバイデン氏に人種偏見が...