「台湾防衛のため軍事介入するのがアメリカの公約」という趣旨のバイデン米大統領の発言がその「真意」を巡って論議を呼んでいる。この発言は5月23日、東京で行われた日米首脳会談後の合同記者会見で、記者の質問に答える形でなされたが、はたして米国の対中強硬派にはどのように受け止められているか。ここでは、共和党きっての理念的ハードライナーとして存在感を増すトム・コットン上院議員(アーカンソー州選出)が5月24日、FOXニュースのインタビューに対して述べた論評を見ておこう。
戦略的「明確」求める強硬派
コットン氏は1977年生まれ。ハーバード大学法科大学院を修了後、弁護士事務所に勤務していたが、米国中枢部を襲った同時多発テロ(2001年9月)を受け、直接テロリストと闘いたいと陸軍に志願。第101空挺師団所属部隊の小隊長としてイラクで軍務に就き、その後アフガニスタン戦線にも赴いた。
2009年に名誉除隊後、連邦下院議員を経て、2015年以来、上院議員を務めている。異色の経歴と言えよう。明快で歯に衣着せぬ言動が注目され、メディアにも頻繁に登場する。
さてコットン氏はまず「ジョー・バイデンがたまたま行き当たったかに見える政策」(同種の発言は昨年来9カ月間でこれが3回目)自体は、「今やアメリカにとって正しい政策」と自己の立場を明らかにする。
「台湾は世界で最も危険な発火点だ。長年、我々はいわゆる戦略的曖昧で事に臨んできた。中国軍が台湾侵攻を実行する力が無かったからだ。もはやそうした状況ではない。台湾に対する戦争を抑止する最善の道は、アメリカが台湾の来援に駆け付けることを疑問の余地なく明確にする戦略的明確だ」
「明言後に修正するのは最悪」
コットン議員は続けて、台湾を巡るバイデン氏の言動全般を次のように批判する。
「不幸なことに、3度にわたって見たバイデン大統領の態度は戦略的曖昧でも明確でもない。混乱し混迷した曖昧さだ。バイデン大統領はアメリカの政策を変更したかに見えつつ、直後に匿名のホワイトハウス・スタッフが訂正することを許した。これは抑止に資することなく挑発するという最悪の取り合わせだ。北京の節度を欠いた反応から、いかに彼らが挑発と感じたか分かるが、側近が慌てて修正に走ったことから、北京はおそらく、ジョー・バイデンが真に台湾を防衛する意思を有するとは見ないだろう。考えうる限り最悪の取り合わせだ」
バイデン氏が、戦略的明確への政策変更を裏付ける具体的措置に乗り出さない限り、コットン氏の言う通りとなりかねない。米国が台湾に関して、いかなる軍事的措置を取るかは中国の最大関心事である。目を皿のようにして事態の展開を窺っていよう。
超党派の合意形成、入念に準備した大統領声明、同盟国との協議、台湾有事を睨んだ本格的合同演習などの明確な行動が続かなければ、遠からず相手に「空砲」と見切られてしまうだろう。
第136回 バイデン大統領来日会見で「米国の台湾関与」に言及
これは失言ではない。ホワイトハウスが打ち消すようでは米国の信頼性が低下する。逆に米共和党はこれを評価する。この際日本の立ち位置も明確にすべし。