「(暴力団だからといって)お友達の嫌がることをあなたしますか。しないでしょ」
中国共産党政権(以下中共)に対するこの元首相の福田康夫ドクトリンは、実は日本のみの宿痾ではない。世界中の政界、学界、スポーツ界で主流であり続けてきた。
中共幹部の性行為強要を告発した彭帥選手の「軟禁」を理由に中国ツアーをすべてキャンセルしたWTA(女子テニス協会)が開けた風穴をどこまで広げられるか。来年2月開幕予定の北京冬季五輪が試金石となる。
開会式の全面ボイコットを
最低ラインは、選手団の行進も含めた開会式の全面ボイコットだろう。
「政界のお偉方」は倫理観をアピールするため北京に行かないが、選手団は黙って習近平氏の前を行進し、整列して開会宣言を聞けという「外交的ボイコット」は、アスリートに寄り添った姿勢ではない。スポーツ選手を馬鹿にした姿勢とすら言える。
スポーツ界では、創設者が「我々は訓練されたマルクス主義者」と公言するBLM(黒人の命は大事)運動とスクラムを組んできたNBA(全米バスケットボール協会)の「トランプは罵倒するが習近平は批判しない」姿勢に、とりわけ厳しい目が向けられている。
そのNBAからも、中共の人権蹂躙を強く批判し北京五輪ボイコットを主張するイーネス・カンター・フリーダム(トルコ生まれだが、最近米国籍を取得し、フリーダムと改名)のような選手が出てきた。
しかし、ダブル・スタンダードの象徴たるNBA最大スターのレブロン・ジェームスはいまだに口籠っている。
「世界の指導者は声上げよ」
WTAのスティーブ・サイモン最高経営責任者は12月1日付の声明で次のように訴えている。
「彭帥や世界の他の多くの女性を保護するため、人々が声を上げることが喫緊の要請となっている。WTAは選手たちを守るために、あらゆる手段を尽くす。同時に私は、世界の指導者たちが、彭帥およびすべての女性が正当に扱われるよう、金銭的利害を顧慮せず、声を上げ続けることを望む」
スポーツ界に限らず政界、言論界も挙げて、この言葉に応えねばならないだろう。