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国基研ろんだん

2022.12.08 (木) 印刷する

声を上げる米議員、沈黙する日本 島田洋一(福井県立大学教授)

11月3日、米共和党のビル・ハガティ、マルコ・ルビオ両上院議員が連名で、オースティン国防長官あてに公開書簡を出した。沖縄基地からのF15戦闘機全機引き揚げ方針に疑問を呈する内容である。沖縄には2飛行中隊、計50機が配備され、日本に展開する米軍戦闘機総数約100機の半数に当たる。

「沖縄からのF15撤収に懸念」

書簡は次のように言う。

「中国人民解放軍の高まる脅威に対抗するため、空軍部隊を近代化する必要については同意するが、沖縄のF15部隊に代わる常駐ベースの部隊配備が考えられていないとされることに懸念を覚える。米空軍はアラスカのF22を沖縄にローテーションベースで送る計画のようだ」

書簡は、習近平中国国家主席が台湾を併合し、インド太平洋における覇権を確立しようとしていることは明らかで、そうなれば米国の利益に破滅的な結果をもたらすと警告した上で、次のように続けている。

「この文脈において我々は、常駐戦闘機部隊を巡回兵力に置き換えるという国防総省の計画はインド太平洋における米国の前線戦闘力の目に見える削減につながると考える。それは侵略のハードルを下げ、バイデン政権における口約束と行動のギャップを引き続き示すことになる」

結論として書簡は、抑止力をどう維持するのか具体策を議会に示すようオースティン長官に求めている。

ハガティ、ルビオ両議員は、米空軍の撤退計画が同盟国にも間違ったシグナルを送ると懸念を表明しているが、肝心の日本の政治家たちは何の反応も示していない。

安倍晋三元首相の功績を的確に顕彰した追憶決議を米上院がいち早く決議する中で、日本の国会が、追悼演説を行う人や国葬儀の是非をめぐって不毛の論議を重ねていた状況を思い出す。日本の国会に存在意義を見いだすことは難しい。(了)

 

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