まずはファクトを押さえねばならない。
8月30日、公明党の山口那津男代表は記者会見で、岸田文雄首相が次世代型原発の開発・建設を進める方針を示したことに関し、「現状では地域の理解を得られていないし、簡単ではない」と語った。
全国有数の原発立地地域、福井県に関する限り、これは明らかに虚偽である。論より証拠、山口発言と同日の福井新聞の記事を見ておこう。
福井の自治体首長は期待表明
見出しは「政府の『原発新増設検討方針』 敦賀3、4号に市長期待 美浜4号、町長『リプレース進めて』」である。
将来的な電力の安定供給に向けて次世代型原発の建設や既設原発の運転延長を検討するとした政府方針に関し、敦賀市の渕上隆信市長は29日の定例会見で、中断している日本原電敦賀原発3、4号機計画の進展に期待感を示した。
敦賀3、4号機は国内初の改良型加圧水型軽水炉(APWR)として計画。敷地造成は終わっているが、東京電力福島第1原発事故後に工事が中断している。渕上市長は「敦賀市には3、4号機(の建設)がテーマとしてあり、そこでの新増設・リプレースを進めていただきたい。(結論を出すとされた)年末に向けての議論の中で、次世代型革新炉の中に軽水炉もあるということで期待している」と述べた。
美浜町の戸嶋秀樹町長も同日の定例会見で「(政府の方針は)検討の段階ではあるが、実現に向け具体化が加速されるよう期待したい」と述べた。美浜原発4号機について2010~11年に関西電力による設置に向けた自主調査があったとし「適地もある前提でそういったことが進んだ経緯がある。リプレースを進めていただきたい」とした。
選挙で選ばれた原発立地地域の首長の意見こそが、最も分かりやすい民意だろう。記事に明らかなとおり、敦賀市長も美浜町長も積極推進姿勢である。杉本達治福井県知事も、これまで原発再稼働に同意を与えてきた。
事実を見ない大新聞・TVと政治家
日本には、反原発の方向でのみ「地元に寄り添う」ポーズを取る政治家が多すぎる。全国放送の地上波テレビも全国紙も、地元は原発推進派というファクトを報じようとしない。それどころか逆の情報操作をしている。
福井県には「日本のエネルギー確保に原発は不可欠。逃げずに現実に向き合うべきだ」という気構えの住民が多い。原発は迷惑施設で、住民はみな嫌がっているというのは、取材力ないし知的勇気を欠くマスコミおよび政治家の自己投影的なフィクションである。(了)