公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2021.12.23 (木) 印刷する

自衛隊か国防軍かは別途議論を 島田洋一(福井県立大学教授)

自民党はそのホームページにおいて、憲法改正の「条文イメージ」として、①自衛隊の明記②緊急事態対応③合区解消・地方公共団体④教育充実―の4項目を提示し、このうち①について次のように敷衍している。

・憲法改正により自衛隊をきちんと憲法に位置づけ、「自衛隊違憲論」は解消すべき

・現行の9条1項・2項とその解釈を維持し、自衛隊を明記するとともに自衛の措置(自衛権)についても言及すべき

ところが、この案に、他ならぬ自衛隊の有力OBから少なからぬ異論が出されている。異論の一つは、「自衛隊」という言葉に関わる。終戦直後の「警察予備隊」の発展形をイメージさせる「自衛隊」ではなく、「国防軍」が望ましいという声である。

と言うと直ちに、「しかし『国防軍』は公明党や左傾野党が受け入れない。改憲論議をつぶすだけだ」という反論が出るだろう。しかし、何も軍の名称を憲法に規定する必要はない。

名称論議は護憲勢力の思う壺

かつて枝野幸男前立憲民主党代表が月刊誌で、「自衛権に基づく実力行使のための組織」の必要を書き加える憲法改正を主張したことがある(文芸春秋、2013年10月号)。憲法にはまさにその通り、「自衛権に基づく実力行使のための組織を保持する」とのみ規定し、実力組織の名称については、法律で規定すればよいのではないだろうか。現在の自衛隊も法律次元の名称である。

上記の趣旨の改憲をまず実現した上、当面は「自衛隊」の呼称を継承しつつ、「国防軍」案も含めて改めて国会で議論すればよいだろう。憲法に自衛隊と書くか国防軍と書くかで保守派が分裂するとすれば、左派「護憲勢力」の思う壺となりかねない。