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2022.06.03 (金) 印刷する

杉田発言は名誉棄損に当たらず―京都地裁 西岡力(モラロジー道徳教育財団教授・国基研企画委員)

杉田水脈衆議院議員が大阪大の牟田和恵教授(3月から名誉教授)、同志社大の岡野八代教授ら4人から名誉毀損で訴えられていた民事訴訟で、京都地裁は5月25日、杉田議員の主張を全面的に受け入れて名誉毀損にはあたらないとする判決を下した。杉田議員の全面勝訴だった。

杉田議員は日本学術振興会の科学研究費(科研費)助成事業となった4人の共同研究について、政府見解と異なる慰安婦=性奴隷説に立っているなどと指摘し、インターネットなどで批判する意見を公表していた。公金によって行われた研究内容を批判することは名誉毀損にあたらないことは当然だ。

慰安婦を性奴隷と決めつけ

4人の教授らは2014年から17年にかけ、「ジェンダー平等社会の実現に資する研究と運動の架橋とネットワーキング」をテーマとする共同研究を申請、これが日本学術振興会の研究助成事業に選ばれ、科学研究費(科研費)1755万円を受け取っている。

彼女らは「なぜ『慰安所』制度は軍事性奴隷制なのか」(月刊『世界』掲載)、「日本軍戦時性暴力/日本軍性奴隷制との出会い方」(『季刊戦争責任研究』)、「フェミニズムとリベラリズムの不幸な結婚——日本軍性奴隷制問題をめぐる反動に抗して」(『現代思想』)など慰安婦を性奴隷と見る論文を研究成果としてあげ、「慰安婦問題は#Me Tooだ!」という動画を制作、公開している。

一方、我が国政府は、慰安婦を性奴隷と見做する教授らの見解を「史実に基づくとは言いがたい主張」と断定して、政府として反論の広報を展開している。たとえば、外務省のホームページでは日・英・韓・独・仏・伊・西語で次のように明記している。

「強制連行」や「性奴隷」といった表現のほか、慰安婦の数を「20万人」又は「数十万人」と表現するなど、史実に基づくとは到底言いがたい主張も見られる。(略)「性奴隷」という表現は、事実に反するので使用すべきでない。この点は、2015年12月の日韓合意の際に韓国側とも確認しており、同合意においても一切使われていない。

批判を恐れて何が学問の自由か

杉田議員はジュネーブの国連人権理事会で、慰安婦問題で我が国が事実に基づかない誹謗中傷にさらされていることに危機感を持ち、それを是正する活動を長期間にわたって行ってきた専門家だ。

その立場から、公金を使って行われた研究成果について批判するのは、まさに杉田議員の政治信念に基づく正当な政治活動、言論活動である。

4人の教授らは杉田議員が「この問題を#Me Tooと言っている時点でねつ造です」とSNSに投稿したことを「研究者としての存在意義を否定する」名誉毀損だと非難している。

これは4人のうち1人と杉田議員がSNS上で批判の応酬をしていた中での書き込みで、その書き込みの後に原告の教授は「国会議員があれほど不勉強な上に、個人攻撃をしてくるんですから、対応せざるを得ないんです。これも、この勢力お得意の歴史の捏造プチ版ですね」と書き込んでいる。

自分たちは他者に「不勉強」「捏造」などの言葉を浴びせておきながら、自分たちを「捏造」と批判されることは許さない―という。酷いダブルスタンダード(二重基準)が露呈している。

ちなみに、私を名誉毀損で訴えて敗訴した元朝日新聞記者は、私が彼の記事を捏造だと批判した途端、名誉毀損だと主張した。

だが、彼が社長をしている週刊誌は<西岡氏が自らの「捏造」認める>という見出しを表紙に大きく掲げた。自分が他人から捏造と言われると許せないが、自分は他人を「捏造」と非難しても許されるとする。これも同じダブルスタンダードだ。

学者が研究を世に問うたなら、当然、違う立場の人たちから批判されることを覚悟すべきだ。それが言論の自由、学問の自由の基礎である。批判されたくないなら学者を辞めるほかない。4人の教授らにはそう伝えたい。
 
 

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国基研チャンネル

第150回 5月25日の京都地裁の杉田判決について

結果は杉田議員の全面勝訴。訴えたのは4人の大学教授。彼らの科研費助成事業は「慰安婦性奴隷説」支持。杉田議員は公金使用を批判。その批判を名誉棄損とは笑止。言論には言論で応じるべし。