伊東寛の記事一覧
【第809回】日本のサイバーセキュリティ体制を憂える
国基研客員研究員・元陸上自衛隊システム防護隊長(初代) 伊東寛 6月24日の報道によれば、来年度、警察庁にサイバー攻撃に対応する「サイバー局」が誕生し、また捜査に当たる直轄のサイバー部隊も設置されるとのことである。こうして多方面にわたりサイバーセキュリティ関連の組織が充実してきたことはもちろん良いことだが、不安もある。 ●攻撃対処の仕組みに欠陥 今回、警察のサイ...
ファーウェイ問題の本質を考える(上) 伊東寛(元陸上自衛隊システム防護隊初代隊長)
米司法省は2018年12月20日、中国ハイテク企業が米海軍、米航空宇宙局(NASA)ジェット推進研究所などにサイバー攻撃を仕かけて最新先端技術データを窃盗していたと発表した。また、米トランプ政権の中国脅威論にからんで、次世代移動通信システム(5G)分野での中国通信機器大手ファーウェイ製品の締め出しが表明されるなど、最近の米国の中国に対する姿勢は厳しい。 ●5Gに米国がこだわる理由 概...
ファーウェイ問題の本質を考える(中) 伊東寛(元陸上自衛隊システム防護隊初代隊長)
ファーウェイの発展は、そもそも正規の流通ルートに乗らない廉価品(いわゆるパチモン)から始まった。2000年代初期、ネットワークの最重要器材の一つであるルーターは米国C社の一人勝ちだった。 当時、防衛省のシステム構築担当者の一人であった筆者は、日本の技術者に「多少高くても国産品を使いたいのでなんとかならないか」と話したことがあるが、「到底あの技術レベルのものは(自前では)作れない」と答えられた...
ファーウェイ問題の本質を考える(下) 伊東寛(元陸上自衛隊システム防護隊初代隊長)
では、ファーウェイに課せられた非難は事実無根の濡れ衣であろうか。中国からの我が国に対する脅威はないのであろうか。 ●政府が命じる不正アクセス 中国では、政府によって命じられれば、国内企業や市民、組織は治安当局に協力と支援をする義務があると法律で定められている。これはファーウェイのような企業であっても、政府に協力するよう命じられれば、どんな要請にも全面的に従う必要があるということだ。つ...
安全保障脅かすサイバー戦対策の遅れ(下) 伊東寛(元陸上自衛隊システム防護隊初代隊長)
本稿では我が国の取り組み状況についても述べたい。2014年11月に施工された「サイバーセキュリティ基本法」には「我が国の安全に重大な影響を及ぼすおそれのある事象への対応」として第18条に以下の条文が定められている。 「国は、サイバーセキュリティに関する事象のうち我が国の安全に重大な影響を及ぼすおそれがあるものへの対応について、関係機関における体制の充実強化並びに関係機関相互の連携強化及び役割...
安全保障脅かすサイバー戦対策の遅れ(上) 伊東寛(元陸上自衛隊システム防護隊初代隊長)
2015年6月に明らかにされた日本年金機構の情報漏洩事件以来、多くの個人情報漏洩のニュースが盛んに報じられるようになってきている。 それまで、サイバー攻撃に関する報道自体がほとんどなかった。最近の報道ぶりからサイバー攻撃に対する国民の関心が高まっていることがうかがえる。その意味では、報道が増えていることは良いことだともいえる。 ●狙いは要人の警備情報にも ただ、これらの報道は、ほ...
【第164回】遠隔操作事件が露呈したサイバー安保の不備
サイバーセキュリティ研究所長 伊東寛 遠隔操作ウイルスによる冤罪事件が注目を浴びている。他人のパソコンを遠隔操作して犯罪を行った者がいる。それに対し警察が無実の人を逮捕し、一部の人はやってもいない犯罪を自白したとの報道がなされている。 真犯人と称する者からの告白文を信じれば、この犯罪は警察に恥をかかせるのが目的で、その手段としてサイバー技術を利用したということである。この犯罪が成立した...