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2019.01.22 (火) 印刷する

ファーウェイ問題の本質を考える(上) 伊東寛(元陸上自衛隊システム防護隊初代隊長)

 米司法省は2018年12月20日、中国ハイテク企業が米海軍、米航空宇宙局(NASA)ジェット推進研究所などにサイバー攻撃を仕かけて最新先端技術データを窃盗していたと発表した。また、米トランプ政権の中国脅威論にからんで、次世代移動通信システム(5G)分野での中国通信機器大手ファーウェイ製品の締め出しが表明されるなど、最近の米国の中国に対する姿勢は厳しい。

 ●5Gに米国がこだわる理由
 概ね2020 年以降の将来通信では、車、住宅、家電、ロボット、センサー等、あらゆるものが無線でネットワークに接続し、自動的かつ知的に情報収集や管理・制御が行われるようになるであろう。
 これにより、通信システムには現在より飛躍的に高い性能(超高速、大容量、同時多接続、低遅延)が求められることになる。このための新しい通信規格を第5世代(5th Generation)5G と呼んでいる。
 5Gに関して現在進められている標準化の主導権を掌握すれば、将来の世界の通信システムや重要なハイテク産業、世界経済まで支配下に置くことも可能であると言われている。
 さらに、この技術を利用した数々のデバイスがメイドインチャイナとして世界中で使われることになった場合、そのデバイスに何か怪しい仕掛け(トロイの木馬と呼ばれている)があったらどうなるか。
 これらの仕掛けを利用することで、①データの不法収集②通信システム等への攻撃により、民間企業に直接の被害を与えるほか、取引上の機会損失を被らせる③有事には、政府機関・軍隊の対応のための時間を遅らせる④危機または紛争時に物理的な攻撃と併用することで攻撃力を増大させる-ことなどが可能となる。

 ●国家安全保障上の懸念も
 このような点から、欧米各国は中国当局が5Gの主導権を握ることを強く警戒している。単に技術標準とそれに関連する商売の話だけではなく、中国による知財権侵害がますます深刻化するのではないか。さらに西側諸国に対するスパイ行為も激増し、ひいては国家安全保障の脅威になるのではないかと懸念しているのだ。
 5Gに関する多くの特許を持っているファーウェイは人民解放軍出身で現最高経営責任者(CEO)を務める任正非氏によって1987年、広東省深圳(シンセン)に創業された。
 現在は全世界に18万人以上の従業員がおり、スマートフォン販売シェアでは韓国のサムソンに次ぎ世界第2位の大企業である。日本にも進出しており、2011年には日本経済団体連合会(経団連)にも加盟した。開発研究費は年額1兆円以上といわれ、その技術力は侮りがたいものがある。

ファーウェイ問題の本質を考える(上)
ファーウェイ問題の本質を考える(中)
ファーウェイ問題の本質を考える(下)